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JALの定時運航に関する取り組みを見る
世界一の定時到着率は、どのように達成されたのか?
(2013/4/5 00:28)
3月25日、JAL(日本航空)の定時運航に関する取り組みの取材会が開催された。これは、JALが世界主要航空会社の定時到着率ランキング世界一になり、その取り組みを見てもらおうというものだ。空港で働く特殊車両も見られるし、交通機関の一つとして航空機の定時発着には何が影響しているのか興味があったため、Car Watchもその取材会に参加してみた。
そもそも航空機における定時とは?
JALが定時到着率世界一になったのは、世界中のフライトの出発・到着遅延に関わる情報をWebサイトで提供している米国のFlightStatsの定時到着率調査において。
●FlightStats
http://www.flightstats.com/go/Home/home.do
FlightStats Airline On-time Performance Awards
http://www.flightstats.com/go/story.do?id=1050
JALグループは、Major International Airlines(JAL、90.35%)、Asia Major Airlines(JAL、90.35%)、Asia Regional Airlines(J-Air、92.58%)、Airline Alliance(oneworld Alliance、79.55%)の4部門で1位を獲得している。ちなみに、2009年~2010年はMajor International AirlinesでJALが1位だったものの、2011年はANA(全日本空輸)が1位を獲得。JALは1位を奪還した形になっている。
この90.35%という数字は、定時到着した便の割合を表しているのだが、秒単位で管理されている鉄道と異なり、到着遅延が15分未満は「on-time(定時)」としてカウントされている。この到着とは、滑走路に着陸した時刻ではなく、航空機がスポットに停止した(スポットイン)時刻を指しており、そういった意味でも15分未満というのは高いハードルなのではないだろうか。
JALがこの定時性向上に組織での対応を始めたのは2009年から。航空会社である以上、第一に安全があり、次に定時性、お客様の快適性があると言う。
定時性を向上させる上で大切なのが、「定時に出発する」ことで、その実現のために「お客様にスムーズに乗っていただく」努力を行っている。その1つが保安検査場を15分前(繁忙期は30分前)に通過してもらう告知と、搭乗口に10分前に来てもらう告知。そしてJALグループ側の努力として、到着した便を、いかに次の出発にスムーズに持って行くかがある。
たとえば、この日の取材機となっていたボーイング 737-800(JA337J)は、宮崎空港(RJFM/KMI)から羽田空港(RJTT/HND)にJL1880便として9時25分に到着、10時15分にはJL1843便として長崎空港(RJFU/NGS)に飛ぶ予定となっていた(4月からは時刻表が変更されている)。つまり、50分で荷物や乗客を降ろし、そして機内清掃や次の出発へ向けての機内食などの積み込み、そして荷物の積み込みや乗客の搭乗を終えなければならないわけだ。乗客がすべて降りるのに10分程度かかり、出発20分前には搭乗が始まることを考えると、スタッフの作業時間は30分もない。
各部門の連携で定時性向上を実現
737-800は、小型機といえども165座席ある航空機のため、それなりの作業が発生する。JL1880便として羽田空港に到着すると、ボーディングブリッジが接続し、荷物を荷物室から下ろすベルトローダーが機体横に接続する。機内では清掃スタッフの清掃作業のほか、CA(キャビンアテンダント)も時間短縮のため、作業を手伝う。その作業中に、ケータリングカーが機体横に接続され、長崎行きの便で必要となる機内食や飲み物を積み込んでいく。
その間に、次の便のパイロットスタッフは、羽田空港内にあるJALのオペレーションセンターで天候などをチェック。このJALのオペレーションセンターでは、航空路における天候などをJAL便同士で情報共有しているほか、他社との情報交換もしている。ただ、天候情報をどこまで伝えるかなどは各社によって差があり、多数の便を飛ばしているJALグループは、自社の情報のプライオリティが高いと言う。
お客様の協力があってこその世界一
JALによると、「定時到着率で世界一は、お客様の協力があって達成できた」とのこと。出発保安検査場を定刻以前に通過(つまり出発15分前に通過)し、出発便にすべての乗客がスムーズに乗れば、定時前に出発できるし、乗り遅れる人がいれば定時を越えてしまう場合だってある。そのため、「なるべく早く搭乗口に来ていただくよう案内している」と言い、機内清掃などをスムーズに終えることで現在はより早い搭乗開始を目指し、余裕をもって乗ってもらおうとしている。
また、これはJALのある第1ターミナルに限って起るミスだが、「座席番号と、搭乗口番号を間違えてしまうお客様がいらっしゃる」とのこと。JALが主に使う第1ターミナルは、搭乗口番号が1から始まっており、5A、5Bと、座席番号とまぎらわしい搭乗口番号まで存在する。さらに、出発保安検査場で発券される「搭乗案内控え」などで搭乗口番号と座席番号が同じ行に同じような大きさであるのも、その要因の1つになっていると言う。
乗客の立場から勝手なことを書かせてもらうと、5Aと5B問題は、1番を0番、2番を1番にして、4番、5番で振り直しをして解決を図る。搭乗控えなどについては便名の横に座席番号を書き、搭乗口番号の横には第1ターミナルの略図と搭乗口の場所を図示していただければと思う。発券システムを空港専用に作ることになってしまうが、羽田空港は巨大空港だけに、出発保安検査場で発券される搭乗案内控えに関しては専用システムの構築もありなのではないだろうか。乗客にとっても容易に搭乗口を見つけることができるのは、旅の安心感を高めるために大切なことかと思う。
と書いたものの、実際の搭乗口のスタッフを見ていると、その働きは非常に献身的。丁寧なアナウンスを行い、航空機に乗る乗客をサポートしている。福岡空港(RJFF/FUK)に向かうJL315便の搭乗を取材したが、最後の1人の乗客がなかなか搭乗口に現れず(搭乗口ゲートを通過したのが出発4分前の12時21分だった。
一連の働きを見せてもらって感じたのは、空港の裏側では実に多くの人が働いているということと、働く目的が「お客様のため」ということに集約されていたこと。しっかりした作業を行うことで、航空機はできる限り安全に飛ぶことができ、また定時出発することで、乗客の旅の予定が確実になる。JALグループ全体で、羽田の発着便は400便ほどあるそうだが、定時性向上のためには「1便1便お客様をしっかり案内することが大切」との言葉が印象的だった。