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NEXCO西日本、新名神高速道路 高槻JCT~神戸JCTの建設現場見学会

2023年の全線開通に向け本格的な工事が進む高槻~神戸区間の現状を公開

箕面トンネル(下り)の掘削工事現場
2013年5月9日開催

 NEXCO西日本(西日本高速道路)は5月9日、2023年の全線開通に向けて建設工事を進めている新名神高速道路の高槻JCT(ジャンクション)~神戸JCT間の建設現場見学会を実施した。

 新名神は、昨年の一部開通で大きな話題となった新東名高速道路と同様に、日本における道路交通の大動脈とも言える東名・名神の2大高速道路と並行して走る自動車道路。「大都市間のネットワーク強化」「地震・大雨といった災害発生時の備え」「名神高速道路の老朽化に対する対応」という3点を大きな目的として計画が進められている。

 新名神でも2008年までに東側に位置する大津JCT~亀山西JCTの区間が開通し、すでに利用が開始されている。しかし、残る西側の大津JCT~神戸JCTまでの区間、東側の四日市北JCT~亀山西JCTまでの区間は、今世紀に入ってから建設計画の見直しや計画の凍結といった紆余曲折によって着工が遅れ、高槻JCT~神戸JCT区間では2008年~2009年にかけて本線工事が着手となった。

 そんな新名神の高槻JCT~神戸JCT区間の工事現場から、今回はトンネル区間の「箕面トンネル東坑口」、橋梁区間の「下音羽地区」、名神高速道路との連結部となる高槻JCTの3カ所が見学場所として用意された。

箕面トンネル東坑口

 箕面トンネルは新名神の建設計画の中でもっとも長い延長約5000mのトンネル区間。距離の長さに応じてトンネルの上に存在する地表部分もさまざまに変化し、今回の工事計画では箕面市と茨木市の市境を流れる勝尾寺川と、その支流の存在する一帯が大きなハードルとなった。

 地表からトンネルまでの距離が短いこの一帯は、地盤がそれほど強固ではなく、さらに河川水や地下水が大量に浸透してくる可能性があり、箕面トンネルでは一般的な「馬蹄形構造」に加え、勝尾寺川一帯の地下では「円形の非排水構造」を組み合わせて構成する予定となっている。

箕面トンネルを高槻JCT側から掘り進める東坑口。正確な長さは4982mと表示されている

 この「円形の非排水構造」というトンネルは、トンネル本体の全周に肉厚の防水シートを敷設して地下水などの進入をシャットアウトするというもの。さらにトンネル本体の覆工コンクリートの厚さを、馬蹄形構造では30cmのところを80cmに増やし、外部からの圧力にも耐えられる設計としている。

トンネル内部に入る前に、現場の担当者からパネルを使って要点が解説された。箕面トンネルでは一部の区間で防水性と耐圧性に優れる「円形の非排水構造」を採用する
箕面トンネルの内部の様子
工事の最前線となるトンネルの掘削面
現場には作業再開を待つ「トンネルブレーカ」という重機が置かれていた。アームの先に装着する油圧ブレーカで岩盤を掘削する
箕面トンネルの工事現場では、掘り進めて出た土砂をトラックではなくベルトコンベアを使って外部まで排出する方式を採用。作業効率が高く、トラックが往復するリスクも排除できる
トンネルの坑口には内部で使う発破などの音を外部に漏らさないよう防音扉が設置されている
箕面トンネル側から高槻JCT方向を眺める風景。奥側の山でもすでに作業が進められている。山林を切り倒した部分には、雨水をキープして水害を起こさないよう調整池が用意されている

下音羽地区

 採石場などもある山間部に位置する下音羽地区の工事では、高低差が大きい山のなかに作業用の各種車両が通行できる建設用道路を用意することから作業がスタート。道路の完成後は不要になる建設用道路は、用地を建設工事中の間だけ地権者から借りて作られ、最終的には撤去される仮設の道路だが、昨今は安全管理に対する社会の監視が非常に厳しくなっており、万が一にも不手際があれば工事計画全体に影響を与えてしまうかもしれないと細心の注意が払われていると言う。

 また、道路建設で一番時間がかかり、かつ不測の事態で計画変更を余儀なくされるリスクが大きいのはトンネル工事。工事区間にトンネルが存在する場合は、トンネルから作業をスタートさせるのが一般的だが、下音羽地区ではトンネル工事に必要な道路がなかったので、まず橋梁部分の工事をある程度まで進め、通行できるようになった橋梁部分を建設用道路として活用してトンネル工事に着手するというスケジュールとなっている。

下音羽地区の作業状況について解説する現場担当者
山に向かって並ぶ橋脚の先にトンネルが掘られる計画となっている
山肌の一部を削って橋脚が建設されている
谷間を流れる安威川の上に、「波形鋼板ウェブ箱桁橋」の安威川橋が架かる予定となっている
鉄骨で構成された仮設の建設用道路。高低差が大きく、足場に使える土地も限られるため取りまわしにも苦心したと言う

高槻JCT

 高槻JCTは、正確には新名神側の高槻第一JCT(仮称)と既存の名神高速側の高槻第二JCT(仮称)の2路線を連絡道路で結んで構成される。

 見学場所となった高槻第二JCT(仮称)の現場には、名神高速をオーバーパスするためのコンクリート製の橋脚が立ち並んでいた。これまでの2カ所と比較すると工事の進捗状況は高いように見えるが、名神高速の上を通過する「上部工架設」は、毎年5月に行われている名神高速の集中工事の期間でなければ不可能で、これから数年掛けて完成を目指すと説明された。

地図を使って位置関係を説明する高槻JCTの現場担当者
奥側の名神高速に向かって続くコンクリート製の橋脚。一帯で40基が計画され、すでに11基が施工完了。19基も下部工工事が進んでおり、未着工は10基という状況になっている
奥側の山は橋脚とほぼ同じ高さまで削られる予定となっており、現場では土砂を運び出すトラックが頻繁に行き交っていた

(佐久間 秀)