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トヨタ、日産、ホンダの自動車メーカー3社、水素ステーションの運営支援についての記者会見
HySUTの組合員を対象にステーションの運営に係る経費を支援。支援上限額は1基当たり年間1100万円
(2015/7/2 00:00)
- 2015年7月1日開催
トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業の自動車メーカー3社は7月1日、燃料電池自動車(FCV)用の水素ステーションの整備促進に向けた支援策の内容を発表。同日、都内で記者会見を開催した。
FCVについては、トヨタが2014年12月に「MIRAI(ミライ)」の販売を開始したことを皮切りに、ホンダが2015年度中の販売開始を、日産が早ければ2017年の販売開始を予定しており、水素ステーションの整備促進を図ることは喫緊の課題となっていた。そのため、3社は2015年2月に水素ステーションの整備促進に向けた支援策について共同で取り組むことを決定。以降、水素ステーションの運営に係る費用の一部負担など、具体的な内容を検討してきた。
今回の発表はその具体的な内容に関するもので、政府による水素ステーションの運営支援と協調し、水素供給ビジネスへの参入を決めたインフラ事業者に対し、水素ステーションの運営に係る経費の一部を支援することが明らかになった。支援対象者は水素供給・利用技術研究組合(HySUT)の組合員で、次世代自動車振興センター(NeV)の「燃料電池自動車 新規需要創出活動助成事業」で認められたステーションの運営に係る人件費や修繕費といった経費が対象になる。
記者会見には、トヨタ自動車 専務役員の伊勢清貴氏、日産自動車 専務執行役員の川口均氏、本田技研工業 執行役員の三部敏宏氏、水素供給・利用技術研究組合(HySUT) 理事長の西島弘也氏とともに、資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 燃料電池推進室 室長の戸邉千広氏が出席した。
政府としての水素エネルギーについての見解
まず戸邉氏から政府としての水素エネルギーについての見解が述べられ、燃料電池の活用によって高いエネルギー効率が可能であること、再生可能エネルギーを含む多様なエネルギー源からさまざまな方法で製造が可能であり、地政学的リスクの低い地域からの調達や、再生エネルギー活用によるエネルギー自給率向上につながる可能性があること、“利用段階で”CO2を排出しないことから環境負荷低減につなげられること、日本の燃料電池分野の特許出願件数が世界1位であり日本が強い競争力を持つ分野であることなど、水素エネルギーの利活用の意義について紹介。
また、水素社会の実現に向けては「長い時間がかかる」(戸邉氏)ため、水素利用の拡大を図る「フェーズ1(現在)」、水素発電の本格導入と大規模な水素供給システムを確立する「フェーズ2(2020年代後半に実現)」、“製造段階から”CO2フリーの水素供給システムを確立する「フェーズ3(2040年ごろに実現)」という3段階のロードマップが示された。
一方、FCVの普及・拡大に向けては「FCVの普及と水素ステーションの整備を双方同時に取り組む必要がある」(戸邉氏)といい、FCV側ではFCVの量産効果を下支えする導入補助、FCVの低コスト化や高耐久化に向けて燃料電池・水素タンクの技術開発、海外展開に向けた制度整備を、水素ステーション側ではFCVの市場投入に先行して水素ステーションの整備費用の一部の補助、圧縮機や蓄圧機など構成機器の低コスト化に向けた技術開発・支援、高圧ガス保安法の規制見直しなどを国として進めているという。
水素ステーションについては、現在首都圏に37個所、中京圏に20個所、関西圏と北部九州圏にそれぞれ12個所と、計81個所で整備が進められており、そのうち23個所がすでに開所されている。この状況を諸外国と比べてみると、米国 カリフォルニア州で8個所の開所(51個所を整備中)、欧州ではドイツで15基の開所(23個所を整備中)にとどまるなど、日本が先行している状況を報告。加えて戸邉氏は「国としましても、産学官が連携してFCVと水素ステーションの普及・拡大に向けてしっかりとサポートしていきたいと考えている」と述べている。
水素ステーションの運営支援の内容
そして自動車メーカー3社を代表し、トヨタ自動車 専務役員の伊勢清貴氏が水素ステーションの整備促進に向けた支援内容を発表。
伊勢氏はまず「日本は水素社会に向けた歩みを始めた。今後のエネルギー・環境問題の対応の一環として、特に資源の少ない日本にとって水素社会の実現は喫緊のテーマであり、まさに“まったなし”の取り組みが求められるといっても過言ではない。しかし、水素社会の実現は簡単ではなく、政府、インフラ事業者、自動車メーカーがしっかりと連携して取り組んでいくことが何よりも重要と考えている」とコメントするとともに、「水素社会の実現に向けて、自動車メーカーがFCVを普及させるためにやらなければならないこと。それは言うまでもなくFCVを魅力ある商品として提供すること」とし、これにより水素社会の実現に貢献していきたいと述べた。この商品の提供とともに需要なのが水素ステーションが整備されることになるが、「FCVの導入初期においてはクルマの普及台数は少なく、水素ステーションの稼働率も低いため水素ステーションの運営は厳しいものがある」(伊勢氏)。
こうした状況を踏まえ、自動車メーカー3社は水素ステーションの運営支援をはじめとする新たな施策を決定。運営支援については先の記述通り、HySUTの組合員を支援対象に、NeVの「燃料電池自動車 新規需要創出活動助成事業」で認められたステーションの運営に係る経費に対して支援が行われる。支援割合は1/3かつ、支援上限額は1基当たり年間1100万円で、支援基数は100基とアナウンスされた。2020年ごろまでの支援総額は50~60億円程度を見込んでいる。この運営支援の窓口はHySUTが担い、7月1日から申請を受け付けている。
さらにFCVの普及を目的として、ユーザーに安心してFCVに乗ってもらうために、インフラ事業者と共同で「①水素ステーションに関するお客様のニーズやステーション稼働履歴等の情報を活用したお客様サービスの向上に向けた取り組みの推進」「②水素ステーションの営業日数や営業時間の延長、稼働情報の充実・提供、及び多くのお客様がアクセスしやすい効率的なステーション整備等による利便性の向上」「③広く一般の方も対象とした燃料電池自動車や水素に対する理解促進および認知度の向上」という水素充填の環境作りにも取り組むことが発表されている。
伊勢氏は最後に、「FCVは水素社会実現に向けてのけん引役としての役割が期待されている。今後の普及に向けて、自動車メーカーとしては政府、インフラ事業者の方々とがっちりとスクラムを組んで取り組んで参りたいと考えている」と抱負を述べた。