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【WEC 第6戦 富士】予選リポート…ポルシェが決勝レースのフロントローを独占

スーパーフォーミュラのタイムを軽く上回るラップタイムを記録

2015年10月9日~11日開催

ポールポジションを獲得した17号車 ポルシェ 919 ハイブリッド(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンドン・ハートレー組)

 10月9日~11日の期間、富士スピードウェイで開催される「FIA 世界耐久選手権 富士 6時間耐久レース」。10日は予選が行われ、最上位クラスLMP1-Hで今シーズン速さを見せている17号車「ポルシェ 919 ハイブリッド」(ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンドン・ハートレー組)が、11日の決勝レースでポールポジションを獲得した。

 2位も18号車「ポルシェ 919 ハイブリッド」(ロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リーブ組)で、ポルシェはフロントローを独占した。

 ドライバーズポイントリーダーの7号車「アウディR18 e-トロン クワトロ」(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)は3位、地元のトヨタ勢は、1号車「トヨタ TS040 ハイブリッド」(アンソニー・デビットソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋 一貴組)が5位、2号車「トヨタ TS040 ハイブリッド」(アレックス・ブルツ/ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ組)が6位となっている。

予選5位の1号車 トヨタ TS040 ハイブリッド(アンソニー・デビットソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋 一貴組)

 以下、ノンハイブリッドLMP1は13号車「レベリオン R-One・AER」(アレキサンドレ・インペラトーリ/ドミニク・クライハマー/ダニエル・アプト組)、LMP2は「26号車 リジェ JS P2・ニッサン」(ロマン・ルシノフ/ジュリアン・キャナル/サム・バード組)、LMGTE PROは71号車「フェラーリ 458 イタリア」(ダビデ・リゴン/ジェームス・カラド組)、LMGTE AMは50号車「シボレー コルベット C7.R」(ジャンルカ・ローダ/パオロ・ルベルティ/ニコライ・シルベスト組)がそれぞれ最上位グリッドを獲得した。

LMP2最上位は26号車 リジェ JS P2・ニッサン(ロマン・ルシノフ/ジュリアン・キャナル/サム・バード組)、ポイントリーダーKCMGとのポイント差を縮めるレースにしたいところ

 FIA 世界耐久選手権(WEC)は、LMP1/LMP2などのスポーツプロトタイプカーと、LMGTEと呼ばれるGTカーによって争われる世界規模の耐久レースのシリーズで、そのシリーズのハイライトとなるル・マン24時間レースを頂点に全8戦でシリーズが戦われている。第6戦は、明日10月11日に6時間にわたる耐久レースとして決勝レースが行われる予定だ。

ポルシェVSアウディとなっている今年のLMP1クラス、トヨタがどこまで挽回できているかが焦点

予選2番手を獲得した18号車ポルシェ 919 ハイブリッド(ロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リーブ組)

 今年のWECは、2014年とは様相が全くことなっている。昨年のWECでは、トヨタVSアウディという従来から参戦してきた2つのメーカーに、新規参戦となるポルシェが挑むという形になっていた。ル・マン24時間こそ、速さに勝るトヨタに信頼性の問題が発生してアウディが勝ったが、選手権はドライバーはアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミが、そして製造者部門はトヨタが獲得するなど、昨年のWECはトヨタの年だったと言っていい。そのトヨタにとっては信頼性の問題で取りこぼしたル・マン24時間を、2015年こそ取りに行く、そうなるはずだった。

 ところが、トヨタが昨年スペックの車をアップデートするという選択肢をとり、信頼性はそのまま性能を引き上げるという比較的コンサバな選択肢をとったのに対して、ポルシェ、アウディは新しい車体を含めて、パワーユニットなど多くを見直しており、結果ポルシェ、アウディがトヨタを大きく引き離してレースを行うというシーズンになっている。

 特に大きな性能向上を果たしてポルシェは、アウディに対しても差をつけており、8MJ(メガジュール)という規定一杯のハイブリッドパワーを生かしたストレートでの速さ、さらにはピット作業も迅速に行えるように車を設計するなど、車のパフォーマンスという意味ではポルシェが一歩抜きんでている。それを生かして、ル・マン24時間レースを勝ったのは、記憶に新しい所だ。

 しかし、これまでのドライバーズポイントのリーダーは、アウディの7号車。アウディは、車の速さこそポルシェ2台に劣るものの、ドライバー三人(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)のレース運びのうまさなどで確実にポイントを獲得してきており、開幕戦よりポイントリーダーでありつづけている。この富士のレースでも、そうした速さのポルシェ、巧さのアウディという戦いが繰り広げられる可能性が高い。その構図の中で、来年に向けてトヨタがどれだけ挽回してくるのか、それが焦点となるだろう。

予選3番手を獲得したポイントリーダーのアウディR18 e-トロン クワトロ(マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ)

予選は予想通りポルシェVSアウディの構図だが、ポルシェがフロントローを独占

 予選はLMGTE PRO/AMと、LMP1/2の2回に分けて行われたが、14時10分からはLMP1/2クラスの予選が行われた。

 予選では、レース前の予想通り、ポルシェとアウディの激しい争いが展開された。しかし、その中でもいきなり突き抜けた速さを見せたのは、ポルシェのエースカーとなる17号車 ポルシェ 919 ハイブリッド。ティモ・ベルンハルトとマーク・ウェバーが予選アタックを担当し、二人の平均(WECの予選は、二人の予選アタッカーの平均タイムでタイムが決まる)が1分22秒888という驚速タイムを記録し、早々にポールポジションをほぼ確実にした。なお、昨年の最速タイムは、ポールを獲得したトヨタTS040 Hybrid(今年の1号車 アンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ組)で1分26秒886であるので、実にそれを4秒近く縮める驚速タイムと言ってよい。

 なお、昨年の7月に行われたスーパーフォーミュラ第3戦で、A.カルダレッリ(トムス)がドライコンディションで記録したポールタイムが1分23秒667だったので、軽くそのタイムを上回ってしまっている。もちろん開催時期や天候などが異なるので一概には言えないが、スーパーフォーミュラのレーシングカーは、F1に匹敵する速さを持つレーシングカーとして知られており、そのタイムを軽く上回ってしまうのだから、現在のWECのLMP1-Hが異次元のレーシングカーだと言えることがこれからもわかるだろう。

 これに対して2位以下は非常に混戦で、予選終了直前までは、7号車 アウディR18 e-トロン クワトロが、ポルシェのもう一台18号車に差をつけて2位になっていたのだが、最終ラップにアタックした18号車のマルク・リーブが大幅にタイムアップし、わずか9/1000秒差という驚くべき僅差で、2位に躍り出ることに成功した。これにより、アウディは7号車が3位に、8号車 アウディR18 e-トロン クワトロ(ルーカス・ディ・グラッシ/ロイック・デュバル/オリバー・ジャービス組)が4位となった。

 2台のトヨタ勢は、こうしたポルシェ、アウディの争いに割って入ることができず、中嶋一貴組の1号車トヨタ TS040 ハイブリッドが5位、2号車 トヨタ TS040 ハイブリッドが6位で、いずれもポールを獲得した17号車 ポルシェに2.3~2.5秒差と大差をつけられている状況で、明日のレースも厳しい展開になりそうだ。

 以下、ノンハイブリッドLMP1は13号車 レベリオン R-One・AER(アレキサンドレ・インペラトーリ/ドミニク・クライハマー/ダニエル・アプト組)、LMP2は26号車 リジェ JS P2・ニッサン(ロマン・ルシノフ/ジュリアン・キャナル/サム・バード組)、LMGTE PROは71号車 フェラーリ 458 イタリア(ダビデ・リゴン/ジェームス・カラド組)、LMGTE AMは50号車 シボレー コルベット C7.R(ジャンルカ・ローダ/パオロ・ルベルティ/ニコライ・シルベスト組)がそれぞれ最上位グリッドを獲得した。

ノンハイブリッドLMP1の最上位はレベリオン R-One・AER(アレキサンドレ・インペラトーリ/ドミニク・クライハマー/ダニエル・アプト組)

結果(LMP1-H)

総合順位カーナンバードライバー車両タイヤドライバー1ドライバー2平均
117ティモ・ベルンハルト/マーク・ウェバー/ブレンドン・ハートレーポルシェ 919 ハイブリッドMI01:22.88801:22.6391'22.763-
218ロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リーブポルシェ 919 ハイブリッドMI01:23.01601:23.1271'23.0710.308
37マルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエアウディR18 e-トロン クワトロMI01:23.25501:22.9091'23.0820.319
48ルーカス・ディ・グラッシ/ロイック・デュバル/オリバー・ジャービスアウディR18 e-トロン クワトロMI01:23.44601:23.0441'23.2450.482
51アンソニー・デビットソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋 一貴トヨタ TS040 ハイブリッドMI01:24.76001:25.3841'25.0722.309
62アレックス・ブルツ/ステファン・サラザン/マイク・コンウェイトヨタ TS040 ハイブリッドMI01:25.24501:25.4091'25.3272.564
LMGTE PRO最上位は71号車 フェラーリ 458 イタリア(ダビデ・リゴン/ジェームス・カラド組)
LMGTE AM最上位は50号車 シボレー コルベット C7.R(ジャンルカ・ローダ/パオロ・ルベルティ/ニコライ・シルベスト組)

明日の天候は各チームともに雨を予想、ウェットではまた別の展開があり得るのか

17号車ポルシェでタイムアタックを担当したマーク・ウェバー(左)とティモ・ベルンハルト(右)

 予選終了後には、各クラスのポールポジションを獲得したドライバ(3人のドライバが登録されている場合でも、タイムアタックを行った二人のドライバ)による記者会見が行われた。この中で、ポールを獲得した17号車 ポルシェのティモ・ベルンハルトは「このサーキットは特にセクター3は難しいし、簡単ではなかったので、ポールを取れたのは非常に嬉しい。チームのもう一台もフロントローを取れたし、マージンも大きい。だが、大事なのは明日のレースで、7号車のアウディとのポイント差を縮めることだ」とのべ、マーク・ウェバーは「タイムを大幅に大幅に短縮できたのは、メーカーがレギュレーションをよく検討して速い車を作ってきてくれたから。チームにお礼を言いたいね。明日は雨になるので、今日とは全く違った展開になる可能性もあるが、7号車とのポイント差を縮めたい」とのべ、いずれも明日のレースでも勝って、7号車アウディとの差を縮めたいとした。

 なお、ウェバーのコメントにあったように、明日はウェットコンディションでのレースが予想されており、天気予報では今夜の夜中から降り始め、レース途中の午後にあがるという予報だ。このため、雨量などによっては今日とは全く違った展開になる可能性もあり、ポルシェとアウディのガチンコバトルがどのようになっていくのかが焦点となるだろう。

予選後行われた記者会見に登壇した、各クラス最上位のタイムアタックを行ったドライバー

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)