バンク付きのテストコースで体感!!「クリーンディーゼル実車体験試乗会」
クリーンディーゼル車3台を乗り比べ

「クリーンディーゼル実車体験試乗会」が開催されたボッシュ塩原試験場

2011年10月29日開催



3台の試乗車を用意して、開催された

 クリーンディーゼル普及促進協議会は10月29日、ボッシュの塩原試験場(栃木県那須塩原市)で「クリーンディーゼル実車体験試乗会」を初開催した。この試乗会は、最新のディーゼルエンジン搭載車にテストコースで試乗してもらい、その加速性能や静粛性を体感してもらおうというもの。1部(9時~12時30分)、2部(13時~16時30分)、各20組の一般の参加者をインターネットで募集し、約200名の応募があったと言う。すでに第2回目の募集も始まっており、興味のある方は同協議会のWebサイト(http://www.cleandiesel.gr.jp/)を、参照していただきたい。

 試乗可能車種は、メルセデス・ベンツ「E350 BlueTEC ステーションワゴン アヴァンギャルド」「ML350 BlueTEC 4MATIC」「CLK320 CDI カブリオレ(日本未発売)」の3台で、それぞれテストコースを2周でき、計6周の走行ができたほか、1部、2部とも若干の空き時間があったため、気になるクルマに関しては、再度試乗することができた。

 ボッシュの塩原試験場は、普段は自動車メーカーに納入するABSや横滑り防止装置であるESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)のテストを行っており、部外者は立ち入り禁止の個所。この試乗会のために、一部エリアのみを立ち入り可能としていた。

クリーンディーゼル普及促進協議会 事務局長 山中隆一氏

ディーゼル車の“汚く”“うるさく”“遅い”は昔の話
 試乗の前に、クリーンディーゼル車や試乗コースに関する説明が参加者に向けて行われた。

 試乗会を主催するクリーンディーゼル普及促進協議会 事務局長 山中隆一氏は、クリーンディーゼル車を普及促進するのは、社会的要請とユーザーメリットの2つの側面があると言う。「クリーンディーゼル車は、ガソリンエンジン車に比べて効率がよいため、CO2の排出量が約25%~30%少ないと言われています。自動車や電車、飛行機などの運輸部門で発生しているCO2は、クリーンディーゼル車が日本の乗用車の30%を占めたとすれば、3割削減できるという試算もあります」と言い、クリーンディーゼル車が普及するのは社会的に大切なことだと語る。

 また、ユーザーメリットに関しては、「なんと言っても、ディーゼル車は乗って楽しいし、経済性が高いというメリットがあります。欧州では、環境性能と走行性能が評価され市場シェアが50%を超えていますが、日本ではわずか0.2%。ディーゼル車というのは“汚く”“うるさく”“遅い”というマイナスイメージがついてしまっています。ディーゼルエンジンは、1990年代に大きな技術的な革新があり、今のディーゼル車は一昔前のものとまったく違っています」と語り、この技術革新を体感してもらうのが今回の試乗会の目的になる。


ボッシュ ディーゼルシステム事業部 営業・プロジェクト統括部門 営業企画部 課長 藤田一郎氏

75km/hでバンクに進入、120km/でのストレート走行
 続いて試乗に関する説明が、ボッシュ ディーゼルシステム事業部 営業・プロジェクト統括部門 営業企画部 課長 藤田一郎氏から行われた。この塩原試験場は、発売前の車両などのテストを行っているため、社員でもなかなか立ち入れない場所とのこと。

 試乗に用いるコースは、外周をぐるりと回る全長1600mの周回路で、反時計回りに走ることになる。試乗の際の設定速度は、スタート直後のストレート(コース図上部)が100km/hで、その後50km/h~75km/hで35度のバンクを回る。藤田氏は、このバンクについて、「設定速度を守れば安全に走行でき、ステアリングを必要以上に切ることなくコーナリングできます」と言い、普段は味わえない、運転感覚を楽しんでほしいと説明。バンクを抜けた裏のストレートについての説明に移ったが、藤田氏が「裏のストレートは120km/h」と言ったところ、参加者からどよめきが上がった。

塩原試験場概要図。上部に見える8番の個所で、事前説明が行われた。試乗コースは、赤い色で示された全長1600mの周回路35度バンク。かつて富士スピードウェイにあった30度バンクよりきつい傾斜となる

 75km/hでバンクに進入でき、高速道路の制限速度を超える120km/hで直線を走行できるというのは、テストコースならではの体験と言える。

 裏ストレートを抜けたところにある、バンクと反対側に位置するコーナーは、フラットになっているため制限速度は50km/h。藤田氏は「裏のストレートではしっかりアクセルを踏んで加速感を体感していただき、最終コーナーでは思い切り減速してほしい」と、最新ディーゼル車ならではの運動性能を感じてほしいと語った。このコースを2周して、1台の試乗が終了することになる。

 なお、試乗については、スタッフが助手席に同乗し、万が一の事態をサポート。試乗途中で気分がわるくなる、運転の自信がなくなるなどの際には、運転を交代してくれ、スタート地点まで戻ることができる。


モータージャーナリスト 川端由美さん

「すごく特別な体験ができる」試乗会
 クリーンディーゼルの詳細については、モータージャーナリスト 川端由美さんが解説。川端さんは、昔のディーゼル車と今のクリーンディーゼル車の違いをできるだけ分かりやすい言葉で伝えようとしていた。

 そのポイントは3つ。昔のディーゼル車は黒いすすや、NOx(窒素酸化物)を出していたが、クリーンディーゼル車はDPF(Diesel particulate filter)を装備することですすを取り除き、NOxに関しても対策がなされていること。また、音や振動に関しては、乗用車用においてはボッシュが1997年にコモンレール方式を実用化し、燃焼室内の爆発を細かく制御できるようになって、画期的に静かになったこと、動力性能に関しては、ターボ技術の進化により、鋭い加速を実現できるようになったことを紹介。

 テストコースでクリーンディーゼル車を体感できるこの試乗会は、「すごく特別な体験ができる機会」と言い、「おしりからの振動とか、ステアリングからの振動とかを体感して、テストコースですから、そこは思い切ってアクセルを踏んでください」と、積極的な運転を勧めていた。

秋のやわらかな日差しの中、テストコースを疾走
 会議室での試乗説明などを終えると、いよいよテストコース脇の待合エリアに出て試乗が始まる。そこには試乗車はなく、構造説明用のクリーンディーゼル車「メルセデス・ベンツ E350 BlueTEC アバンギャルド」が置かれているのみ。川端さんは、このE350を例に、エンジンシリンダー上に配管されるコモンレールや、トランクルーム下に設置されているNOx浄化装置「尿素SCR」について説明。一通り構造を学んだところで、試乗会スタッフから「それではテストコースをご覧ください」とのアナウンスが流れ、3台の試乗車がテストコースを疾走し、参加者の前に登場した。

構造説明に使われた、メルセデス・ベンツ E350 BlueTEC アバンギャルドクリーンディーゼルのポイントとも言える、コモンレールを解説中
V型6気筒 DOHC 24バルブ 3リッター ターボディーゼル。ボッシュのコモンレール燃料噴射装置を搭載する。ポスト新長期排ガス規制に適合トランクルーム下には、尿素SCR用のタンクを装備する。スペアタイヤはなく、ランフラットタイヤを装着
木陰から3台の試乗車が登場。ちょっとした演出だが、特別な試乗会であることを感じられる瞬間

 最初にディーゼルの現状や、テストコースの解説はあったものの、この実車体験試乗会は乗ってもらうことに主眼が置かれている。試乗車が登場して以降は、早いペースで試乗が進み、好天の空の下、バンクのあるテストコースを楽しく運転しているようだった。午前・午後とも、およそ半数の人が、かつてディーゼル車に乗ったことがあると言い、最新のクリーンディーゼル車の静かさや、力強い加速には驚いていた様子。

試乗は極めてスムーズに進んだテストコースへの出入りはスタッフの指示に従って。3台を、一定の間隔をもってテストコースへ導く
バンクを走る3台の試乗車。左から、「E350 BlueTEC ステーションワゴン アヴァンギャルド」「ML350 BlueTEC 4MATIC」「CLK320 CDI カブリオレ」。黄色いラインまでの走行を許していた
表のストレートは、100km/hで走行35度バンクへの進入は75km/h以下で裏ストレートは、しっかり加速し120km/hで駆け抜ける

 とくに静かさにはついては、多くの人から「こんなに静かだとは思わなかった」という声が聞かれた。そのほか多かったのが「マツダのSKYACTIV-Dに期待している」という声。マツダが2012年春に日本で発売を予定している「CX-5」に対する期待が高いことを感じられた。「実際にディーゼル車を購入したいですか?」という質問には、「買いたいけど、安いクルマがほしい」「コンパクトなディーゼル車がほしい」「選択肢が少ない」「スバルのボクサーディーゼルはいつ出るのか」という答えが返ってきた。試乗してみて、ディーゼル車の進化は体感できたものの、実際に購入する際には、販売車種の少なさがネックになりそうだ。

テストコースへの進入路進入したら100km/hまで加速赤いパイロンが見えたら75km/hに減速し、バンクへ進入
縦Gのかかるバンク部。異次元感覚を味わえる
バンクを抜けたら、アクセルを踏み120km/hまで加速。バンクから裏ストレートが、このテストコースのハイライトとなる部分あっという間にフラットな最終コーナーが迫る。赤いパイロンの個所で50km/hまで減速最終コーナー抜けたら、もう1周。シンプルなコースなので、すぐに理解できる

 現在のクリーンディーゼル車に関するネガティブな意見は1つもなく、コモンレールなどのテクノロジーによって大幅に進化したディーゼル車の理解が進むことで、シェア0.2%という状況は変わっていくのかもしれない。クリーンディーゼル普及促進協議会は、11月26日に年内最後となる試乗会を、ボッシュの塩原試験場で開催することを発表しており、興味のある方は申し込んでみるのがよいだろう。最新のクリーンディーゼル車を試乗できるのはもちろん、ボッシュの社員でもなかなか入ることのできないバンク付きテスコースを走行できるのは、貴重な体験になるだろう。

川端由美さん運転中。秋の日差しを浴びながら走るオープンカーは、「気分最高です!!」。参加者からの人気も高かったとかチャイルドシートも用意されており、親子での同乗も可能参加者へのお土産。メルセデス・ベンツのトラベルセットと、ボッシュのキーホルダー

(編集部:谷川 潔)
2011年 11月 4日