BMW、最新の技術を紹介する「BMW Group Innovation Day in Japan」開催
「電動化して補完していくというのがBMWの考え方。もう昔には戻れない」

BMW X5に搭載されている直列6気筒ターボディーゼルエンジン

2012年11月7日開催



ディーゼルエンジンを担当するクリスチャン・メルツェンガー氏

 ビー・エム・ダブリューは11月7日、都内で報道関係者に最新の技術を紹介する「BMW Group Innovation Day in Japan」を開催した。本国からディーゼルとハイブリッドの開発担当者が来日し、「Efficient Dynamics=よりクリーンによりパワーを」をメインテーマに説明したほか、MINIでiPhoneを搭載してナビゲーションなどを行う「MINI Connected」も紹介された。

ディーゼルとガソリンでエンジンパーツ共用化を進める
 クリーンディーゼルエンジンについて説明したのは、独BMWでディーゼルエンジンを担当するクリスチャン・メルツェンガー氏。欧州の排ガス規制ユーロ6や日本のポスト新長期規制の対策も担当している。

 メルツェンガー氏はBMWのディーゼルエンジンの歴史を振り返り、1983年に初めて6気筒ディーゼルエンジンを搭載した「524td」と2012年の「750d」の比較や、1997年の「325td」と2012年の「320d」の比較を示し、トルクや出力が向上している一方で、燃費向上、排出ガス軽減などが進んでいることを強調した。

 この結果、ヨーロッパでのBMW車のエンジンは68%がディーゼルとなっており、Xシリーズや5シリーズで85~95%といったディーゼル比率を実現しているという。

 メルツェンガー氏は環境技術についても紹介し、ディーゼルエンジンのNOxの軽減策として、BMWはNSCとSCRの2つの方式を採用、車両重量やエンジン負荷によって最適なものを組み合わせていると説明した。重量が重くなるSCR方式は、車両重量の重いX5シリーズに搭載、NSC方式は比較的軽量な3シリーズ、5シリーズ、X3シリーズに搭載するとした。

 これらの技術を採用した結果、一足先にユーロ6への対応が進み、ヨーロッパ市場では2012~2014年にクリーンディーゼル車のさらなる拡大を進める計画。アメリカ市場では2008年に2つのディーゼル車を投入したが、こちらもさらなる拡大を計画しているという。

 また、今後の展望として、ガゾリンエンジンとディーゼルエンジンのパーツの共通化を進め、同じ気筒数のエンジンでは30~40%が共通。1気筒あたり500ccがシリンダーの最適容量とし、3気筒、4気筒、6気筒と気筒数の異なるエンジンも同士でも60%の部品共通化を実現する計画だという。

エンジンを電動で補完していく時代、もう昔には戻れない
 アクティブハイブリッド技術などを説明したのは、独BMW ハイブリッド・パワートレイン開発・キャリブレーション担当のデニス・ポール氏。

 ポール氏は今後のエンジンのトレンドを示し「内燃機関がまだ続き、大きな販売ボリュームを占めるが、電動化して補完していくというのがBMWの考え方。もう昔には戻れない」とハイブリッド化が進行するとの予測を示し、「内燃エンジンに比べて都市走行ではもっと高いポテンシャルを持っている」とハイブリッドシステムを評価した。

 一方で、「ハイブリッドテクノロジーを利用して燃費を最大限に上げるが、パワートレインはBMWらしさを失うことはあってはならない」とBMWらしさの継承を強調する。

ハイブリッド・パワートレイン開発・キャリブレーション担当 デニス・ポール氏アクティブハイブリッド3/5/7に搭載されている電気モーター内蔵の8速AT

 現在のアクティブハイブリッド3/5/7はいずれも6気筒の3リッターエンジンと8速ATを搭載する。これについては「1つのパワートレインで、3つの全く違う車両が可能になった。アクティブハイブリッド3は最もダイナミック、アクティブハイブリッド5はスタイリッシュ、アクティブハイブリッド7は最も快適で洗練されたクルマ。1つのパワートレインによって、新しいハイブリッドドライブの差別化を実施する」とそれぞれのクルマのキャラクターに合わせて仕上げられていることも訴えた。

 ポール氏はBMW iコンセプトにも触れ「iコンセプトはサステナブルモビリティを示している。iコンセプトを使って、新しいアプローチを問いかけている」と目的を話した。完全な電気自動車で毎日の都市走行や通勤向けのi3コンセプト、プラグインハイブリッドのスポーツカーであるi8コンセプトの2つについて「i3とi8に共通するのはエレクトリックモーターで走行することだが、解釈の違いがある。i3、i8はソリューションに対する考え方を示している」と説明、完全な電気自動車ではBMWの求めるスポーツ走行ににはまだ力不足であることを匂わせた。

センターメーターに内蔵されるMINIビジュアルブーストのイメージ

iPhoneを使ってMINIを楽しめるカーナビゲーション
 「MINI NAVI」と「MINI CONNECTED」を説明したのはビー・エム・ダブリュー MINIプロダクトマネージャーの佐藤毅氏。

 iPhoneをMINIに装着して使うシステムで、MINI NAVIはその名のとおりナビゲーションシステムでiPhoneをホルダーに装着してカーナビとするもの。MINI CONNECTEDはMINIでドライブしながらSNSの活用などを行う仕組みとなっている。

 MINI NAVIの利用は、MINIを購入時に14万5000円のMINIナビゲーションパッケージを装着する必要がある。MINIナビゲーションパッケージはセンターメーターの中央が6.5インチの液晶ディスプレイとなるMINIビジュアルブースト、iPhoneホルダー、MINIコネクテッドの3点がセット。iPhoneに年額6100円の有料アプリ「MINI NAVI」をインストールし、iPhoneを装着すれば、すぐに利用できる。

 MINI NAVIはアイシン・エイ・ダブリューの「NAVIelite」をベースにカスタマイズしたもの。車速情報やステアリング情報をクルマからiPhoneに伝えることで自車位置精度を高めているほか、センターコンソールのジョイスティックで操作もできる。ナビの地図画面はiPhoneの画面となり、ホルダーに装着した状態で安全に使用できるようになっている。

BMWグループジャパン MINIプロダクトマネージャー 佐藤毅氏

 一方、MINI CONNECTEDは、SNSの活用などエンターテインメイント系のシステム。iPhoneで無料のアプリ「MINI CONNECTED」をインストールして使用する。

 現在、6つの機能があり「Dynamic Music」機能は、車両の速度にリンクした音楽を流し、加速にともなって音楽が高揚し、ウインカーを出すと示した方向からパーカッションのリズムが聞こえるなど、遊び心満載の機能。

 「ドライビング・エキサイトメント機能」は、前後左右の加速度のフォースメーターをはじめエンジン回転数など各種情報をMINIビジュアルブーストに表示する。「ミニマリズム・アナライザー」はエコドライブを点数化するもので、通信機能を活かしてコミュニティでランキング化もする。

 また、事前に設定したRSSを使ったニュースの表示、TwitterやFacebookへ事前設定したメッセージを自動投稿する機能も持っている。これらはセンターメーターのMINIビジュアルブーストの画面を用いて行う。

 佐藤氏によれば、NAVI、CONNECTEDともにiPhone 4Sまでの対応。iPhone 5は本体サイズとコネクターが異なるため現在非対応で、対応作業は大急ぎで進めているとのこと。MINIだけでなくBMW車への展開については、NAVIに関してはBMWは独自のナビゲーションシステムを持っているため展開はないが、CONNECTEDについてはBMWでも展開する可能性があるとした。

環境技術とコミュニケーションの進化を訴えたいBMW
 現在、BMWの国内ラインナップは「高効率ガソリンエンジンBMW TwinPower Turboの展開がほぼ完了」「ディーゼルラインナップが国内で最高の6車種」「ハイブリッドラインナップが4車種に」という特徴を持ち、輸入車ブランドでは環境対応が進んでいる。技術説明会を開催した背景には、こうした特徴をアピールする狙いがあったと思われる。

 一方、MINIに搭載されるiPhoneを使った車内システムも注目の技術の1つ。実際に触れてみたい人のために、MINI NAVI、MINI CONNECTEDを装備したMINIのロンドンパッケージを11月8日から11月26日まで東京駅近くのBMW Group studioに展示する。

Efficient Dynamicsについての商品展開と環境対応状況現在のBMWの環境車ラインアップ

(正田拓也)
2012年 11月 8日