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“交通死傷者ゼロ”に取り組む「2012 トヨタ安全技術説明会」(前編)

「間もなく発売するセダン」は先進安全技術を満載

 トヨタ自動車は11月12日、3つの安全に関する発表を行った。1つは「衝突回避支援型プリクラッシュセーフティシステム」、もう1つは、「インテリジェント クリアランス ソナー(Intelligent Clearance Sonar)と、ドライブ スタート コントロール(Drive-Start Control)」、そして最後の1つは「東富士研究所にITS実験場を設けた」という内容に関してだ。

●トヨタ、40km/h~60km/hからの追突事故までカバーする衝突回避支援型プリクラッシュセーフティシステム
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121112_572465.html
●トヨタ、駐車場内での衝突事故被害軽減に寄与する技術を開発
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121112_572434.html
●トヨタ、東富士研究所に「ITS実験場」を新設
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121112_572418.html

 11月中旬、静岡県裾野市にあるトヨタ東富士研究所でそれら安全技術に関する「2012 トヨタ安全技術説明会」が開催され、実際にそれらの安全技術を体験することができた。内容が多岐にわたるため、前編ではトヨタの安全に対する考え方とITS実験場を、後編ではモータージャーナリスト岡本幸一郎氏による体感記事をお届けする。

「間もなく発売するセダン」に導入されるさまざまな安全技術

トヨタ安全技術説明会の開催について語る、トヨタ自動車 専務役員 早川茂氏
トヨタの安全技術の詳細ついて語る、トヨタ自動車 常務役員 吉田守孝CSTO

 トヨタ安全技術説明会は、トヨタ自動車 常務役員 吉田守孝CSTO(チーフ セーフティ テクノロジー オフィサー)によるプレゼンテーションから始まった。吉田CSTOは、トヨタが掲げるグローバルビジョンについて説明。トヨタグローバルビジョンは「人々を安全・安心に運び、心までも動かす」から始まっており、これは「交通死傷者ゼロ」に対する「我々の強い思いが込められている」と言う。

 そのためのアプローチとして「三位一体」「実安全の追求」を採り、「統合安全コンセプト」という考え方で安全技術開発を進めている。。三位一体とは、「人」「クルマ」「交通環境」が一体になった取り組み。そして、実安全の追求とは「事故の調査・解析」「開発・評価」「シミュレーション」を行うことで、実際の事故に学び、事故への対策を行っていく。

交通死傷者ゼロがトヨタの安全技術のゴール
アプローチ方法
統合安全コンセプト

 統合安全コンセプトは、「駐車場」「事故を未然に防ぐ予防安全」「プリクラッシュ」「事故の被害を軽減する衝突安全」「救助」の5つの運転シーンでの最適な支援とシステムの連携を示したもの。衝突安全ボディー「GOA」は衝突安全に、オートクルーズコントロールは「予防安全」に分類されている。このようにシーンごとに技術を整理・開発することで、究極の安全を目指していく。

 世界では年間120万人が交通事故で亡くなっているが、日本での交通事故死者数は近年減少傾向にあり、昨年は4612人となっている。ところが、歩行者、高齢者の死亡者数は微減であり、これが課題であると言う。また、交通事故の3割が追突事故となっているため、「歩行者、高齢者、追突事故に対応した安全技術の開発が当面の緊急課題である」(吉田氏)としており、この対策に取り組んでいる。

 この追突事故を防ぐための対策が自動ブレーキなどを含む「プリクラッシュセーフティシステム」。プリクラッシュセーフティシステムでは、追突の可能性がある場合、警告が行われるが、これによりブレーキを踏めたドライバーはシミュレーター実験では87%。そのため、しっかりとした減速を行うため、ブレーキを踏む力を強力にアシストすることで相対速度を最大60km/h減速、万が一踏めなかった場合でも自動ブレーキで15~30km/h減速するシステムを開発した。

 追突事故の90%以上は、前のクルマとの相対速度が60km/h以内で起きており、このシステムによりそれらの事故をカバーすることが可能だろうとする。このシステムは「間もなく発売するセダンに普及版のシステムとして導入する」と言い、順次普及させていく。

交通事故の実態
プリクラッシュセーフティシステムにより追突を防ぐ
進化型のプリクラッシュセーフティシステムを「間もなく発売するセダン」に搭載
カローラ、カローラ フィールダーの安全技術

 歩行者の事故に対しては、歩行者の発見を早く行うための「オートマチックハイビーム」を小型車の「カローラ」「オーリス」にも導入。さらに万が一歩行者と衝突した際の歩行者保護対策となる「ポップアップフード」を、やはり「間もなく発売するセダンに導入」(吉田氏)すると言う。

 さらに、シフトチェンジ間違いによる飛び出しを防ぐ「DSC(ドライブ・スタート・コントロール)」、慌てて急発進した際の衝突事故を防ぐ「ICS(インテリジェント・クリアランス・ソナー)」も、「間もなく発売するセダンに導入」すると言う。

歩行者事故対策として「オートマチックハイビーム」をコンパクトカークラスにもすでに導入
「間もなく発売するセダン」に搭載するポップアップフード
「間もなく発売するセダン」に搭載するDSCとICS
DSC(ドライブ・スタート・コントロール)、ICS(インテリジェント・クリアランス・ソナー)解説映像
ポップアップフードの展示
圧力チャンバーがフロントバンパーの裏側全周にあるため、歩行者衝突の検知能力も高い
圧力チャンバーはゴム製
ボンネットフードを持ち上げ、歩行者への衝撃をやわらげるアクチュエーター
「間もなく発売するセダン」ポップアップフード解説映像

インフラ協調型の安全運転システムの大規模実験場を建設

 トヨタは自律だけでは難しい、見通しのわるい地点での出会い頭の事故などを防ぐ、インフラ協調型の安全運転システム開発への投資も行う。これは、アナログテレビ放送終了後に、車両同士の通信が可能な760MHz帯をITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)用として利用可能になり、信号や道路などインフラと協調した安全運転システムの構築が容易になる。

インフラ協調型安全運転支援システム
ITS実験場を設置
将来へ向けて、緊急救助サービスの構築も視野に入れる
こちらは自動運転の実験車

 そのため広さ3.5haの実験場を東富士研究所内に設置。一般道では難しい繰り返し実験などをすでに行っている。その実際も公開された。公開実験では、ITS機能を持つプリウスでITS実験場を走行。実際に、信号や道路脇に設けられたセンサーから情報を得ることで、死角車両や歩行者などの注意喚起をコクピット内に音と画面で警告していた。撮影のためになんどか同乗したが、システムエラーは一度もなく、高い完成度を実現していたのが印象的だ。

トヨタITS実験場解説映像
ITS実験場のメイン施設となる交差点
ITS通信可能なプリウス
アンテナが増設されていた
交差点の設備にはさまざまなセンサー類が取り付けられている
プリウスに表示されるITSの例

 後編では、岡本幸一郎氏による「衝突回避支援型プリクラッシュセーフティシステム」などの体感記事をお届けする。

(編集部:谷川 潔/Photo:安田 剛)