SUPER GT第7戦は36号車 PETRONAS TOM'S SC430（中嶋一貴/ジェームス・ロシター）が残り3周の大逆転で今季2勝目

　10月6日、2013 AUTOBACS SUPER GT第7戦「SUPER GT IN KYUSHU 300km」の決勝レースがオートポリス（大分県日田市）で行われた。GT500クラスは36号車 PETRONAS TOM'S SC430（中嶋一貴/ジェームス・ロシター）が残り3周で大逆転して今季2勝目、GT300クラスは4号車 GSR 初音ミク BMW（谷口信輝/片岡龍也）が前戦に続き2連勝した。

　全8戦で開催されるSUPER GTは、第2戦から第6戦までは獲得ポイントの2倍のウェイトハンデ（40ポイント獲得なら80kg）が課せられる。そのウェイトハンデが第7戦は獲得ポイント数そのまま、最終戦はウェイトハンデなしとなるため、実力のあるチームはこの第7戦と最終戦は有利な条件で戦うことができる。

　土曜日のオートポリスは豪雨と霧に見舞われた。午前中の練習走行は数周の周回で赤旗中断となり、天候が回復することなくセッションは終了した。午後の予選も開始前に中断が決まり、日曜の朝に各クラス25分間の予選が行われることが決定された。

土曜のセッションは雨と霧で中止された

　日曜はときおり太陽が顔を出すこともあったが終日曇天が続き、たまに霧雨がコースを濡らすという微妙な天候となった。土曜の走行が序盤でキャンセルされたため、ドライバーによってはここまでほとんど走行しないまま決勝を迎えることになった。

GT500クラス

　接戦が続くGT500クラスの第6戦までのポイント上位は以下のとおり。10ポイント差に8チームがひしめき合う接戦となっている。残りは2戦。優勝すると20ポイント（2連勝すれば40ポイント）を獲得できるので、今年は下位のチームにもシリーズチャンピオン獲得の可能性がある。

●GT500クラス ドライバーズランキング

　午後2時に決勝レースがスタート。午前中に行われた予選でポールポジションを獲得した38号車 ZENT CERUMO SC430（平手晃平）がスタートでトップをキープし、以下23号車 MOTUL AUTECH GT-R（ロニー・クインタレッリ）、18号車 ウイダー モデューロ HSV-010（山本尚貴）、1号車 REITO MOLA GT-R（本山哲）、12号車 カルソニックIMPUL GT-R（松田次生）、100号車 RAYBRIG HSV-010（伊沢拓也）と、上位陣は予選順位をキープした。

38号車がトップをキープ、23号車、18号車、1号車、12号車が続いた

　トップの38号車 ZENT CERUMO SC430は序盤からハイペースで走行して後続を引き離す。2位の23号車 MOTUL AUTECH GT-Rも後続を引き離すが、3位以下は混戦の様相となった。その後、3位集団もそれぞれ差が広がるが、2位以下の差は徐々に縮まって2位集団を形成していく。

38号車は序盤から独走

23号車も3位以下を引き離す

17号車は9位、36号車は10位でスタート

38号車、23号車、1号車と続く

1号車の後方は18号車、12号車、100号車

　38号車 ZENT CERUMO SC430が10秒以上のマージンを稼いで一人旅となる一方、2位集団は順位を入れ替えながらの攻防が続いた。さらに10位スタートの36号車 PETRONAS TOM'S SC430（ジェームス・ロシター）がこの集団に追い付き、10周目に100号車 RAYBRIG HSV-010を抜いて6位、28周目には18号車 ウイダー モデューロ HSV-010を抜いて5位に浮上した。

6周目で17号車は7位、36号車は8位に浮上

36号車が17号車を抜き7位浮上。上位陣を追走する

3位の1号車に23号車、18号車が続き、6位に浮上した36号車が集団に追い付いてきた

36号車が18号車に追い付き、そして追い抜いて5位に浮上

　レース中盤になると、ウェット路面になるほどではないものの霧雨状の雨が強くなってくる。微妙な雨がタイヤ特性の差によって各車のラップタイムに影響し、順位の入れ替えが激しさを増していった。

　レースの折返しが近づきピットインが始まると、上位陣では23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが先陣を切って29周目にピットイン。次の周には12号車 カルソニックIMPUL GT-R、1号車 REITO MOLA GT-R、36号車 PETRONAS TOM'S SC430、18号車 ウイダー モデューロ HSV-010が同時ピットイン。ここで最後に入った18号車 ウイダー モデューロ HSV-010が2台を抜いてコースに復帰し、事実上の3位にポジションアップした。

ピットアウト後、事実上の2位は12号車

ピット作業で2台抜き、3位に浮上した18号車と4位の1号車

23号車は5位、36号車は6位に後退

　続く31周目に100号車 RAYBRIG HSV-010がピットイン。コースに戻った直後にスピンしてコース復帰に手間どり、最後尾近くまで順位を落として上位争いから脱落した。33周目には12号車 カルソニックIMPUL GT-R（ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ）が第2ヘアピンで単独スピン。すぐに復帰するも、ジェットコースターストレートを下った先でコースアウト、チャンピオン獲得が遠のくリタイヤとなった。

　後続を引き離したまま33周目に38号車 ZENT CERUMO SC430がピットイン。2位に15秒近い差を付けてコースに復帰し、2連勝に向け快走を続ける。

　全車ピットインが完了した時点で、トップは38号車 ZENT CERUMO SC430（立川祐路）。2位以下は1号車 REITO MOLA GT-R（関口雄飛）、18号車 ウイダー モデューロ HSV-010（フレデリック・マコヴィッキィ）、23号車 MOTUL AUTECH GT-R（柳田真孝）、36号車 PETRONAS TOM'S SC430（中嶋一貴）となった。

　ここで4台による2位争いから23号車 MOTUL AUTECH GT-Rが脱落。ピット作業中にリアタイヤを取り付け、給油を開始してから右リアタイヤの締め直し作業を行ったため、ドライブスルーペナルティが課せられ7位に後退した。

　3台となった2位争いだが、17号車 KEIHIN HSV-010（塚越広大）が追い付いて再び4台での争いとなる。ここから抜け出したのが36号車 PETRONAS TOM'S SC430（中嶋一貴）と17号車 KEIHIN HSV-010。そしてレース終盤、独走していた38号車 ZENT CERUMO SC430のペースが落ち始める。

2位集団は1号車、36号車、23号車、18号車となり24号車も追走した

23号車がペナルティで脱落。17号車が24号車を追い抜き5位に浮上してきた

36号車が2位集団から抜け出した

17号車が4位に浮上

17号車が1号車を抜いて3位となり、2位の36号車を追走する

36号車、17号車が2位争いをしながらトップ38号車との差を縮めた

　タイヤカスを拾うなどの要因でグリップを失った38号車 ZENT CERUMO SC430に対し、2位の36号車 PETRONAS TOM'S SC430が一気にその差を縮めていく。48周目に15秒あった差が、50周目に10秒、55周目に5.8秒、60周目に3.6秒となり、残り3周となる63周目の第2ヘアピンでトップ交代。予選10位からスタートした36号車 PETRONAS TOM'S SC430が1位まで登り詰めた。

38号車に肉薄する36号車。17号車はやや遅れた

36号車がトップ浮上

38号車と上位陣のタイム差をグラフ化した。終盤、早い時期から独走態勢が崩れ始めたことが分かる

　36号車 PETRONAS TOM'S SC430はそのままトップでチェッカーを受け、17号車 KEIHIN HSV-010の追撃を抑えた38号車 ZENT CERUMO SC430が2位、予選9位からスタートした17号車 KEIHIN HSV-010が3位となった。4位は1号車 REITO MOLA GT-R、5位は18号車 ウイダー モデューロ HSV-010、23号車 MOTUL AUTECH GT-Rは8位でゴールした。

優勝した36号車 PETRONAS TOM'S SC430（中嶋一貴/ジェームス・ロシター）

2位の38号車 ZENT CERUMO SC430（立川祐路/平手晃平）

3位の17号車 KEIHIN HSV-010（金石年弘/塚越広大）

　この結果、ドライバーズランキングはこのレースで2位に入った38号車 ZENT CERUMO SC430が首位。優勝した36号車 PETRONAS TOM'S SC430は一気に2位まで浮上。数字上はランキング8位の39号車 DENSO KOBELCO SC430までが最終戦にチャンピオンの可能性を残している。とくに上位4チームのポイント差はわずか6ポイント。最終戦での激しいチャンピオン争いに注目したい。

●GT500クラスの順位

●GT500クラス ドライバーズランキング

GT300クラス

　GT300クラスは9月22日に富士スピードウェイで「アジアン・ル・マン」が開催され、SGTクラスにGT300クラスの10チームが参戦。第6戦までのドライバーズランキングトップ3が表彰台を獲得し、それぞれポイントを加算している。これを加えたランキングは以下のとおり。

●GT300クラス ドライバーズランキング

　16号車 MUGEN CR-Z GT（武藤英紀/中山友貴）が獲得ポイントで大きくリードし、この第7戦でチャンピオンを決める可能性がある。しかし、16号車 MUGEN CR-Z GT、55号車 ARTA CR-Z GT、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTの3台は、第7戦から追加の性能調整が行われてパワーダウンしたマシンでの参戦となる。

　GT300クラスの予選は、トップを3号車 S Road NDDP GT-R（星野一樹/佐々木大樹）が獲得。2位に48号車 DIJON Racing IS GT-R（高森博士/千代勝正）、3位に50号車 Exe Aston Martin（加納政樹/安岡秀徒）という、ポイント争いで下位のチームが並んだ。

　ポイント3位の61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT（山野哲也/佐々木孝太）が予選でタイヤを傷めてピットスタートを選択。そのほかのポイント上位勢も、16号車 MUGEN CR-Z GT（武藤英紀/中山友貴）は16番手スタート、11号車 GAINER DIXCEL SLS（平中克幸/ビヨン・ビルドハイム）が6番手、52号車 OKINAWA-IMP SLS（竹内浩典/土屋武士）が10番手、4号車 GSR 初音ミク BMW（谷口信輝/片岡龍也）が8番手となり、強豪チームが後方から追い上げるレース展開が予想された。

　スタートでは3号車 S Road NDDP GT-R（佐々木大樹）がトップをキープ。序盤から後続を引き離しにかかった。オープニングラップで50号車 Exe Aston Martin（安岡秀徒）が2位に浮上、2周目には11号車 GAINER DIXCEL SLS（ビヨン・ビルドハイム）も3位に浮上した。

3号車がトップをキープ、48号車、50号車、30号車が予選ポジションをキープする

3号車が2位に浮上した50号車を引き離す

50号車の後方には3位に浮上した11号車の姿が

序盤は3号車、50号車、11号車が一定の差で走行

　前戦で優勝した4号車 GSR 初音ミク BMW（片岡龍也）は、スタート直後に6位までポジションアップするが、2周目で7位に後退。しかし、すぐに上位陣を切り崩して3周目に5位、6周目に4位、8周目に3位と浮上していく。

4号車は6位でスタートを切った

10号車に抜かれて7位に後退

30号車、48号車を抜き5位に浮上する4号車。さらに11号車を抜いて3位に浮上した

　その後方では、ポイントランキング4位で予選10位スタートの52号車 OKINAWA-IMP SLS（竹内浩典）が、2周目に9位、4周目に8位、5周目に7位、10周目に6位とジワジワ順位を上げていく。一方、後方グリッドからスタートしたJAF-GT勢は、序盤は後方からなかなかポジションを上げられずに苦しい展開を強いられた。

7位に浮上した52号車

19位に16号車、20位に61号車、21位に55号車

　トップ独走を狙った3号車 S Road NDDP GT-Rだったが、すぐに失速。50号車 Exe Aston Martinが背後に迫り、7周目の第1ヘアピンでオーバーテイクしてトップの座を奪取。今シーズンの50号車 Exe Aston Martinは7位が入賞1回だけ。優勝、あるいは表彰台獲得という躍進に向けてトップを快走する。

3号車の背後に迫る50号車。この後、順位を逆転して50号車がトップに立つ

　2位に後退した3号車 S Road NDDP GT-Rに4号車 GSR 初音ミク BMWが追い付くが、抜くことができずに長いバトルが続いた。25周目に4号車 GSR 初音ミク BMWがピットイン。後方からペースアップしてポジションを上げる作戦を選択する。2位をキープして26周目にピットインした3号車 S Road NDDP GT-Rだったが、コースに戻ると4号車 GSR 初音ミク BMWより後方にポジションダウン。直後にマシントラブルが発生してリタイヤとなった。

2位に後退した3号車に4号車が迫るが、抜くことはできず長いバトルに

　トップ独走の50号車 Exe Aston Martinは、38周目まで引っ張りピットイン。そのままトップをキープしてコースに復帰する。しかし、微妙に濡れた路面コンディションをハイペースで駆け抜ける4号車 GSR 初音ミク BMW（谷口信輝）がすぐ背後まで肉薄。45周目にトップの座を奪い取り、そのままゴールに向けて快走する。それでも50号車 Exe Aston Martinは、結果的に2位でゴールして初表彰台を獲得した。3位は粘り強いレース運びを見せた52号車 OKINAWA-IMP SLSが入っている。

50号車の背後に4号車が迫る

トップに立った4号車は50号車を引き離し、トップでチェッカーを受けた

3位を走る33号車に迫る52号車。49周目に逆転して3位となった

　ポイント争いの上位陣は、4位に11号車 GAINER DIXCEL SLS、7位に61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT、9位に16号車 MUGEN CR-Z GTとなった。

優勝した4号車 GSR 初音ミク BMW（谷口信輝/片岡龍也）

2位の50号車 Exe Aston Martin（加納政樹/安岡秀徒）

3位の52号車 OKINAWA-IMP SLS（竹内浩典/土屋武士）

　この結果、16号車 MUGEN CR-Z GT（武藤英紀/中山友貴）はトップを守るものの、4号車 GSR 初音ミク BMW（谷口信輝/片岡龍也）が8ポイント差の2位に浮上。2連勝と勢いに乗る4号車 GSR 初音ミク BMWと性能調整でやや勢いを失った16号車 MUGEN CR-Z GTの最終決戦は見逃せない争いになりそうだ。チャンピオン争いの権利を残したのは、ランキング5位の61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT（山野哲也/佐々木孝太）まで。ウェイトハンデなしで争う最終戦は予断を許さないレースになりそうだ。

●GT300クラスの順位

●GT300クラス ドライバーズランキング

　GT500クラス、GT300クラスともに複数台による熾烈なチャンピオン争いとなるSUPER GT最終戦は、11月2日、3日にツインリンクもてぎで開催される。