ニュース

エヴァンゲリオンレーシングリポート SUPER GT第4戦「SUGO GT 300km RACE」

2013年7月28日決勝開催

 7月28日、2013 AUTOBACS SUPER GT第4戦「SUGO GT 300km RACE」の決勝レースがスポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町)で行なわれた。レース結果などはすでに別記事で紹介しているが、本記事ではSUPER GTのGT300クラスに参戦し、Car Watchの読者に人気の高いエヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細をお届けしたい。

エヴァRT初号機アップルMP4-12C

 全8戦で争われるSUPER GTシリーズも折返しとなる第4戦を迎えた。新車マクラーレンMP4-12Cの投入で活躍が期待されたエヴァンゲリオンレーシングだったが、シーズン序盤は電気系のトラブルでまともに走ることができなかった。セパンでようやくトラブルなく走れる状態になったが、まだまだセッティングが煮詰められない状況で苦しいシーズンが続いている。第4戦の舞台はスポーツランドSUGO。セパン、SUGO、鈴鹿を「灼熱の3連戦」と呼ぶことが多いが、今年は比較的涼しいSUGOでの幕開けとなった。

7月27日(土)練習走行

 早朝、サーキットは濃霧に覆われ走行できるのか不安視されたが、なんとか視界は確保され、ウェット路面ながら8時45分に予定どおりセッションは開始された。

 加藤選手がウェットタイヤを装着してコースイン。午後の予選、翌日の決勝も雨の可能性が高く、数種類のウェットタイヤをテストすることに重点を置いた走行となった。空は厚い雲に覆われるものの、雨は降らずに路面は徐々に乾き始め、レコードラインはほぼドライ状態。

 ここでスリックタイヤを装着してコースインするが、急に霧が濃くなり視界不良で赤旗が振られ、セッションは15分ほど中断された。再開後は加藤選手がスリックタイヤでのマシンバランスを確認し、タイムアタックは行わずに高橋選手に交代。残り少なくなった時間を高橋選手が走行することとなった。

練習走行を行う高橋選手

 高橋選手は徐々にタイムを上げ、1分27秒285のベストラップを刻んだところで再び濃霧によりセッションは中断。残り5分で再開するも、タイヤが温まる前にセッション終了。天候の影響を受けて消化不良な練習走行となった。

7月27日(土)予選

 午後の予選も厚い雲に覆われるが路面はドライ。しかし、いつ雨が降り出すか分からない天候。どのチームも早めにタイムを出しておきたいということで、セッション開始直後からコースに躍り出た。予選Q1の担当は加藤選手。2周でタイヤを温めてアタックに入るが、タイムは1分23秒881にとどまりクラス7位。もっとタイムを上げないとQ2進出の13位以内は厳しい状況だ。

 そのまま連続アタックに入るが、ハイポイントコーナーの立ち上がりでスピン。すぐにコースに戻るものの、タイヤのグリップ不足に悩まされて思うようにタイムを上げることができない。

予選Q1を走る加藤選手

 6周目に1分23秒586、8周目に1分23秒463とジリジリとベストタイムを更新するものの順位は23位。最終的に1分23秒239を出したが順位は22位にとどまり、予選Q1でノックアウトとなりQ2進出はならなかった。

 これまでにもマシントラブルやコースコンデションの激変により、予選で下位グリッドに沈んだことはあったが、特に問題を抱えていない状況下でこれほど後方の順位に沈んだのは初めてのこと。シーズン序盤のマシントラブルからは抜け出したが、タイヤのグリップ不足を解消できないまま決勝レースを後方からスタートすることとなった。

 決勝のスタートタイヤはQ1で使用したタイヤとなるため、酷使したタイヤでスタートすることなる。これを踏まえて足まわりの練り直しが必要だが、これと言った打開策を見つけるには“引き出し”の中身がまだまだ足りない状況だ。

ピットウォーク・キッズウォーク・グリッドウォーク

 ここ数年、SUPER GTのSUGOと鈴鹿で行われる2輪の8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)は同日開催となっている。エヴァンゲリオンレーシングは鈴鹿8耐にも参戦してるのでレースクイーンも分散しての参加となる。

 今回SUGOに登場したのは、シンジ役の福滝りりさんとカヲル役の北山奈都美さん。新コスチュームの国内サーキット初披露となっている。キッズウォークはあいにくの雨となったが、ピットウォークは土曜が曇り、日曜が晴れで、エヴァンゲリオンレーシングのピットにはいつもどおりファンが殺到した。

土曜のピットウォークは大混雑
日曜のピットウォークも大混雑
シンジ役の福滝りりさんとカヲル役の北山奈都美さん

7月28日(日)決勝

 決勝日朝のフリー走行は、前日の不振を受けて足まわりのセッティングを大幅に変更。雨は止んでいたが、前日から未明まで降り続いた雨で路面はウェット。高橋選手は浅溝のレインタイヤでコースインしたが、すぐにドライタイヤで走れると判断してピットに戻り、タイヤ交換を行って再びコースに戻った。

 ところがタイヤが温まる前にヘアピンでスピン。他の車両と接触しそうになるが間一髪で切り抜けた。マシンは無傷だがタイヤが空転してコースに戻ることができなくなり赤旗が振られる。マーシャルの援助でコースに戻り、自走してピットまでたどり着いた。

 セッション再開後はそのまま高橋選手がステアリングを握り、タイヤを温めてタイムアップを狙ったが、他のマシンがスピンして再びセッションは赤旗中断。今回はサーキットサファリは行われずセッション時間は短め。このセッションでは変更した足まわりの確認が重要で、残り時間も少なくなったこともあり、この赤旗中のピットインで加藤選手に交代。決勝想定の積載燃料、タイヤ、さらにGT500クラスと混走する状況で昨日の予選タイムを上まわる1分23秒241というクラス7番手タイムを記録。セッティングの大幅な変更はまずまず成功の感触で、22番グリッドからの追い上げが期待できそうだ。

 前日の天気予報では午後は雨の確率が高かったが、実際には天候が急速に回復。決勝1時間前のウォームアップ走行では強い日差しが降りそそいだ。ここでトラブル発生。ピットからスターティンググリッドに向かう高橋選手から「クラッチがおかしい」と無線が入り、グリッドウォーク中にコース上で緊急作業を開始。色々な処置を試みてなんとか復旧するが、再発の可能性を残すやや不安な状況でスタートを迎えることとなった。

スタート直前の高橋選手と加藤選手

 SUPER GTの場合、フォーメーションラップ終了後にグリッド上に停車せず、そのまま加速してスタートするローリングスタート方式なのでクラッチの負担は軽い。ひと度フォーメーションラップに入ればピットインまで停車する必要はない。スタッフが見守るなか、高橋選手は無事スタートを切ることに成功。81周の決勝レースが始まった。

 2台のマシンがピットスタートしたため序盤は20位にアップ。走り込み不足の高橋選手は1分27秒前後とタイムが上がらず、上位陣より4秒ほど遅いラップタイム。コースが短いSUGOなのでGT500クラスのマシンに追い抜かれる機会も多く、我慢の走りを強いられた。

スタートは21号車に次ぐ20位
背後から2位の61号車が迫り、すでに周回遅れの状況

 スタート前は快晴だったが徐々に雲が厚くなり、一転していつ雨が降り出すかわからない微妙な天候となった。タイヤ交換後に雨が降り出すと2度ピットインすることになるので、空模様と“相談”しながらピットインの周回を先延ばしにしたが、結局、雨は降らずに35周目でピットイン。

 クラッチトラブルの不安があったので、ギヤをニュートラルにすると再スタート時にギヤが入らなくなる可能性があるため、ピットストップではギヤを入れたまま停車してエンストさせる作戦をとった。

 給油してタイヤをスリックに交換。交代した加藤選手はギヤを入れたままスターターを使い、ピットからユルユルとスタート。1車身ほど走ったところでエンジンが始動し、無事にコースに復帰することができた。ところが、高橋選手のピットイン時にホワイトラインをカットしたと裁定されてドライブスルーペナルティが課せられてしまう。42周目にピットインし、幸い順位は22位から変わらなかったが大きなタイムロスとなってしまった。

 加藤選手は1分23秒台と上位陣と互角のタイムで走行を開始したが、しばらくすると雨が降り出してレインタイヤに交換するチームも出始めた。コースの場所によって雨量、路面状態、タイヤのグリップ状況が異なり、ピットでは判断がつかないのでタイヤ交換はドライバーの判断に委ねられる。空模様は雨が止むことはないがドシャ降りにもならないという微妙な状態。加藤選手はこれをチャンスととらえ、そのままスリックタイヤでステイを選択。結果を見るとレインタイヤに交換したチームは最終的な順位を落としており、加藤選手の選択は正解だった。

雨が降って路面が濡れ始めた

 60周目に20位、62周目に19位と徐々に順位を上げ始めたところでアクシデントに巻き込まれた。加藤選手は64周目のハイポイントコーナーでスロー走行する30号車 IWASAKI OGT Racing GT-Rをイン側から抜いて18位にポジションアップ。すると背後に迫っていたGT500クラスでトップ争いをする2台が、レインボーコーナーに続く短いストレートで加藤選手のマシンを挟む形で左右に分かれた。

 バックストレートの入り口となるレインボーコーナーは、イン側にGT500クラス2位の39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一)、真ん中にGT300クラスの2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cを挟み、アウト側にGT500クラス1位の38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)の3台が並ぶ“スリーワイド”状態。

 ここで39号車 DENSO KOBELCO SC430の左フロントが2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cの右ドアをヒット。押された2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cが挙動を乱して38号車 ZENT CERUMO SC430の右リアにぶつかり、38号車 ZENT CERUMO SC430はスピンしてコースアウト。そのままリタイヤとなった。

 2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cは右ドアを破損するも走行には問題なし。GT500クラス1位のマシンを押し出す形となったが、もらい事故のため当然ペナルティなし。ちなみに39号車 DENSO KOBELCO SC430は、直接38号車 ZENT CERUMO SC430を押し出していればペナルティの対象になるが、実際に接触した2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cが走行を続けているのでこちらもペナルティがない。仮に玉突きによって38号車 ZENT CERUMO SC430の押し出しを狙ったとすれば、巧妙な作戦と言えよう。

 その後もペースダウンやコースアウトをするマシンが増えるなか、加藤選手は難しい路面を走り切り16位までポジションアップしてゴール。結果だけ見ると物足りないが、最後に少し好調な走りを披露して前半戦最後となるSUGOのレースを終えることとなった。

16位でチェッカーを受けた

 ちなみに、1つ前の15位は4号車 GSR 初音ミク BMW、1つ後ろの17位は33号車 HANKOOK PORSCHEといずれも強豪チーム。SUPER GTの難しさを感じさせるレースとなった。

 前半戦を終えて獲得ポイントはゼロ。記憶にないほど低迷したシーズンとなっている。ようやく「電気系の突然死」というトラブルから抜け出したが、クラッチトラブル、ターボブーストの低下といったメカニカルトラブルが発生しており、タイヤのグリップ不足などでも課題は多い。

 次戦は8月17日、18日に鈴鹿で行われる「Pokka Sapporo1000km」。シリーズ最長の1000km・6時間のロングレースだ。2号車 エヴァRT初号機アップルMP4-12Cは、カルロ・ヴァン・ダム選手を起用した3人体制で臨む。お盆休みの最後は鈴鹿サーキットに集合しよう。

(奥川浩彦)