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最後の最後に優勝したエヴァンゲリオンレーシング

シーズンは不調のまま終わるも、JAF GPで表彰台の頂点に立つ

2013年11月3日AUTOBACS SUPER GT第8戦、11月23日、24日富士スプリントカップ 2013決勝開催

 11月2日、3日にSUPER GTのシリーズ最終戦となる2013 AUTOBACS SUPER GT第8戦「MOTEGI GT 250km RACE」(ツインリンクもてぎ:栃木県芳賀郡茂木町)、11月23日、24日に「JAFグランプリ SUPER GT&スーパーフォーミュラ“富士スプリントカップ 2013”」(富士スピードウェイ:静岡県駿東郡小山町)が開催された。レース結果などは別記事のSUPER GTシリーズ最終戦と、富士スプリントカップ 2013で紹介しているが、本記事ではSUPER GTのGT300クラスに参戦し、Car Watch読者に人気の高いエヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細をお届けしたい。

MOTEGI GT 250km RACE

 エヴァンゲリオンレーシングが最終戦の「MOTEGI GT 250km RACE」までに獲得したポイントは、シリーズ戦は0ポイントでアジアン・ル・マンで獲得した3ポイントのみ。ニューマシンの熟成に苦労した1年となった。結果は伴っていないが、トラブルが続出した序盤に比べれば終盤戦では確実に進化を見せている。シリーズ最終戦と特別戦であるJAFグランプリで一矢を報いたいところだ。

 SUPER GTの最終戦の舞台はツインリンクもてぎ。ウェイトハンデがなくなるレースだが、わずか3ポイントのエヴァンゲリオンレーシングにその恩恵はほとんどない。逆に強豪チームはウェイトを下ろすので有利となる。レース距離はシリーズ最短の250km。こちらは燃費がわるいエヴァンゲリオンレーシングにとってやや有利な要素かもしれない。

11月2日(土)練習走行

 いつもどおり加藤選手がコースイン。すぐに1分51秒台、50秒台とラップタイムを縮めるが、クラストップは1分49秒台。車高を調整するなどセッティングを煮詰め、タイヤも変更して1分50秒436を出してこの時点で9番手タイムを記録。18周を周回して高橋選手に交代する。

コースインする加藤選手

 高橋選手はテストに参加しなかったこともあり、今シーズン初めてのツインリンクもてぎとなる。1分58秒から57秒、56秒と徐々にラップタイムを縮めるが、1分55秒台で頭打ちになった。ピットに戻って加藤選手との走行データを比較し、問題点を探り出して再びコースイン。1分54秒台を出すものの、加藤選手とのタイム差は大きい。

 高橋選手の走り込み不足は明らかなので高橋選手の走行を優先するが、タイムは縮まらず加藤選手のラップタイムは最終的に10番手となった。

11月2日(土)予選

 予選Q1では13位以内に入れば予選Q2に進むことができる。予選Q1は加藤選手が出走。1周、2周とタイヤを温め、いざアタックというタイミングでコースアウトしたマシンが出て赤旗中断。再開後に1分49秒893を出してこの時点で2番手タイム。しかし、他車も続々とタイムを更新してあっという間に11番手まで後退する。

 加藤選手は再アタックを試みるが1分49秒968とベスト更新はならず。もう1周アタックに入るが、セクター1をベストタイムで通過したところでタイヤグリップのピークを過ぎたと判断し、タイヤ温存を考えてピットに戻った。結果は13位でギリギリながらQ1を突破した。Q1トップのタイムは1分48秒台と飛び抜けたが、2位から13位の加藤選手までは0.8秒差と激戦のQ1となった。

 GT500クラスのQ1が終わり、GT300クラスのQ2開始。高橋選手は3周目にアタックを行って1分52秒台とまずまずの滑り出し。翌周には1分52秒238と練習走行から2秒もラップタイムを縮めて12位で予選Q2を終えた。

Q2を走る高橋選手

ピットウォーク、グリッドウォーク

 シリーズ最終戦は佐々木華奈さん、北山奈都美さんの2人のレースクイーンが参加。チームの成績とは関係なく、レースクイーンはいつもどおり大人気。多くのファンが集まっていた。

ピットウォーク、グリッドウォークは最終戦も多くのファンが集まった

11月3日(日)決勝

 スタートドライバーは加藤選手。決勝は250kmと通常より短いため、エヴァンゲリオンレーシングはタイヤ無交換作戦を取ることになった。13時30分にフォーメーションラップがスタートして250kmの決勝レースが始まった。

 スタート前のウォームアップ走行後に車高を調整したのが裏目に出て、加藤選手はアンダーステアと格闘する展開となった。オープニングラップで12位から13位になり、3周目に14位、4周目には16位まで後退する。

1周目で13位に後退
2周目に31号車に抜かれて14位
52号車に抜かれ16位に後退

 15周を過ぎたころから各車のピットインが始まり、これで見かけ上の順位が上がっていく。周回を重ねて燃料が減るとアンダーステアも解消。29周目には1分52秒691のベストタイムを出し、見かけ上の順位に加えて実質上の順位も上がり、33周を終えて3位でピットインを行った。

 レース距離が短いので給油時間は17秒。その間にドライバー交代をしてコースに戻れば8位までポジションアップできる計算だったが、再スタートに手間取って3~4秒をロス。高橋選手は10位でコースに復帰した。

 コースに復帰したアウトラップで12位に後退。その後のラップタイムも2分00秒台とペースは上がらず、35周目に14位、36周目には17位と一時のトップテン圏内から目を覆いたくなるほどポジションダウン。そこからラップタイムは1分1分56秒台まで回復するものの、17位のまま50周でチェッカーフラッグを受けた。最終戦もノーポイントに終わり、シリーズ戦ではポイントが獲得できなかった。

終盤は22号車と18位争い。最後は17位でフィニッシュ

エヴァンゲリオンレーシング2013年シーズン年間成績

レースサーキット予選決勝
第1戦岡山12位リタイヤ
第2戦富士12位18位
第3戦セパン12位15位
第4戦SUGO22位16位
第5戦鈴鹿20位18位
第6戦富士11位14位
アジアン・ル・マン富士8位5位
第7戦オートポリス15位11位
第8戦もてぎ12位17位

JAFグランプリ SUPER GT&スーパーフォーミュラ“富士スプリントカップ 2013”

 エヴァンゲリオンレーシングはSUPER GTのシリーズ戦でよい結果が得られぬままシーズンを終了し、2013年のラストレースとなる「JAFグランプリ SUPER GT&スーパーフォーミュラ“富士スプリントカップ 2013”」を迎えた。

快晴の空の下、富士山をバックにレースは開催された

 富士スプリントカップは2人のドライバーが22周、約100kmを2日に分けて別々に走るスプリントレース。ドライバー交代に加えてタイヤ交換&給油の必要もなく、スタートからゴールまで目の前のライバルと戦うガチンコバトルだ。また、SUPER GTのシリーズ戦はローリングスタート方式を採用しているが、富士スプリントカップではF1などと同じく静止状態からスタートするスタンディングスタート方式。上手くスタートを決めればジャンプアップの可能性も高い。

11月23日(土)予選

 2012年度までは3日間の日程で開催されていたが、今年は2日間の開催となって練習走行はなく、土曜の朝にいきなり予選から始まるスケジュールとなっている。まずは高橋選手が出走するGT300クラス第1レースの予選。11月下旬の朝8時とあって、路面温度は10℃。ソフトタイヤを装着し、予選開始と同時に先頭でコースインした。

予選を走る高橋選手

 2周目に1分40秒052のタイムを出して滑り出しは好調。連続でアタックを試みて1分39秒652の7番手タイムを記録。予選時間は20分。途中でニュータイヤを投入するチームもあるなか、高橋選手はタイヤ交換をせず走り込みに専念。9周目には1分39秒347までラップタイムを縮めるが、最終結果は15番手となった。

 続くGT300クラス第2レースの予選は加藤選手が出走。計測3周目に1分38秒048のタイムを出してこの時点で2番手。6周でピットに戻り、ニュータイヤを投入。20分の予選で残り時間は10分。タイヤを温めてからタイムアタックできるのは1~2ラップだ。ライバルがタイムを上げるなか、10周目に1分37秒900を記録して暫定5番手。そのままアタックを続け、第1セクター、第2セクターとベストタイムを更新したが、第3セクターでほかのマシンに引っ掛かり1分38秒164とタイム更新はならず、最終結果は7番手となった。

予選を走る加藤選手

ピットウォーク、オールグリッドウォーク

 富士スプリントカップでは土曜にピットウォーク、日曜は参加全車両がグリッドに並ぶオールグリッドウォークが実施された。土曜のピットウォークには福滝りりさんと北山奈都美さん、日曜のオールグリッドウォークには佐々木華奈さん、和泉テルミさん、森園れんさんが参加した。

土曜のピットウォーク
日曜のオールグリッドウォーク
チームスタッフの記念撮影も行われた

11月23日(土)第1レース決勝

 GT300クラス第1レースの決勝は土曜の午後。年に1度のスタンディングスタートだが、高橋選手はトラクションコントロールの助けもあり好スタート。1コーナーの混乱をアウト側からかわし、オープニングラップで1つポジションを上げて14位となった。2周目に2つポジションを落とし16位に後退したが、ラップタイムは1分40秒~41秒台とわるくない。

第1レースのスタート。イン側で接触が発生し、高橋選手はアウト側に逃げる
コースオフしながら立ち上がる高橋選手

 中段グループのなかでバトルが続き、7周目に14位、8周目に13位、9周目に14位、12周目に16位とめまぐるしく順位を入れ替えるが、オートポリス、もてぎのようにズルズルと後退することはなく、再び15位にポジションアップ。22周のゴールは14位で通過し、ここ2戦の不調からすれば、中段グループで充分なレース展開を見せ、来シーズンに向けて期待が持てる高橋選手のシーズンラストランとなった。

中段グループで最初から最後までバトルを続けた

11月24日(日)第2レース決勝

 GT300クラス第2レースの決勝は日曜の午後に開催。2013年、最後の最後となる決勝レースは加藤選手が出走した。予選で圧倒的な速さを見せてポールポジションを獲得した3号車 S Road NDDP GT-R(星野一樹)だったが、スタートで明らかなフライング。他車を置き去りにしてトップに立ったものの、これで事実上のトップは2番手スタートの55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一)になった。7番手スタートの加藤選手はロケットスタートを決め、一気に3位(事実上の2位)にジャンプアップした。

3号車がフライングで飛び出し、加藤選手は1コーナーを3位で立ち上がる

 フライングスタートした3号車 S Road NDDP GT-Rは4周目にドライブスルーペナルティで戦列を去り、55号車 ARTA CR-Z GTがトップに立ち加藤選手も自動的に2位に浮上。35号車 NISMO ATHLETE GT-R GT3(ルーカス・オルドネス)が3位につけた。

55号車、35号車とトップ集団を築く加藤選手

 今回はウイングを寝かせたストレート速度重視のセッティング。加藤選手はストレートの速さを生かして7周目にトップに浮上。追い抜かれた55号車 ARTA CR-Z GTを、次の周に35号車 NISMO ATHLETE GT-R GT3が抜いて2位に浮上した。

55号車を抜きトップに立った加藤選手

 前日のGT300クラス第1レースでトップを快走しながらタイヤバーストで後退した35号車 NISMO ATHLETE GT-R GT3が加藤選手に迫るが、この日も14周目にタイヤトラブルに見舞われてピットイン。再び2位になった55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一)も、17周目に11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸)に抜かれ、レース終盤は11号車 GAINER DIXCEL SLSがトップの加藤選手の背後に迫ってテールトゥノーズの攻防となった。

終盤は11号車に迫られるレース展開

 ベテラン同士の目が離せないバトルは、ストレートで加藤選手が逃げ、コーナーで11号車 GAINER DIXCEL SLSが差を詰める展開。コンマ数秒差の争いが最終ラップまで続いたが、0.5秒差で逃げ切ってついに今季初優勝。これまでの低迷が嘘のような快走を披露し、シーズン最後のレースで表彰台の頂点に立った。

1stの位置にマシンを止める
優勝してガッツポーズする加藤選手
インタビューでは涙を見せた
表彰台の頂点に立った

 この結果で来シーズンにバラ色の未来が約束されたわけではないが、希望を持って新しいシーズンを迎えられそうな1年の締めくくりとなった。

(奥川浩彦)