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トヨタ、熱効率38%などを達成した新型アトキンソンサイクル低燃費エンジン説明会
ホンダとは排気系の作りが異なり、マツダとは直噴でないところが異なる
(2014/4/11 00:00)
トヨタ自動車は4月10日、世界トップレベルの高熱効率を実現するという低燃費エンジン群を新たに開発・改良したと発表。同日東京本社において、NR型1.3リッターガソリンエンジン、KR型1.0リッターガソリンエンジンからなる新型エンジン2機種の説明会を開催した。これらのエンジンは、近日マイナーチェンジする車種より搭載を始め、2015年までに全世界で合計14機種のエンジンを順次導入する。
説明を行ったのは、トヨタ自動車 ユニット統括部 パワートレーン企画室 主査 足立昌司氏。足立氏は2013年4月に稼働を開始したパワートレーン共同開発棟を紹介し、技術と生産技術の連携強化などを図ることで開発効率を最大化し、新たな技術へのチャレンジを行っていくと語った。2年で14機種(うち2機種は今回発表ずみ)を投入するということは、単純計算で2カ月ごとに1機種の新型エンジンを投入するペースだ。この開発スピードの実現にも、パワートレーン共同開発棟が貢献しているという。
足立氏はトヨタのエンジンの考え方を紹介。燃費のよいクルマを実現するためには、車体の軽量化などもあるが、エンジンに限れば熱効率の最大化がポイントになるという。そのため新型エンジンでは、従来型比で10%以上の燃費向上を目指し、最大熱効率で世界トップレベルのものを目指した。
そのため、燃焼改良と損失低減技術を進化。高タンブル(縦渦)による急速燃焼の実現、4-2-1排気管による効率のよい排気や燃焼室温度コントロールによる高圧縮比化、アトキンソンサイクルや大量クールドEGRによるポンピングロス低減を図った。また、エネルギーロスにつながるフリクション(摩擦)については、ピストンスカート表面改質、樹脂コートベアリングなどによって、さらなる低減を図っている。
これにより、NR型1.3リッターガソリンエンジンでは2800~3000rpm時に最大熱効率38%、KR型1.0リッターガソリンエンジンでは2400rpm時に最大熱効率37%を実現した。いずれも前モデルでは、最大熱効率は35%とのことだ。
熱効率を高めるために、これらのエンジンではアトキンソンサイクルを採用(正確には、アトキンソンサイクル運転とオットーサイクル運転の領域をVVTによって制御している)。同様のアトキンソンサイクルを採用するエンジンを持つメーカーとして、本田技研工業やマツダがあるが、それらとの違いを、「ホンダさんに関しては排気系の作り、マツダさんに関しては直噴でないのが違い」と表現した。
ただ、合計14機種のエンジンには、ターボエンジンやハイブリッド用エンジンも含まれているといい、今後は異なった方式のエンジンも登場するのかもしれない。
今回の2機種のエンジンは、ポート噴射を採用しているほか、急速燃焼の映像を見る限りツインプラグなどの手段は採られていない。燃焼室の温度コントロールという部分に関しても、強いタンブル流がぶつかる燃焼室排気側上部の温度をジャケットスペーサーを使って下げることでノッキングを改善。その熱を燃焼室下部に持っていくことでフリクションを低減しているという。つまり、冷却水のフローを物理的な壁でコントロールしているのだが、可変機構の存在は示唆しておらず、型の変更で実現したことになる。
いずれも高コストとなりがちな手段は採られておらず、さまざまな工夫を凝らすことで、可能な限り低いコスト増加で、最大の熱効率を引き出しているのだと思われる。1.3リッターガソリン、1.0リッターガソリンエンジンとも、コスト競争の厳しいクラスに投入されるエンジンであるのは間違いなく、今後の量産効果も見据えたものと言える。
1.0リッターガソリンエンジンは、アイドリングストップ機構の搭載で従来型比30%以上(JC08モード)の燃費向上、1.5リッターは同様に15%以上の燃費向上を実現するとしており、搭載車の登場を楽しみに待ちたい。