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シャープ、新技術説明会で「タッチパネル対応」「アーチ型UI」のフリーフォームディスプレイを公開
2017年には自動車に搭載して市場投入を予定。「高感度インセルタッチパネル」なども展示
(2015/3/11 18:28)
- 2015年3月10日発表
シャープは3月10日、東京都港区にある東京支社で液晶タッチパネル新技術に関する説明会を実施。車載機器としての製品化を明示して自動車業界からも注目を集めている液晶ディスプレイ「フリーフォームディスプレイ(FFD)」の新しい技術展開のほか、独自技術である「タッチパネル高感度化技術」を使った液晶ディスプレイの新しい商品展開などについて紹介した。
説明会ではまず、シャープ 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当の方志教和氏が登壇。液晶事業における現状認識や同社の組織体制強化、今後の事業展開などについて解説した。すでに2月に行われた「液晶事業説明会」(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150213_688256.html)でも明らかにしているように、今後はスマートフォンや液晶テレビといった一般向け製品である「BtoBtoC」から、車載機器や電子黒板などをメーカー向けに納入する「BtoBtoB(非コンシューマ向け)」の比重を高める方向にシフトしていくと説明し、BtoBtoBの事業構成比を2014年度(見込み)の約15%から、2021年度(計画)では約40%まで引き上げる方針を示した。
方志氏は、液晶ディスプレイの高精細化はすでに人間の視覚神経に迫る、または追い越す領域まで進化が進んでおり、今後は現在の主流である高精細化や狭額縁化といった技術は競争軸としては薄れていき、液晶市場全体では中型、大型へのサイズアップやセット商品の創出といった新しい付加価値で利益を生み出す構造になっていくという市場予測を語り、自社ですでに基幹技術をしっかり貯えているほか、基幹技術として取り組んでいるIGZO技術が中型液晶の高精細化などに貢献できることが大きな強みになるとアピール。「BtoBtoBの安定した事業ポートフォリオを造っていくために、非常によいポジションに我が社はある」とコメントしている。
新戦略となる新しいディスプレイUI技術については、シャープ ディスプレイ開発本部 本部長 伴厚志氏が解説を担当。伴氏は「独自のUI技術を使って新たな価値、新たな体験を提供したい」と語り、そのポイントとして「あらゆるディスプレイでのタッチパネル高感度化」「ディスプレイの形状とタッチ機能の融合」「ディスプレイにタッチパネル以外の新たな機能の追加」の3点を挙げ、それぞれの技術について説明した。
ディスプレイのタッチパネル高感度化は同社独自のコントローラーの採用により、タッチパネルのセンシングを一般的な逐次駆動から並列駆動にして検知速度を高め、ノイズを抑えて信号を検知する高SN比との組み合わせで実現する。これにより、1mmのペン先でのタッチにも反応し、1度に多数の検出も可能となったことで接触している面積も把握できるようになる。さらにタッチパネルと距離ができる厚みのある板越しにも検出可能となることで、タッチパネルの用途が大きく拡張されるようになる。
これに加え、タッチパネルの高感度化を実現したことで、従来型の「貼合せ方式」とは異なる「インセル方式」のタッチパネルも生産可能となる。貼合せ方式ではガラス板によって挟み込まれた液晶の上にタッチパネルを重ね、その上にカバーガラスを設置しているが、インセル方式では液晶にセンサー機能を搭載。これまでよりディスプレイの薄型化が可能で、パーツ点数が少なくなることによってコストも削減されるという。
このように高感度化でタッチパネルが進化することで、筆圧の認識による表現内容の拡大、多点検出と大型化による電子黒板などでの利用、保護性能の高い厚板ガラス越しの屋外サイネージや手袋などを着用したままのスマホ活用などディスプレイが使われるシーンを増やすことが可能になると語られた。
車載FFDの製品化は2017年を想定
2014年6月に発表されて市場投入が待たれているFFDを核としたディスプレイの形状とタッチ機能の融合では、自由な形状にできるデザインの革新に加え、形状にマッチする独自のUI技術を設定する「FFD-UI」を提案。従来のディスプレイは表示領域の外周に「ゲートドライバ」と呼ばれる駆動用回路を配置する必要から形状が四角となっているが、FFDは表示領域内である画素内にゲートドライバを分散配置して構成している。このゲートドライバの分散配置をタッチパネルに応用したのが新しい「フリーフォームタッチパネル」で、さまざまな形状のタッチパネルディスプレイが可能となった。
説明会の会場では、以前の発表会で円形メーターとして展示したFFDと同様の製品にフリーフォームタッチパネルを付加し、円盤形のスマートフォンとして提案した。丸い画面上の外周にアイコンを並べて配置し、ダイヤルを回すように開展させてアイコンを選択したり、使用中のアプリの終了も回転操作で行う「円形UI」が紹介された。また、FFD-UIの異なる提案としては、クルマの車内のインパネ中央に設置するディスプレイを想定したかまぼこ形のFFDも用意。こちらはディスプレイの上部右半分がエッジセンサーとなっており、手探りの操作でもエアコンの温度設定やナビ画面の拡大/縮小、バックビューカメラなどの切り替えなどが可能になると解説された。
また、伴氏や方志氏から明言はされていないが、展示品の解説員からはFFDはすでに自動車メーカーから具体的な製品化に向けた引き合いが来ており、要望を満たす製品作りと自動車メーカーによる検証を経て、2017年の市販に向けて開発が続けられていると説明された。
タッチパネル以外の機能追加については、「カードリーダー機能搭載ディスプレイ」を紹介。アンテナを透明化したNFCのカードリーダーを液晶とカバーガラスの間に設定し、画面全体をカードリーダーとして機能させるというUIを提案。別にカードリーダーを用意する必要がなくなり、表示内容を工夫して分かりやすくカードが使えるようになるほか、液晶ディスプレイが利用される幅が広がることになると説明した。このほかに会場では、さらに解像度を高めて近接ジェスチャーセンサーと組み合わせたデュアルビュー液晶、筆による入力に対応する大画面液晶ディスプレイなども展示されていた。