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タミヤ「1/24 マツダロードスター」発売記念イベントに実車のデザイナーとモデラーも参加
マツダの中山雅氏と淺野行治氏、タミヤの平田伸一氏がものづくりについて話す
(2015/12/21 16:45)
- 2015年12月19日開催
タミヤは12月19日、1/24スポーツカーシリーズの新製品「マツダ ロードスター」の発売記念イベントを開催。実車の開発に携わった「ロードスター」のチーフデザイナー 中山雅氏とクレイモデラー 淺野行治氏に加えて、模型の開発を担当した 平田伸一氏の3氏によるトークショーが実施された。
東京・新橋にあるタミヤのオフィシャルショップ「タミヤプラモデルファクトリー新橋店」で行なわれたイベントには、新型ロードスターのオーナーも多数来場。「実車」と「模型」それぞれの立場から、ものづくりへのこだわりなどについて話されるなか、ロードスターのカタチに込められた、機能や狙いが明かされるごとに、会場には“お~!”と納得する声が響いた。
新型ロードスターのデザインを説明するのにあたり、中山氏は、ランボルギーニ「カウンタック」「ミウラ」や、ポルシェ「911」と、往年のスポーツカーのデザインについて解説。エンジンやトランスミッションの配置、ドライバーのポジションによって、クルマのスタイリングが決まっていく様子をホワイトボードに絵を描きながら実演。スポーツカーにおけるデザインの特徴は、どれも無駄を削ぎ落としたカタチにあることを強調した。
中山氏は「スポーツカーのプロポーションは原理原則に従って、無駄なくクルマを作っていくことで、全てに理由のあるカタチになる。無駄なものをつけていないので、いつまでたってもピュアで古くならず、ですのでカウンタックとミウラは今でも“猪木と馬場”のように語られるのではないかと思います」と会場の笑いを誘った。
ロードスターについてもホワイトボードにスケッチを描きながら説明。中山氏は「カウンタックやミウラ、ポルシェもライトの位置でカタチが決まっていましたが、このクルマはライトの部分を無視して作っています」と、薄型のLEDヘッドライトを採用することで新型ロードスターのスタイリングが実現していることを紹介した。
続けて、中山氏は「ものすごく小さいクルマを作るために、できるだけオーバーハングを短くしたかった」とその理由を話すとともに、エアインテークの大きさについても、サーキット走行における冷却性能で必要な大きさを確保したことを明かし、「あの口(エアインテーク)もグラフィックでなく、とにかく理由を徹底的に煮詰めて作りました」と、デザインのこだわりを話した。
自動車のデザイン開発では、デザイナーが描いたスケッチをクレイと呼ばれる粘土で立体のカタチに作り上げていくのが、クレイモデラーの仕事。
コンマ何mmの世界となるクレイモデラーの仕事について、淺野氏は「(コンマ何mmの違いが)人の手に伝わってくるんです。自分の思い描いているラインを(粘土を削る)ガイドを使いながら、ひっかかりがあると削り、浮いていると感じたら(粘土を)盛る、その限界を探りながらモデルを作っていくのが、僕たちの仕事の醍醐味」と話した。
ロードスターのデザイン開発については、デザイン本部長 執行役員 前田育男氏とのエピソードを紹介。“もう少し削れない?”と迫る前田氏に対して「“ダメ!”と、限界に来ていているのが僕には分かって“これ以上やったら凹んで見えるから”」と言って、ロードスターのデザインを巡る攻防の様子などを話した。
今回、タミヤによるロードスターの模型化は初代「ユーノス ロードスター」以来26年ぶりという。今回のロードスターを担当したタミヤの平田氏からは、ドラフターを使って設計していた入社当時の開発手法から、新型ロードスターの模型化における開発手法、最新の3Dプリンターの活用事例など、時代によって変遷していくプラスチックモデルの設計・開発手法などが語られた。
トークのなかで平田氏は、26年前のロードスターの模型と新型ロードスターの模型を比べて、プラスチックモデルの進化している部分を説明。その特徴的な部分としてLEDヘッドライトの設計について触れ、接着の難しいヘッドライトの透明な部品を接着不要とし、その上からリフレクターの部品を接着することで透明な部分が固定できる仕組みを紹介。
平田氏は「3Dによる設計を取り入れたことや金型を作る工作精度の向上があり、部品同士の加工精度も20数年で進み、作りやすくなっているところだと思います」とその特徴を話した。
イベントの締めくくりに、司会を務めたタミヤ 広報の山本暁氏から「初代ロードスターの誕生から時間が流れるなか、変わるものと変わらないものについて」コメントを求められた中山氏は、「大げさに言うと、ライトウェイトスポーツカーの文化を守らなければならないと思っていて、これは絶対に変えられない部分。自分は(初代ロードスターを)20数年間乗ってきた人間ですので、そういう責任もあってこのクルマは25年間生きれるように作ったつもりです」と話した。
一方、タミヤの平田氏は「ドラフターの時代があって、デジタル機器や加工精度も上がってよいテクノロジーは取り入れています。タミヤで作っている模型で昔からずっと一貫しているのは、皆さんに楽しんで模型を作ってもらえることだと思います。タミヤとお客様の共同作業で同時にゴールのテープを切るような、“満足だったなあ”“次はこんなの作りたいなあ””実車の構造がこんな風になっているんだ”といった何か思いが残る、そういったものを念頭に思って設計しています」と、タミヤの模型作りおける変わらない部分を話した。