インプレッション

レクサス 「IS プロトタイプ」

レクサス ISにもハイブリッドがラインアップ

 新型レクサス ISのプロトタイプ試乗会が、箱根のTOYO TIREターンパイクを占有して行なわれた。すでに正式発売となったレクサス ISだが、ここではプロトタイプのインプレッションをお届けする。

IS300hには、直列4気筒 2.5リッターアトキンソンサイクルガソリンエンジンとハイブリッドシステムが組み合わされている

 新型ISのハイライトはハイブリッド車である「IS300h」の存在だ。これでレクサス全車にハイブリッドが設定されることになる。すでにレクサス ISはディーラーにおいて受注を開始しており、受注の実に7割がハイブリッドだと言う。組み合されるエンジンは、GS譲りのV型6気筒 3.5リッターではなく、新型クラウンと共通の直列4気筒 2.5リッターとなる。「300」という数字が示すとおり、スペックも3.0リッタークラスの出力が与えられ、エンジンが131kW(178PS)/22.5kgm、モーターが105kW(143PS)/30.6kgm、システム合計で162kW(220PS)を発生する。

 そのほかガソリンエンジン搭載車として、V型6気筒 3.5リッターの2GR-FSE型(最高出力234kW[318PS]/6400rpm、最大トルク380Nm[38.7kgm]/4800rpm)が搭載される「IS350」、V型6気筒 2.5リッターの4GR-FSE型(最高出力158kW[215PS]/6400rpm、最大トルク260Nm[26.5kgm]/3800rpm)が搭載される「IS250」があり、IS350は8速AT、IS250は6速ATが組み合わされる。駆動方式は、今回試乗したプロトタイプにおいては、すべて後輪駆動であった。エクステリアやインテリアの詳細については、写真で見る レクサス「IS プロトタイプ」を参照していただきたい。

●写真で見る レクサス「IS プロトタイプ」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20130415_595933.html

クオリティの上がった作り込み

 ボディーサイズは先代ISの4585×1795×1430mm(全長×全幅×全高)から、4665×1810×1430mmと、ひとまわり大きくなり、基本フォルムは初代の延長上にありつつも、新鮮さと高級感はだいぶ上がったように目に映った。スピンドルグリルもよく似合っているし、特徴的なテールランプ形状も斬新だ。

 一新されたインテリアは、LFAのエッセンスを採り入れており、 F SPORTに採用された可動式メーターリングも興味深い。男のアソビ心をくすぐられるアイテムだ。

 立体的なインストルメントパネルなど、全体の雰囲気も先代ISとはまったく異なり、ISでこれほどまでにと思えるほどクオリティ感が上がっている。おなじみリモートタッチが設定されているほか、金属スライダーで操作できるようにした、静電式の空調の温度調整式スイッチも面白い。ただし、状況によっては目線を前方から離す時間が長くなることもありそうだ。

 2730mmから2800mmへと70mmのホイールベース延長の恩恵を受けたリアシートは、ニースペースがだいぶ広くなっている。前席下への足入れ性もよく、頭上空間もいくぶん拡大している。

 ハイブリッド車で気になるトランク容量についても、一見するとガソリン車と大差なく、左後輪のタイヤハウス後方が埋まっているかどうかと、右後輪後方も若干形状が異なる程度。奥行きや荷室高などは同じように見えた。実際、ガソリン、ハイブリッドともども先代ISよりも大きく、9インチのゴルフバッグ3個が入る容量が確保されていると言う。これは新しいリアサスペンションを採用の恩恵も小さくないと思う。また、6:4の分割可倒リアシートを採用したのもISとして新しい試みだ。

リニアなフィーリングを楽しめるガソリンエンジン搭載車

 TOYO TIREターンパイクで、IS300h、IS250、IS350の各種グレードをドライブすることができた。動力性能について、IS250は、上り勾配では物足りなさを感じることもあるものの、概ね十分。こちらは6速ATとの組み合わせとなるが、大きな不満はない。

 IS300hは、予想どおりIS250ではきつく感じた上り勾配も楽に上っていける。エンジン音が6気筒と異なるのは仕方のない点だが、IS300hのみダッシュボード裏の遮音材などを厚くして透過音を下げているとのことで、静粛性はまずまずだ。エンジン性能などについても、新型クラウンハイブリッドに対して、さらなる改良が施されている。

 同じ方式のハイブリッドシステムを搭載する車種でも共通して見受けられる症状として、高回転までエンジンを回したときに、ベルト式CVTのようにエンジン回転が先に上がって、あとから加速がついてくる感覚があったところを、新型ISでは加速感とリニアにリンクするようにしたとのことで、たしかにいくらかそのようになっていた。

 しかし、こうしたアップダウンの多いワインディングロードを走ると、アクセルを強く踏み込んでも、むしろそこにいたるまでの低~中回転域でのエンジン回転の上昇がゆっくりであることが気になる。もっと早くついてきてほしいと思わずにいられない。

 その点では、やはりガソリンエンジンはリニア。とくにIS350は、IS250はおろかIS300hに比べても圧倒的にパワフルで、別格だ。車両のGセンサーから減速度や旋回力を判断し、コーナリング中の不要なシフトアップを抑制するG AI-SHIFT制御付きの8速SPDS(スポーツダイレクトシフト)の効果と思われる面も、走っていてときおり感じられた。また、サウンドについては、IS250はサウンドジェネレーターで吸気音のチューニングは行なっているが、加えてIS350では排気音もチューニングすることで、野太さを演出している。

 一方で、IS350ではアクセルを踏み込んだ際にエンジンルームから高周波が聞こえてくることがあった。レクサスのスタッフに確認したところ、それはカムチェーンノイズとのことで、2GR-FSE型ではやや大きめで、個体差があるらしい。今回試乗したIS350 F SPORTはプロトタイプのためか、目立つものとなっていた。

運動性能でもっとも印象がよかったのはIS300h“version L”

 先代ISもスポーティではあったが、新型ISのプロトタイプではそれとは一味違った、現行GSに近いラグジュアリー感をあわせ持つ上質なスポーティフィーリングとなっていた。試乗車に装着されていたタイヤは、グレードを問わず、17インチがブリヂストンの「TURANZA(トランザ) T001」、18インチが同じトランザシリーズの「トランザ ER33」で、17インチは前後225/45 R17の同サイズ、18インチは前225/40 R18・後255/35 R18の前後異サイズでリアが太くなっている。

 たとえもっともベーシックな素のIS250に乗っても、新型ISにスポーツセダンの趣は感じられる。キビキビとしていて、ドライビングプレジャーがある。サスペンションのダンピングが効いていながら、大きめの段差を乗り越えても入力がダイレクトに伝わることはなく、乗り心地に不快さはない。比較用に用意されていた先代ISでは、リアにやや突き上げ感があり、深くストロークしたときに不安定になりがちだったところ、新型IS プロトタイプにはそれがなく、コーナリングでのライントレース性にも優れる。また、タイトコーナーで深い舵を与えても、IS350はややアンダーステア傾向だが、そのほかはおおむねニュートラルステアだ。

 各パワートレインのいずれにも設定される“F SPORT”だが、先代ISは内容的にはコンベンショナルで、チューニングで差別化を図っているのに対し、新型ISではベースグレードとの明確な差別化が図られ、電子制御式ダンパーの「AVS」や、各種デバイスとともに4輪のタイヤ切れ角を制御する「LDH」が採用される。

 これらによりF SPORTのハンドリングは、より俊敏なものとなっているものの、前述のLDHや可変ダンパーが挙動を正確に掴みにくくしている面もある。サスペンションやスタビライザーが強化されているため荷重移動による挙動変化が起こりにくく、限界を把握しにくくしていることもその要因だろう。

 一方でF SPORT以外のIS300hは、ハイブリッドシステムの搭載による重量増に対し、スプリングやダンパーは固めているが、スタビライザーは細いので、操舵に対する反応が素直に出ている。全体としては、重量配分が前後均等に近く、リアスタビライザーが過度に強化されておらず、前後異サイズの18インチタイヤを履くIS300h“version L”が、もっとも走りの印象がよかった。いずれにしても新型ISは、スポーティとラグジュアリーを上手く共存させ、運転する楽しさを持ち合わせたクルマになっていることは理解できた。一般市街地を含め、ハイブリッド機構を搭載した量産版のISの仕上がりについては、いずれお届けしたい。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。