写真で見るポルシェ「パナメーラ ターボ」


 スポーツカー専業メーカーのポルシェだが、このところSUVの「カイエン」など、バリエーションを増やす傾向にある。今回取り上げる「パナメーラ」も4ドアサルーンであり、ポルシェとしては少々異端のモデルと言える。パナメーラの存在は早くからリポートされていたが、実車は2009年4月の上海ショーで初めて公開され、9月に欧州、10月に北米で発売が始まった。

 4ドア4人乗りのボディーは非常に大きく、4970×1930×1420mm(全長×全幅×全高)となる。これはメルセデス・ベンツのEクラスより10cm以上長く、Sクラスより10cm程度短いという寸法だ。しかし車幅は圧倒的で、Sクラスを軽くしのぐ。軽量化に尽力したというが、車重は1770~1970㎏。滑らかなシルエットを描くボディーは空気抵抗も小さく、パナメーラSと4Sが0.29、ターボでは0.30というCd値(空気抵抗係数)を実現している。

 搭載されるエンジンは、パナメーラSと4Sが直噴+自然吸気のV型8気筒、ターボはこれに過給器が加わる。排気量はいずれも4.8リッター。自然吸気でも最高出力は294kW(400PS)、ターボでは368kW(500PS)を得ている。これにより最高速度303km/h、0~100km/h加速4.2秒という性能を実現。オプションの「スポーツクロノパッケージ」を装着すれば、0~100km/h加速は4.0秒まで速くなる(いずれもターボのスペック)。

 駆動方式はSが2WD(FR)、4Sとターボは4WDとなる。トランスミッションは7速で、いずれのモデルもデュアルクラッチの「PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)」を搭載。オートマチック、マニュアルのどちらでもドライブできる。4WDモデルにはトラクションコントロールシステムの「PTM(ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム)」が搭載され、トルク配分、スリップ量などを自動制御する。また横滑り防止装置の「PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)」も装備する。

 サスペンションは前後ダブルウイッシュボーン。電子制御ダンパーシステムである「PASM」(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)が組み込まれており、「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」の3種類の走行モードが選択できる。アダプティブエアサスペンションは走行モードや乗員・積載によって姿勢を整えるだけでなく、任意に車高を高くすることも可能。また、オプションで、アクティブ制御によるロール抑制システム「PDCC」(ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム)、より強力なブレーキシステム「PCCB」(ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ)などが用意される。

 今回撮影したのは最上位モデルのパナメーラ ターボ。価格は2061万円だが、オプションの「PDCC」、「PCCB」、スポーツクロノパッケージ、「ACC」(アダプティブクルーズコントロール)、アダプティブスポーツシート、ツートーンレザーインテリア(ヨッティングブルー/クリーム)などが装備されており、トータル価格は2458万1000円となっている。

パナメーラのスタイルはファストバックの4ドアサルーンそのもの。しかしボンネットよりもわずかに高いフロントフェンダーの峰など、要所にポルシェらしいデザインをちりばめ、大きなボディーを引き締めている。また、2m近くもある車幅のため、前後から見るかぎりスポーツカー的なアピアランスを十分に保っている。どことなく「928」を思い出すルーフラインは長く後方まで伸び、後席頭上を完全にカバーする

 

フロントまわりはボクスターなどに近いイメージ。衝突時に歩行者への衝撃を軽減するアクティブボンネットを採用ヘッドライト下の方向指示灯。その下にはエアダクトを装備するグリル中央に「ACC(自動制御クルーズコントロール)」などのためのレーダーセンサーを装備する
ヘッドライトは「アダプティブライティングシステム」を一体化したバイキセノンヘッドライト。アダプティブライティングシステムは、ステアリング操作などによってヘッドライトの方向を変えたり(ダイナミック コーナリングライト)、車速によって光の広がりを変化させる。交差点などで内側を照射するスタティック コーナリングライトも装備する
ミラーは方向指示灯などを装備しないシンプルなもの。かなり大きく見やすいドアハンドル。キーを携帯していれば、ドアハンドルに触れるだけで解錠する「ポルシェ・エントリー&ドライブシステム」を装備フューエルリッドを開けた状態。「98ROZ/RON」の文字が見える。ハイオクガソリンが指定
ルーフ部にあるミゾはルーフトランスポートシステム(ルーフキャリア)を装着するためのもの。75kgまで積載できる撮影車はオプションの20インチ RSスパイダーデザインのホイールと、PCCBを装備していたフロントホイール後方のエアダクト。上部には方向指示灯を装備する
「アダプティブエアサスペンション」による車高の変化。マニュアルリフトで20mm高くできるほか、「スポーツプラス」などの走行モードによって車高が自動的に変化するリアまわり。あまり目立たないが、キャビンは後方で強く絞られている
リアのコンビネーションランプ。LEDが多用されているリアウィンドー上端のハイマウントストップランプ四角い形状のマフラーエンドは片側2本、左右で4本出しとなる
格納式リアスポイラー。パナメーラターボは立ち上がった後に左右に開く4ウェイ式を装備している。走行速度が90km/hで自動的に展開、205km/hで角度がさらに強くなる
テールエンド中央に「PORSCHE」、「Panamera Turbo」のロゴが置かれる。エンブレムは定位置のボンネット前端

 

フロントに置かれる4.8リッターのV型8気筒エンジン。ツインターボチャージャーを装備し、過給圧は最大0.85barに達する。オプションのスポーツクロノパッケージターボを装着すると、10%のオーバーブーストも可能になる
テールゲートはかなり大きい。オートマチック機構を備え、ボタンひとつで自動的に閉じる。ゲートの開く高さは設定可能。後方への警告灯も装備する
ラゲッジルーム。通常の状態で容量は432リッター。シートを左右とも倒すと1250リッターまで拡大する
ラゲッジルームには、シートを立てた状態でLサイズのスーツケース4個が積載できるフロアパネルを外すと牽引フックや電動の空気入れなどが現われる。右はオーディオ装置工具類の下には大型のバッテリー
ホイールアーチ後方には、小物を入れるための収納ネットを装備ラゲッジルームにはアクセサリーソケットも装備するフロアに用意された荷掛けフック。荷物を固定するのに便利

 

インパネ全体。肩の高さの紺とそれ以外のクリーム色というツートーンの室内ステアリングホイールもインパネと同色。パドルシフトを装備するコクピットは、比較的コンサバティブな作り
ステアリングホイール左のウインカーレバー。ライトスイッチは別にあるためシンプルステアリングホイール左下のクルーズコントロール関連のレバーステアリングホイール右のワイパーレバー。ヘッドライトウオッシャーも装備する
ステアリングホイールのボタン類。電話の操作のほか、メーター表示の切り替えなども操作できるステアリングホイール裏側のボタンは、ステアリングヒーターのもの
インパネ左側のライトスイッチと、独特な形状のイグニッションキーのホールイグニッションキーを差し込むとこのような状態。回してエンジンを始動するイグニッションキー。緊急用のキーも内蔵されている
デュアルクラッチトランスミッション「PDK」のシフトレバー。矢羽根のようにデザインされたボタン類が目を引くアスクセルとブレーキの2ペダル。アクセルはオルガン式ステアリングコラムの電動式チルト&テレスコピックの操作ボタン
センターコンソール部はかなり幅がある。シフトレバーより前方には主に空調関係のスイッチが並ぶ。左右席で異なる温度にも設定できる。シフトレバーより後方には「スポーツ」や「スポーツプラス」といった「PASM」の切り替え、マニュアルリフト(車高変更)、「PSM」などの走行関連のスイッチが置かれている

 

助手席側から室内を見る。撮影車はオプションのツートーンレザーが装備されている運転席はもちろん、全席にシートヒーターを標準装備リクライニングなどは電動で調整。運転席はランバーサポートも装備
運転席側のドア。クリーム色は高級感があるが汚れが目立やすいサイドシルプレートには「Turbo」のロゴ他の車両に注意を促すランプをドアの内側に装備
内側のドアハンドル。その横にはシートポジションのメモリースイッチ運転席ドアのスイッチ。ウインドー、ミラー調整のほか、リアゲートオープナーなどもここに装備運転席ドアのポケット。可動式で荷物が出し入れしやすい
ルームミラー。逆台形の形状はリアウインドーに合わせたものルームライトなどのスイッチ。矢羽根型のデザインモチーフがここにも使われているサンシェード裏にはバニティミラーと照明を装備
ドリンクホルダーを備えたアームレスト。開ければ大容量の物入れとなる。シンプルで使いやすそう。その前方には小型の灰皿を備える
助手席側のグローブボックスを開けた状態。中にはアクセサリーソケットを装備。ETC車載器もここに置かれていた
助手席の足下に用意されたメッシュの物入れ運転席側インパネ左下のパーキングスイッチエアバッグは、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグも装備

 

後席から室内を見る。それぞれのシートが独立しているイメージ後席。センターコンソールが後部まで伸び、後席は2名乗車となる後席ドア。これもサイズはたっぷりしている
ドア内側前方には灰皿を装備。その前はピラーに設けられたエアコン吹き出し口後席ドアのポケット。前席よりもかなり小さめ前席背面の物入れ
後席のセンターコンソール。空調のスイッチやシートヒーターのスイッチが置かれている。中央はドリンクホルダー
後席の背もたれまで木目パネルで被われたコンソールが伸びる。開けると小物入れ、ドリンクホルダー、アクセサリーソケットなどが利用できる後席の照明。その横はハンガー用のフック
後席のアームレスト。中は物入れになっている
後席の背もたれは6:4の可倒式。両席とも倒せば相当な荷物が積載できる

 

メーターはポルシェ伝統の5連式。右から2つめのメーターが4.8インチのカラーモニターになっており、各種の情報を表示するインパネ上部の中央に置かれたクロノグラフ(ストップウォッチ)。スポーツクロノパッケージの象徴でもあるタコメーターの下部には、ギアポジションと速度、「SPORT」などの走行モードが表示される
モニター表示の例。左は前を走行する車との距離をイメージで表示、右はドアの状態とPSMのON/OFFPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)や車高変更の表示例左上はクロノグラフの操作表示、右上はタイヤ空気圧の表示、左下はトリップ計、右下は装着しているタイヤの状態表示
インパネ中央のディスプレイの表示各種。カーナビはクラリオン製カーナビは音声でも操作できるカーナビの表示切り替え。2画面分割も可能
カーナビの目的地入力。使い勝手はよい各種情報表示。VICSも使用できるオーディオなどのソース切り替え


(西尾 淳(WINDY Co.) / Photo:石川 智)
2010年 2月 1日