日下部保雄の悠悠閑閑
ジャーナリストミーティング
2024年7月1日 00:00
クルマをわずかな面積で支えるタイヤ。そのタイヤのことをもっと学ぼうと、横浜ゴムにお願いして勉強会が始まったのは2003年で日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)の会員に向けて開催してきた。実車プログラムでは勉強会の性質上、少人数でしか開催できず今回も8名のAJAJ会員と2誌に声がけして合計10名の参加者で開催した。
通常業務の忙しい中でプログラムとタイヤを作ってくれた横浜ゴムには感謝しかない。今回のプログラムは音と乗り心地の評価という難しい課題となった。
音の評価では205/45R17(プリウス)でdBとオールシーズンのBluEarth-4S AW21、それにスポーツタイヤのFLEVAの比較を行なった。
タイヤ騒音は大雑把に言うとパターンノイズと路面から伝わるロードノイズに分けられる。ロードノイズはタイヤが路面をたたく音。パターンノイズはパターンから発する風切り音など。滑らかな路面で聞こえるのはパターンノイズ。粗い路面で聞こえるのはロードノイズが多い。ドドドという低い音からゴーという音、さらに高周波のコーと聞こえる音まで多くの種類がある。
最近はタイヤ内面に吸音スポンジを使うこともあり、タイヤの内部で発生するこもり音を消すことができる。そのかわり別の音が目立つこともあり、スポンジを使用している量産タイヤは工夫して音をバランスさせている。今回のdBでは本来の製品では使われていないスポンジを入れて、その別の音を探ってみることも課題になった。
ドライバーはパネラーさん、参加者は助手席、後席に乗って音に集中して採点とコメントを取る。
ノイズが高いと思われたAW21やFLEVAは意外とパターンノイズは限られており(ピッチバリエーションなど技術の進化が大きい)、そのかわりロードノイズに差があった。dBはノイズが低いと同時にノイズ同士がマスキングしている。ただスポンジのためかゴー音が少し大きくなったようだ。
次に行なったのは乗り心地。クラウンで225/55R19のdBだ。パターンは同じだが勉強会仕様で内部構造を変えた3種類のタイヤを作ってもらった。
乗り心地評価に使う路面をパネラーさん運転で、音同様60km/hで通過する。この時に凸路での乗り上げ時と凹部での乗り下げ時、それに突起乗り越しと不定期に荒れた路面を通過した路面で評価する。試験車のクラウンは乗り心地が安定しているのでそれぞれ特徴が分かりやすかった。当たりは柔らかいがぶるぶるするdB。しっかりしているがショックのあるdB、固めだがバランスの取れたdBと、いろいろ違いがあって面白い。
違いはビードフィラー(タイヤとホイールが噛み合う部分のビード上に乗っているゴム)の差によって作られており、量産品は突出していないもののバランスが取れておりスッキリしている。
言葉で伝えるとぶるぶる感や突き上げ感、フラット感などになり、みんな難しい顔をしているが好奇心の強い人たちだけに楽しそうだ。
実は自分は運営側に回っていたので本番には乗っていない。つまりパネラーさんと意見交換をしていないので参加者がうらやましい。
最後は荷重とタイヤグリップの関係を推測するゲーム。低ミュー路ハンドリングコースで2600kgの重量級SUVのキャデラック・エスカレードにウェットcのPARADA(285/50R20)。1270kgのGR86にウェットaのスポーツタイヤNEOVA(225/40R18)。それに840kgのダイハツ・キャストにウェットaのミニバン用BluEarth-RV RV03A(165/60R15)。参加者がラップタイムが早いと思われる組み合わせを選んで挑戦する。
接地荷重が大きければ水膜を除去できるのでウェットグリップは増すはず、つまりクルマの重量が大きくてもタイヤの接地面積が大きいと面積あたりの接地荷重は減ることにもなる。さぁどっち?
さらに、タイヤのグリップは凝着摩擦(ゴムの粘着力)とゴムが路面の凹凸で振動して熱をグリップに変えるヒステリシス摩擦がある。タイヤラベリングのaは偉大なのです。
加えてトルク変動の穏やかなAT(エスカレードとアクティバ)や低ミュー路では少ないエンジンパワーがよさそうとかいろいろ騒がしい。
MTのGR86+ネオバは溝が少なくて難しそう? キャストは軽くて走りやすいのでは? 溝が多くて重いエスカレードはどうなんだ?
と悩んだ末に出したタイムは最初は乗りやすいキャストだったが、場外乱闘で自由に走らせるとエスカレードが巨体を活かし、さらに丁寧に走るとパワーのある86も速い。つまり、ベストを取ると横並びに近くなった。
ヨコハマらしいシメで有意義で楽しい1日を過ごしたのでした。
改めて勉強会にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。