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日野、レンジャー2台でダカールラリー2018参戦を発表。連続完走記録の更新などに挑む
エースドライバーは76歳の菅原義正氏
2017年10月19日 21:52
- 2017年10月19日 開催
日野自動車は10月19日、「ダカールラリー2018」(2018年1月6日~20日)のトラック部門に中型トラック「日野レンジャー」2台で参戦すると発表した。日野は1991年からダカールラリーに参戦しており、今回が27回目。「日野チームスガワラ」として参戦し、ドライバーは1号車が「ダカールの鉄人」と言われる菅原義正氏、2号車が菅原照仁氏。
同日に東京都日野市の日野自動車本社で行なわれた参戦発表会では、1号車ドライバーの菅原義正氏、2号車ドライバーの菅原照仁氏のほか、日野自動車 代表取締役社長の下義生氏、両車のナビゲーター、販売会社から選抜されたメカニックなどチーム関係者が集まった。
日野自動車の下氏は「生半可な準備では太刀打ちできない。参戦する競合チームは大排気量のモンスタートラックばかりで、年々スプリントレースの様相も強くなり、レベルはどんどん上がってきている」とダカールラリーの現状を示した。「参戦は、日野自動車の技術力向上、サービス技術力の向上、人材育成に寄与する大きな挑戦」と掲げ、販売会社のメカニックの参加は「究極の精鋭メカニック」として、アフターサービスを支える人材育成制度になっていると説明した。
また、参戦の経験は「軽量でありながら壊れにくいタフなクルマを作り上げ、モンスタートラックたちに果敢に戦いを挑んでいる、このようにして培われた技術が、新型『プロフィア』や、『レンジャー』におけるエンジンのダウンサイジングに活かされている」と語り、市販車に活かされていることも強調した。
レースについては、2号車のドライバーである菅原照仁氏が解説した。菅原照仁氏は菅原義正氏の次男で“親子参戦”と言われている。
今回のコースはペルーの首都リマからボリビアを経て、アルゼンチンのコルドバがゴール。前半のペルーには「驚くほど大きな砂丘がある」とし、ループが2回あるコースで「前半は砂漠オンステージ」と説明した。また、中盤のボリビアはアンデス山脈に沿って標高が高く、富士山の山頂より高い4000m以上の場所での戦いとなる。そして、南下をしてアルゼンチンのコルドバでゴールするが、道がわるいという。「前半は砂丘、中盤は高地、中盤以降は悪路と、厳しい設定がされている」と話し、厳しい戦いになるとした。
クルマについては「速く走るためになにをしていけばいいのか重点的に洗い出した。ポイントはアベレージスピードを落とさない足まわりで力を入れた」と解説。「1号車は、参戦当初から採用していたマルチリーフサスペンションを採用、2号車はテーパーリーフだが、エンジンが700馬力を超える出力を得るので、それを受けとめる機構部分に手を加えている」として、高出力対応のトランスファーを採用し、LSDをリアに取り入れたという。また、重量が増えないようにしつつ補強を加えて剛性を高めているとした。
サポート体制についても、これまで大型トラックのプロフィア1台だったが、より多くの部品を現地に持ち込んだり、移動工場のようなサポートカーを1台増強して2台体制にするとした。
菅原照仁氏は目標について「トラック部門総合10位以内」とし、2017年は排気量10リットル未満クラスでクラス優勝するものの、トラック部門総合で8位だったことから、「今年はそれ以上を目指す、注目してほしい」と語り、レースのポイントは砂漠と雨だとした。
メカニックとしてディーラー選抜の4名も参戦するが、父も整備士で、ダカールラリーに参加することを目標に群馬日野自動車に入社したという高野雄生氏が代表してあいさつを行なった。
これまでに高野氏は、7月に2号車のみが参加した「シルクウェイラリー」、8月に1号車のみが参加した「モンゴルラリー」にメカニックとして参加しているが、「1つ気づいたこととして挙げられるのは、チームワークの大切さ。ラリー中は予定外のことが起き、気持ちの余裕がなくなってくる。そんなときはチームの仲間が声をかけてくれた」と語った。
さらに、「2つのレースで困難を乗り越え、最高のチームとなりました。このチームで歴代の先輩方がつないできた連続完走とクラス連覇の記録をさらに伸ばし、昨年以上の総合上位を目指してチーム一丸となり、ラリーに挑戦します」と意気込みを語った。
最後に1号車のドライバーの菅原義正氏がマイクを握った。菅原義正氏はダカールラリーに2輪時代から数えて連続34回目の参戦。「日野さんが参加されて27年目。人数も多くなりまして、最低のときは2人だけでサービスなしで、9月1日にパリを出てモスクワを通り、29日に北京でゴールした。それから比べると、今は夢のようなチームになった」と振り返った。
また、菅原義正氏は「ダカールに参戦して35年。初めてテント生活からキャンピングカーに乗ることができる」とサポート体制の充実を挙げ、これまでのテント生活よりも快適なレースができることに喜んだ。
なお、菅原義正氏は前回、標高の高いところで体調を崩したことがあったという。その点については「4900mくらいのところを走るので、鼻にチューブで酸素を供給しながら走るが、僕がやると似合いすぎちゃう。病院から脱走してきたんじゃないかと。それで似合いすぎてやめたんですが、前回は具合がわるくなって点滴を受けたので、今回はナビと僕で酸素を用意しています。心配いりません」と述べ、しっかりと対策するとした。
参戦車両は2台の日野レンジャー
参戦する車両は中型トラックの日野レンジャー。これまでの参戦と同じく、1号車と2号車で仕様が異なる。外見は1号車がレンジャーの輸出仕様である日野500シリーズ、2号車は新型となった国内仕様のレンジャーとなっている。
共通するスペックは、エンジンがインタークーラーターボ付きの直列6気筒8.9リッター「A09C-TI」で、トランスミッションはHi-Loレンジ切替付きトランスファーを備える前進6速。タイヤはミシュラン「XZL 14.00 R20」。
エンジンの出力や駆動方式、サスペンションやボディサイズなどは2台で異なる。駆動方式は1号車がパートタイム4WD、2号車がフルタイム4WDとなり、出力も2号車が700PSに対して1号車が670PS。この差は1号車が耐久性・信頼性重視、2号車が高出力・スピード重視と役割が異なっているため。
また、車両のデザインも微妙に異なるほか、キャブ上部に鯉のぼりを掲げることが恒例で、1号車がピンク、2号車がブルーとなっている。