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自工会、5月からトヨタの豊田章男氏が新会長に就任

2018年度の自動車国内需要見通しは517万5100台と予想

2018年3月15日 開催

2016年5月から務めてきた自工会会長として最後の定例会見に臨んだ西川廣人氏

 日本自動車工業会(自工会)は3月15日、3月度の定例記者会見を実施。次年度となる2018年度の自動車国内需要見通しを発表したほか、同日に行なわれた理事会で、2016年5月から2年間の任期で会長を務めてきた西川廣人氏に代わり、トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏が次期会長に内定したことも報告された。豊田氏は5月17日に実施される理事会で正式に会長に選任される予定となっている。

2018年度の自動車国内需要は517万5100台、対前年度比99.7%の見通し

 会見の序盤には、例年3月の会見で行なわれている自動車国内需要見通しの発表が自工会会長の西川廣人氏から報告された。

 2017年度の4輪車総需要は518万9600台で、対前年度比102.2%。同2輪車は37万5000台で、対前年度比100.4%と発表された。4輪車の内訳では、登録車が333万5000台・対前年度比99.3%、軽4輪車が185万5000台・前年度比107.9%となっている。8四半期連続でGDPがプラスになっているほか、設備投資も5四半期連続で伸長。失業率も低水準となっているなど国内経済は堅調に推移していることで総需要の増加につながったと西川会長は分析する。

 2018年度の見通しについては登録車、軽自動車ともに2017年度の堅調なペースを維持するとの見解が示され、4輪車総需要は517万5100台で対前年度比99.7%と予想。同2輪車は36万1000台で、対前年度比96.3%としている。4輪車の内訳では、登録車が290万8000台・対前年度比100.4%、軽4輪車が145万6000台・前年度比100.3%。西川氏は「510万台を超える高いレベルで需要が維持されるというのがわれわれのメッセージになります」とコメントしている。

 このほかに西川氏は、消費税が10%に引き上げられる予定となっている2019年度についても触れ、「自動車業界にとって非常に重要な局面であり、従来から申し上げている『車体課税の簡素化・軽減』が国内市場の活性化に不可欠で、ここへの働きかけや取り組みが非常に重要なポイントになりますので、来年度にかけて関係性のある皆さまといっしょに取り組んでいきたい」と意気込みを語った。

「近々に自動運転に関わる制度整備大綱が作成される」と西川会長

 また、西川氏は所感として、自工会が取り組んでいる「日本市場を自動車の先進市場としてさらに加速させる」点について、2017年10月から開催された東京モーターショー2017を「テクノロジーショー」として行ない、技術の進化や将来のモビリティ社会像を示すといった部分でマイルストーンとなり、これまで自動車のショーに足を運んでいなかったような人にも興味を持ってもらうことができたと評価。今後も2018年に開催を予定する「東京モーターフェス」、2019年に開催を予定する「東京モーターショー2019」、さらに2020年に行なわれる東京オリンピック・パラリンピックの場でアピールし、将来に向けた取り組みをオールジャパンで世界にアピールしていきたいと述べた。

 さらに先進技術での大きなテーマとして、自動運転の技術についても2017年からSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の一環として、首都高速道路や東名高速道路、東京臨海地域で「ダイナミックマップ」の実証実験を行なっており、すでに現実のものとして進めていることを紹介。西川氏は自動運転については個社での技術開発に加え、環境整備や法的な整備が不可欠となるが、政府が主導する成長戦略の具体化の一環として、近々に自動運転に関わる制度整備大綱が作成されると聞いているとも語り、業界としても大変期待しており、自工会も積極的に参画していくとした。

自工会は分かりやすく負担の少ない自動車諸税の実現に集中

 後半に行なわれた質疑応答では、直前に実施された春闘に関連する質問が相次ぎ、春闘について西川氏は「昨日、自動車会社各社の回答が出そろいました。それぞれ徹底した議論が尽くされた結果ということで、総じて言いますと5年連続のベースアップ、賃上げということになり、主要産業の一翼として経済の好循環に貢献しているのではないかと認識しております」とコメント。

 これに関連して、今回の春闘では政府から「ベースアップ3%を期待する」との言及があったことについて複数の質問が出たが、西川氏は「日本の経済を運営するという政府の立場から『好循環をさらに加速させたい』とのメッセージとしては分かりやすいものだったと思います。数字を挙げることがいいかわるいかは別として、かなり明確にそのような期待を持っているということで、その期待の元で経済運営されるということは、われわれもはっきりと認識しています。3%というものをそのまま受けるかは別として、われわれも日本で経済活動をしているわけですから、経済の好循環は非常にプラスになることです。そのようにプラスになることを期待されているという認識のなかで、それぞれの個社で皆さんが議論や交渉を尽くして決定されたということです。その会員会社もそうだと思いますが、実際に交渉する中で『3%というのが決まりである』といった意識で交渉してはいなかったのではないかと思います」と回答。

質疑応答に応じる西川氏

 また、2019年10月に予定されている消費税の10%化を受け、今後に想定される自動車の駆け込み需要や、そこからの反動減についてどのように考えているかについて質問され、西川氏は「今回発表した2018年度の国内需要見通しに、消費税アップといった要素は反映しておりません。純粋に経済環境やお客さまの動向から見た数字になっています。消費税の増税は2019年の10月に予定されていますが、一方で自動車業界としてみると、これまでも申し上げている『自動車諸税の簡素化と軽減』というものに関して、2019年度に行なわれる税制大綱の中で改善を入れていただきたいと働きかけているところで、自動車を取り巻く環境の大きな変化で、1つは2019年度が開始される時になり、そこから2019年度の半ばに消費税が上がるという変化が来ます」。

「そこに時間差があることで、需要動向やお客さまがどのように理解されて動くのかを予想することが難しい面があります。そういった議論も実はしたのですが、まだ見方が定まっていないので、これからいろいろと見たうえで、打つ手があるなら打っていかなければいけないのですが、まずわれわれが集中しなければいけないのは、2019年度の大綱にわれわれの考え方をできるだけ反映していただき、ユーザーの皆さんから見て分かりやすく負担の少ない自動車諸税が2019年度から始まる体制作りに集中していきたいと考えております」と語り、分かりやすく負担の少ない自動車諸税の実現に集中する考えを示した。

「2020年に向けた流れを作れた2年間」と西川会長

 このほか、2016年5月に会長に就任してから2年間の振り返りでは、「(前会長の)池さんから受け継いだときは『自動車業界が100年に1度の大変革に入りつつある』ということで、そこでどうしようかということで、やっていくこと、自動車工業会として合意して進めていくこと、先進性をアピールして日本のマーケットを盛り上げましょうといったことは方針として皆さんで共有されていましたので、その方向で進めていけばいいだろうと思っていました。その方向で進めていたのですが、私が就任してすぐのころからいろいろなことが起きました。通商環境や事業環境では、就任してすぐにEPA(日EU経済連携協定)でアピールしに行こうと思っていた矢先に英国の(EU離脱を問う)国民投票が行なわれて大騒ぎになりました。(EU本部のある)ブリュッセルに行っても“ブレグジット”の話しばかりになって、いきなり大変な洗礼を受けました。その後には米国でトランプ政権が誕生してTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)でも再交渉するぞということで、さらにアルミと鉄鋼の輸入関税とまだまだ続いていますが、そんなことが多々あった2年間でした」。

「その中で、われわれ自工会としては、日本の自動車産業としては自由貿易が望ましいという考えで働きかけを行ない、政府のご努力の結果でEPAの大筋合意、TPPも米国を除いていますが大筋合意に至り、将来に向けた非常に大きなグッドニュースだったと思っていますし、自工会としてもそれぞれの局面の中で少しはお役に立てたかと思います」。

「国内に目を向けると、この2年間は総じて経済が堅調で、自動車の需要も堅調に推移したと思います。その中で、自動車を取り巻くモビリティ社会は新しい時代、将来に向けた変化がすでに始まったという2年間だったと思います。自工会としてみると、将来のビジョンや日本市場、日本の製品が持つ先進性を、種々企画してアピールすることを考えてきました。昨年の東京モーターショーではいろいろな試みをしましたが、ある程度将来につなげるステップを作れたのではないかと考えています」。

「池さんから引き継いだ際に『2020年を大きなマイルストーンとして盛り上げていきましょう』ということで、池さんと私、そして今度会長に就任する豊田章男さんとみんなで合意した方向です。その流れを少し作ったところで章男さんにバトンタッチできると思います。『100年に1度』とよく言われますが、差しかかっているというのではなく、もう入っていると思うのですが、日本の自動車業界はこれからも『流れに押される』のではなく、『流れを作っていく』という業界になることを目指して、私もその一員として頑張っていきたいと思っています」とコメントしている。