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フォルクスワーゲン、2020年に本格導入するEV専用アーキテクチャ「MEB」ワークショップレポート(その4)

11kWまたは22kWの家庭用充電システム「Volks-Wallbox」公開

2018年9月20日(現地時間)開催

ワークショップで公開された家庭用充電システム「Volks-Wallbox(フォルクスウォールボックス)」

 独フォルクスワーゲンは9月20日(現地時間)、ドイツ ドレスデン工場においてEV(電気自動車)専用の新型アーキテクチャ「MEB(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)」に関するワークショップを開催した。

 今回のワークショップでは、「MEBアーキテクチャ」「バッテリー・セル」「充電と充電インフラ」という3つのテーマのグループセッションが行なわれており、本稿では独フォルクスワーゲンで充電インフラの責任者を務めるMichel Vlahov氏による充電と充電インフラのプレゼンテーション、IONITY(フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、BMW、ダイムラーAG、米フォードが展開する欧州の急速充電ネットワーク企業)でPRマネージャーを務めるPaul Entwistle氏による欧州地域の充電設備に関するプレゼンテーションの模様をお伝えする。

独フォルクスワーゲンで充電インフラの責任者を務めるMichel Vlahov氏

 Vlahov氏は冒頭、MEBを用いるEVファミリー「ID.(アイディ.)」は、「手の届く価格」「十分な走行距離」「充電をどこでも行なえる」を念頭に開発を進めていることについて触れるとともに、「今後、EVの充電はスマートフォンと同じくらい自然に行なえるようになります。フォルクスワーゲンではEVサービス、インフラ、充電のエレメントがすべてシームレスに統合することを目的にしており、フォルクスワーゲンでは独自の充電システムの構築をソフトウェア、ハードウェアの両面から目指しています」。

「われわれの多くが1日あたり35km程度しか走っておらず、1週間に1度充電すればよい計算になります。仮に1日あたり50kmとしても1週間で350km、それでも1週間に1度の家庭などでの普通充電でよいでしょう。しかし長距離を走る場合は急速充電が必要になりますが、それも15分程度のコーヒー休憩中にできます。もしくは30分のお昼休みなどでカバーできます」とコメント。また、IONITYが今後展開していく高速充電のHPC(ハイパワーチャージング)を用いることで、これまで700kmを走行するのに充電時間に120分必要(50kWの急速充電器で2回充電)だったところ、35分(125kWの急速充電器で1回)で走行できるようになることを紹介。

 また、ID.の充電に用いる手ごろな価格の家庭用充電システム「Volks-Wallbox(フォルクスウォールボックス)」についても触れ、「ID.を導入するマーケットにはウォールボックスを提供します。ベーシックなウォールボックスは11kWのチャージングキャパを持っており、価格は300ユーロ+設置費です。また、充電に加えて診断機能などが備わるものもあり、こちらは500~600ユーロ+設置費になります。さらに自宅で急速充電を行ないたい場合、ハイエンドモデル(22kW)のものもあり、これは例えば日本のお客さまには非常に需要が高いと理解しています」と解説。

 加えて「一例としてID.が60kWhのバッテリーを搭載しているとします。私は家族4人なのですが、だいたい毎日10kWhほど電力を消費しています。ということは、ID.が1台あれば5日間の電力をまかなうことができ、その上で60kmほどクルマを走らせることができます。われわれも自宅におけるマネージメントシステムのソリューションの提供を考えています。ドイツでは、100万台のEVが増えたとしても電気の消費量は0.5%しか増えないという試算もあります。なので問題はエネルギーがないということではなく、正しい方向でエネルギーを分配すること、正しい形でエネルギー管理を広範囲で行なうこと。必要なところに必要なエネルギーを届けることが大事なのです」と解説を行なった。

Michel Vlahov氏のプレゼンテーション資料

 そのほか、フォルクスワーゲンでは現在1000基の充電ステーションを従業員向けの駐車場に用意しており、2020年までにこれを5000基まで増やすこと、現在欧州で4000の正規ディーラーがあるうち、2020年までに全ディーラーに2基のウォールボックスを設置する予定であることが紹介されるとともに、「ドイツでは2020年までに20万基の充電設備が必要となっていますが、充電ビジネスは非常に競争が高くなっています。新しい会社も設立されていますし、フォルクスワーゲンも参入しています。充電ステーションは増えている段階ですがまだまだ不十分で、2025年までにもっと必要であることが分かっています」。

「これを下支えするサービスも必要で、われわれは『We Charge』というサービスを用意しました。これによりナビゲーションシステムによる適切な充電ステーションへの誘導などを行なうことができ、すでに欧州全域の5万5000基の充電ステーションの情報を確立しています」とアピール。さらに今後の展開として充電ステーションにカードをかざし、クルマに充電コネクターを挿すことで料金の支払いもできる「Plug&Charge」、自動駐車システムを用いて駐車場の入り口にクルマを置けば車両が充電ポイントに自動で行き、充電が完了したら駐車スペースに自動で移動する機能を“近い将来”導入することなどが紹介された。

Plug&Chargeや自動駐車システムなどについて

現行の急速充電器よりも7倍早いHPC

IONITYのPaul Entwistle氏

 一方、IONITYのPaul Entwistle氏による欧州地域における充電設備に関するプレゼンテーションでは、IONITYが2020年までにHPCを高速道路沿いの400か所に導入する予定であることが語られるとともに、「HPCは最大で350kWの出力を誇り、テスラスーパーチャージャーを含めて現行の急速充電器よりも7倍ほど早い」「欧州19か国で(予定している400か所のうち)すでに300か所との契約が済んでいる」「ドイツでは2019年末までに95のHPCの設置を完了する」ことを報告。また、すでにドイツ、デンマーク、フランス、スイス、オーストリアなど9か所のHPCが開設していることが紹介された。

2020年までに高速道路沿いの400か所に導入される予定のHPC
Paul Entwistle氏のプレゼンテーション資料