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【JAF鈴鹿グランプリ 2018】チャンピオン山本尚貴選手&チームタイトル近藤真彦監督(コンドーレーシング)記者会見

2018年10月26日~28日 開催

最終戦で優勝。自身2度目のスーパーフォーミュラチャンピオンを獲得した山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14)

 三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催された「2018年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第17回JAF鈴鹿グランプリ」。10月28日の決勝レースでは山本尚貴選手(16号車 TEAM MUGEN SF14)が優勝。自身2度目のスーパーフォーミュラチャンピオンを獲得した。

 レース終了後には、最終戦で優勝した山本尚貴選手、山本選手の所属チーム(チーム無限)の手塚長孝監督、2位に入ったニック・キャシディ選手、3位に入った山下健太選手がレースを振り返る最終戦トップ3会見が行なわれた。

 また、続けて年間チャンピオンによる会見が行なわれ、ドライバータイトルを獲得した山本尚貴選手、チームタイトルを獲得したコンドーレーシングの近藤真彦監督が登壇して、やはりシーズンを振り返った。

チームタイトルを獲得したコンドーレーシング

 この中で2013年に続き2度目の年間チャンピオンに輝いた山本尚貴選手は、2017年チームメイトのピエール・ガスリー選手に比べて結果が出せないという歯車がかみ合わない1年を送ったことが、2018年の好成績につながったと述べた。

最終戦のトップ3会見。山本尚貴選手「レベルの高い選手と真のフォーミュラカーレースを見せることができた」

――それぞれの今のお気持ちを

山本尚貴選手

山本選手:今の気持ちですか、気持ちわるいです(苦笑)(筆者注:会見の前に行なわれたシーズンエンドのスパークリングファイトで、他のドライバーにお酒をかけられたことでお酒に弱い山本選手はやや体調不良になっていた)。話したいことは沢山あるけど、ホンダを初め、チームの関係者すべてがこの結果を獲得すべく頑張ってくれたので、その努力に報いる走りができた、皆に感謝したい。ニック・キャシディ選手とのチャンピオン争いがこういう形になるとは思い描いていなかったが、速い者がチャンピオンになるという真のフォーミュラカーレースを見せることができた。石浦選手もそうだし、レベルの高い選手とレースができたことを心から感謝したい。

手塚長孝監督(チーム無限)

手塚監督:流れというものか、金曜から日曜までの流れ、それが結果に繋がった。その流れを作ったのは山本尚貴自身。すべて彼のコントロールのもとに、チームスタッフが100%やりきった、それが勝因。ニック・キャシディ選手とコンドーレーシングはとても強かった。コンドーレーシングさんにチームタイトルにおめでとうと言いたい。チーム無限も来年はチームタイトルを目指して頑張っていきたい。最後までドキドキしたけど、いいレースをみせることができた。

ニック・キャシディ選手

キャシディ選手:山本選手は本当にすごかった、おめでとう。彼との素晴らしいファイトもあったし、2年目で、ここまで来ることができたのは満足している、F3時代には彼が憧れの存在だったから。最後までチャンスはあると思って、予選レースでもベストをつくしてきた。1ポイント差で獲れなかったのは残念だけど。

山下健太選手

山下選手:山本選手おめでとうございます、お酒がだめなのに(セレモニーのスパークリングファイトで)かけちゃってすみませんでした(苦笑)。自分はチャンピオンとは関係ないレースで、山本選手の前に出るのが仕事だったけど、近づけないぐらい山本選手のスタートがよかった。絶対ついて行くと走ったのだが、自分のペースがよくなくて、ソフトもタレてしまい、ミディアムタイヤのペースもよくなく、自分としてはあまりいいレースではなかった。ただ、表彰台は初めてだったので、とりあえずはよかったが、あまり満足ができるレースではなかった。

――今日は8分間のウォームアップでもあまりタイムを出しに行っていなかったが、それだけ決まっていたのか?

山本選手:クルマの調子は、朝のフリー走行で確認してこれでいけると思っていた。ウォームアップにはエンジニアが変えたいというところだったので、信頼しているので変えてくださいといい、その8分間は何の確認もせず、タイヤのウォームアップとソソフトタイヤでのバイト(クラッチのつながるポイント)の確認などを行なっていた。タイヤも熱入れから次使うまで30分、QFで使って冷え切ったタイヤよりいいと考えて、ミディアムを転がして熱入れを行なった。

――山本選手はソフトタイヤは素晴らしかったが、ミディアムを使っているニックと徐々にクロスしてきて、ミディアムではやや苦しそうだったが?

山本選手:ブレーキの温度管理がシビアだった。ブレーキの問題だけでなく、それが原因になってタイヤの内圧が上下してしまっていた。例えば、左側のブレーキ温度が低くて、左側のタイヤの内圧が上がらなかった。ブレーキ温度を上げようとそういう運転をしていたのだが、そうすると今度は右側の温度があがってしまい内圧が上がるということが起きて、バランスが狂ってしまっていた。後半のニック選手に追い上げられていた時も42秒台前半で走っていたらブレーキ温度があがってしまって、シケインでロックしてしまったのはそれが理由。ソフトの方がバランスがよかったので、ミディアムの時だけ調整すればいいと思っていたのだけど、ブレーキの問題などもあってタイムを上げることができなかった。

――山本選手はどの段階で勝ったと思ったか?

山本選手:正直OT(オーバーテイクボタン)も5つ残していたし、よほどのタイム差でない限りは真後ろまで来るのは難しいだろうと思っていた。残り2周でシケインでロックするとは思っていなかったが、スプーン立ち上がりの差を見て、トップでチェッカーを受けられるなと思った。

――キャシディ選手に、ミディアムタイヤで行くと決めたのは誰か?また、29周に入っているがその選択の理由は?

キャシディ選手:決めたのは自分、エンジニアはソフトで行こうと言っていた。でも練習走行でミディアムタイヤはいい感じだったし、ソフトと同じタイムで行けるからミディアムでいってみようと思った。自分よりも後ろもミディアムなら、ソフトに履き替えたときに引っかかってしまうことは懸念していたので、他のクルマの状況を常に確認していた。29周で入った理由は、他の選手のタイヤの持ちなどを参考に決めた。ミディアムはわるくなかったので、ソフトではかなり伸ばすことができるので、このあたりだろうと。今回のレースはトラックポジションが重要で、あまり早く入っても前に出ることは難しかったのもある。

――S字でスライドしたように見えたがなぜか、また諦めたタイミングは?

キャシディ選手:メインストレートでギャップを確認していたが、S字に来て滑りやすい何かがあって、スライドした後タイヤを掃除するのに5つのコーナーかかってしまった。常にベストを尽くしたのだが、今回はストレートでの差が大きく、オーバーテイクは難しかった。

年間チャンピオン会見。昨年苦しい思いをしたことが今シーズンの好結果につながったと山本尚貴選手

――お2人の今の気持ちを

近藤真彦監督(コンドーレーシング)

近藤監督:ここに来るまで20年かかったけど、やっと他のチームと肩を並べられるぐらいまできたか、とそれが率直な気持ち。夢みたいと言えば夢のようで、ファンの方とチームに感謝したい。チームの人事であったり様々なチーム改革に取り組んできて、ここ2~3年でその成果が出たのではないか。2人の若いドライバーをトヨタさんからお預かりして2年目で、結果がでるとは思っていなかった。想像以上に速いドライバー2人で、チームのメカニックもそれに引きずられた成長した。

山本尚貴選手

山本選手:2回目のチャンピオンということだが、2013年に初めて獲った時は、最終戦で今回と同じような状況だったけど、ロイクとアンドレが欠場した状況で獲得したチャンピオンということで、真のチャンピオンではないなという思いが自分の中にもずっとあった。今年もオートポリスが1戦中止になったが、1年間ライバルと戦った中で獲ったチャンピオンで、1回目よりも今回の方が重みと実感があるなというのが正直なところ。最終戦でニックが強敵となり、最後ああいう秒差で決着がついたというので、よきライバルがいるから盛り上がった。志を高く持って、ライバルに勝ちたいと思ってやってきた、いいシーズンを過ごしたなと思っている。

――どの時点で負けを覚悟したか?またメカニックの方を見てちょっとうるっときていたのではないか?

近藤監督:僕もレースは長くやってきているので、残り5ラップの時点である程度チェッカーは見えていた。山本選手は今シーズン3勝目、3勝されたらしょうがないというのはある。ニックとうちのマネージャとも話したんだが、絶好調と言ってもよかったオートポリスがなくなったことと鈴鹿のボーナスポイントがでかいないというのはある。さらに精進してチャンピオンが狙えるチームを作っていきたい。(うるっとしていたのではないか?という質問に対して)モニターを見ていたので泣かなかったんだけど、振り向いたらメカニックが泣いていて、彼らには長い間待たせてしまったので、ちょっとほろっと来た(笑)。泣くのはドライバーズタイトルを獲るまでとっておきたい。

――今シーズン開幕戦と菅生で2連勝して、そこから少しつらくてというお話しだったが、どのようにつらかったのか?

山本選手:得意な鈴鹿で優勝し、菅生で2勝目ができたので、これでチャンピオン争いにいられるかというのはあった。自分でも解っていたが、鈴鹿以外で結果が残っていないというのがあったので、最終戦までポイントを重ねてと思っていたのが失敗で、鈴鹿と菅生以外では3点しか取っていない状況でこの鈴鹿に来た。今回も自分の気持ちを出し過ぎると失敗すると思ったので、100%行くところを80~90%ぐらいで走ってと抑えてやっていた。この鈴鹿で金曜日の会見やドラミなどでニックにあったけど、ニックもあまり意識せずベストを尽くすと言っていたが、やはりタイトルは意識していると感じた。例えばドラミで彼が優勝したらドーナッツターンをしていいかときいているのを「絶対にさせてやるものか」と思っていた。そういうことが自分の方が絶対勝ちたいという想いを持てば勝てるんじゃないか、そういう気持ちにさせてくれたことがこのチャンピオンに繋がった。ニックや近藤監督、そしてコンドーレーシングの関係者も祝福してくれて、そういう素晴らしいライバルと戦うことができたと感じている。

――ニックはチャンピオンを獲りたいという強い気持ちがあったか?またソフトではなくミディアムを彼が選んだと言っていたが、それを認めたのはなぜか?

近藤監督:昨日夜食事を一緒にする機会があって、そこにご家族も来ていて冗談でチャンピオン、チャンピオンと言っていた(笑)。でも彼はすごく貪欲で、F3までもそういうスタイルで来たのだと思う。来年もチャンピオンを狙いに行きたい。タイヤに関してはソフトがどこまでいけるか解らなかった。これまでのレースでは結果ソフトも持ってしまうというレースが多かったけど、今回はちょっと不安があった。データを見ても何が何でもソフトだというほどには偏っていなかった。そして今回は前にいる健太(山下健太選手)がいいレースをしていて、健太はニックのためにレースをするという姿勢をみせてくれた。健太のことを褒めてあげてほしい。

――山本選手はドーナツターンはしなかったのか?

山本選手:自分の性格的に絶対やってやるとはならなかった。SF14の最後のレースということで、セレモニーもあったので謙虚にいようと思った。

――今シーズン一番苦しかった時期は?

山本選手:開幕戦と第3戦に勝って中盤は楽ってことはなかったが、去年の苦しかったことに比べればなんてことなかった。去年の辛い思いがあって、それでも腐らずにやってきたことが、今につながっている。