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1人で2台の自動運転車を監視する世界初の公道実証実験。経産省と国交省が永平寺町で公開

2018年11月19日 開催

 国土交通省と経済産業省は11月19日、1名の遠隔監視・操作者が、2台の自動運転車両を遠隔操作・監視するという世界初の公道実証実験を福井県永平寺町において開始。同日報道関係者に実験車両などを公開する説明会を開催した。

 将来的に少人数で複数台の自動運転車両を運用するための遠隔型自動運転システムを想定した実証実験で、1名の遠隔監視・操作者が2台の自動運転車両を遠隔操作・監視することによる監視者の負担や実現可能性などを実証実験により検証していく試み。

 これまで日本では、自動運転車両の規制をかけない公道実験では自動運転のレベルに関わらず、車両の運転席あるいは遠隔の運転席に代わる場所にドライバーを置いて実験を行なうことが必要とされ、遠隔ドライバー1名が運用する自動運手車両は1台までとされていた。今回の実証実験では、遠隔ドライバー1名が2台の車両を運用する遠隔型自動運転の基準緩和認定を受けて実施される。

 実験は、京福電気鉄道の永平寺線跡地にある「永平寺参ろーど」の南側一部区間(荒谷から志比の約2km)を走路として使用。遠隔監視・操作装置などを「永平寺町浄化センター」内に設置した。

京福電気鉄道の永平寺線跡地にある永平寺参ろーど
「永平寺町浄化センター」内に設置した遠隔監視・操作装置

 自動運転小型電動カートは、ヤマハ発動機が開発したゴルフカートをベースに公道走行を可能とした車両を使い、産総研(産業技術総合研究所)が遠隔型自動運転を可能とした実験車両に改造した。

実験車両の自動運転小型電動カート

 実験車両は、自動運転レベル4相当の技術を搭載した車両として、走路に埋め込んだ電磁誘導線を用いて自動操舵(そうだ)機能、RFID(Radio Frequency Identifier)タグによる速度制御や位置補正機能、ステレオビジョンやレーザーレンジファインダーによる障害物検知と自動ブレーキ機能、車内外のカメラと車内のマイクによる遠隔でのモニター機能などを備える。また、慶應大SFC研の開発による遠隔での車両の状態や位置の把握や、運転操作を可能とする遠隔監視・操作装置を通信でつなぐことで遠隔型自動走行を実現させた。

実験車両は電磁誘導線を埋め込んだ走路を走行する
遠隔監視・操作者と位置付けられる1名で複数台の自動運転車両を監視することの実現可能性を検証する
実証実験ではドライバー席に人が座るものの、保安要員との位置付け

 11月19日に開催された説明会には、経済産業大臣政務官 滝波宏文氏、永平寺町長 河合永充氏、経済産業省 製造産業局 自動走行推進室長 垣見直彦氏、国土交通省 自動車局技術政策課 自動運転戦略官 平澤崇裕氏、産業技術総合研究所 端末交通システム研究ラボ長 加藤晋氏が出席して、実証実験の狙いなどについて話した。

経済産業大臣政務官 滝波宏文氏
永平寺町長 河合永充氏
経済産業省 製造産業局 自動走行推進室長 垣見直彦氏
国土交通省 自動車局技術政策課 自動運転戦略官 平澤崇裕氏

 自動運転車両を遠隔監視、運転するという今回の実証実験について、経済産業省 製造産業局 自動走行推進室長 垣見直彦氏は「遠隔で運転するというのは昨年、警察庁のほうで基準を作っていただき、現行の道路交通法の中でできるのは、車両の中にドライバーがいなくても車両の外にドライバーがいればよいというジュネーブ条約の解釈を踏まえて行なっているもの。これを、1(人):2(クルマ)、1:3に広げていくのが1つの流れ。それとは別にジュネーブ条約自体も、徐々にレベル3、レベル4(の自動運転)も認めていこうという方向もありますので、今回の実証実験で得られた成果を使っていくのが重要です。政府では、自動運転については安全安心な道路交通社会を作っていくのが最重要で、自動運転技術をどのように社会に実装していくのかが重要と考えております。1:1ではなかなか社会実装が進まないので、究極的にはエレベーターのように相当少ない人数で多くのエレベーターが運用されておりますので、自動運転もそのようになっていけばいい」との考えを述べた。

 今回の実証実験に採用されている遠隔型自動運転システムについては、警察庁が策定した「1名の遠隔監視・操作者が複数台の実験車両を走行させる場合の審査の基準」に沿って安全対策が行なわれた。具体的には、2台の自動運転車が走行中、遠隔ドライバーがそのうち1台を遠隔から操作する場合は、もう1台の自動運転車両の監視・操作が困難になることを踏まえて、自動的に車両を安全に停止させて操作後に2台を同時に再発進できる機能などを追加している。

産業技術総合研究所 端末交通システム研究ラボ長 加藤晋氏

 実証実験を受託している産業技術総合研究所 端末交通システム研究ラボ長 加藤晋氏は「これまで遠隔で監視、操縦することで基準緩和を求める時に1名が1台ということで、1名のドライバーが責任を持って走行の監視役、何かあった場合の操作を行なう事が必要でした。それが今回は1:2ということで、1名が2台を見てどういったことができるのかというのが今回の課題」と、実験の狙いを話した。

 実証実験は監視者を必要とする自動運転システムを運用するシナリオに沿ったもので、監視者は車両の走行画面や車内の様子などをモニターで監視しなければならない。将来的に複数台を監視する場合、監視者にどのような負担があるのか、どのような監視体制が必要なのかを見るのが今回の実証実験の狙いとなる。

 加藤氏は「(この実証実験とは別に)われわれが行なっている長期実証では地元の方々に運用していただいております。このなかで、安全性の問題、機器の不具合への対応の問題が出てきます。今回の1:2の走行に関しても、それらの知見を生かして、より複数台の実験、少人数による監視役がどのように実現できるのか、コストや事業性を見ていきたい」との考えを述べた。