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ホンダ、「HondaJet Elite」日本で初号機引渡し。共同所有者の千葉功太郎氏やホリエモンらがHondaJetへの思いを語るファーストデリバリーセレモニー

2018年12月20日 開催

HondaJetの日本での引き渡しを開始

 本田技研工業の航空機事業子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は12月20日、国土交通省 航空局から12月7日に型式証明を取得した「HondaJet Elite」の日本における初号機を引き渡し式を行なった。

 HondaJet Eliteの日本での受注は、6月より開始して現在までに10機を超えるオーダーがあるという。HACIでは、日本での販売については丸紅エアロスペースを「HondaJet Japan」に指定し、販売・整備・機体の運用サポートなどの各種サービスを提供する。

 羽田空港(東京国際空港)内にて開催された式典には、国土交通省 航空局長の蝦名邦晴氏、HACI 社長 藤野道格氏、日本のディーラーである「HondaJet Japan」チーフエグゼクティブ 遠矢源太郎氏が出席。日本での最初の顧客となる千葉功太郎氏に加えて、共同所有者となる堀江貴文氏、山岸広太郎氏が登壇した。

国土交通省 航空局長の蝦名邦晴氏(左)からHACI 社長 藤野道格氏(右)に型式証明書が手渡された

 式典では、蝦名航空局長から藤野HACI社長に型式証明書が授与されたあと、最新型のHondaJet Eliteを引き渡す「ファーストデリバリーセレモニー」が開催され、藤野氏から千葉氏にHondaJet Eliteのキーが手渡された。

フロント
サイド
エンジンを主翼の上面にマウントすることで広いキャビンスペースを実現
コックピット周辺
主翼
乗降口
前輪
主脚
HondaJetのキーを収めた額縁
HACI 社長 藤野道格氏(左)と日本での最初の顧客となる千葉功太郎氏(右)のフォトセッション

日本のビジネスジェット市場で新たな価値の創造を目指す

ホンダ エアクラフト カンパニー 社長 藤野道格氏

 会場では藤野氏によるプレゼンテーションも行なわれ、HondaJetの製品特徴を示すとともに、「HondaJet、HondaJet Eliteは北米、ヨーロッパ、中南米、東南アジアなどで販売運用されており、2017年に続き、2018年上半期において、デリバリー数世界No.1を達成し世界のお客さまから好評を得ています。今回、日本での型式証明を取得して日本で初のお客さまにHondaJet Eliteを納入することになり、2018年は大変重要な1年になりました」と報告。さらに、日本におけるビジネスジェット市場の可能性について語った。

HondaJetは2017年の世界最多デリバリーに続き、2018年上半期においてデリバリー数世界No.1を達成

 日本におけるビジネスジェット市場について、藤野氏は「日本で使われるビジネスジェット機は官民含めても90機程度で、民間で使われるのはその半数以下でしかありません。その数は欧米と比べて非常に少ない状況です。一方で、日本の人口、富裕の数、地方と地方を直接結ぶ効率的な移動手段の需要、全国各地にある空港の有効利用、海外からのインバウンド観光客の増加などからみても、これからのビジネスジェット機の潜在的な需要は十分にあると考えています」との考えを述べた。

藤野氏のプレゼンテーション資料

 藤野氏は「欧米では、個人や企業ユーザー、エアラインと提携したサービスなど、あらゆる場面でビジネスジェットが使用されています。個人ユーザーによる使用方法の1例として、他の州で行なわれている会議に出席し、ビジネスを終えて夕方には自宅に戻り、家族との時間を過ごすような使い方です。移動時間を短縮して、1日の時間を有意義に使用してライフスタイルを変えていくことができます。企業ユーザーの場合も、本社から各地方の工場や支店を数か所回る場合、エアラインを使った場合には2~3日かかる出張を、1日で終えることができます。これによりビジネスの生産性や効率を大幅に向上させることができます」との事例を紹介。

 さらに「ビジネスジェット普及のための取り組みとして、エアラインと連携したフィーダーサービスがあります。3月にANAホールディングスと戦略的なパートナーシップを締結して、国際便から直接ビジネスジェットに乗り継いで最終目的地まで移動するという使い方を提案して、効率的で快適な移動手段を提供するサービスも開始いたしました。HondaJetで日本のビジネスジェット市場に新たな価値、スタンダードを創造して、日本においても欧米並みに多くの人に、HondaJetによる移動の利便性、快適性、楽しさを体験していただきたいと思っています」との意気込みを語った。

 プレゼンテーションの締めくくりに、藤野氏は「HondaJetを日本の空で飛ばすことは、われわれの悲願でした。ホンダの航空機事業における大きなマイルストーンを達成でき、本当に嬉しく思います。日本においてもより多くの方にご利用いただいて、皆さまの生活の可能性の幅を広げていきたい、そして日本におけるビジネスジェットの普及、さらには新しい交通システムの創造を目指していきたいと思います」と話した。

藤野氏のプレゼンテーション資料
日本での最初の顧客となる千葉功太郎氏
千葉功太郎氏が見て購入を決断したというTVCMを放映した

HondaJet Eliteの試乗体験を語った千葉功太郎氏

千葉功太郎氏

 日本での最初の顧客となる千葉功太郎氏については、藤野氏は「日本の空、General Aviationの改革に強い情熱を持たれている方」と話すとともに「ドローンのスタートアップに特化した投資ファンドを設立し、国内外でドローンビジネスに関連するベンチャー企業を支援して、これから日本に最大級のドローン産業とエアコミュニティー社会を創造するという強い意気込みを持って活躍されている方。そして、HondaJetで日本の各地をつなぎ、都市の空はドローンを使うという壮大な構想を抱いている」と紹介した。

 ステージに登壇した千葉氏は、自身の取り組みを紹介するとともに、今回の引き渡し式を前に米国でHondaJet Eliteの助手席に乗ったといい、HondaJet Eliteに乗って感じた魅力を紹介した。

 千葉氏は「まずは離陸です。機長がフルスロットルにするとスポーツカーのゼロヨン加速のように約200km/hで離陸します。驚いたのはエンジンが始動しても音が聞こえず大変静かで、一旦離陸するとスムーズでパワフルに上昇していきます。上昇速度は1分間に4000フィート(約1300m)が標準で、自分の練習機では1分間に約500フィートくらいなので、その違いは圧倒的。最高高度の4万3000フィート(約1万3000m)に達すると、宇宙が感じられる青空が広がっていて下には真っ白な雲海が広がっています。これが個人で所有できるエアモビリティで感じられる世界なのかと感動しました」と話した。

千葉功太郎氏がHondaJet Eliteを試乗体験する様子が紹介された
離陸の様子

 続けて、千葉氏は「もう1つ見ていただきたいのは、便利機能の1つで自分の機体とまわりの飛行機の高度の差を確認できること。実際に他のエアラインとすれ違う時2000フィート差があっても怖いです。エアラインはだいたい3万5000~3万9000フィートを飛行しておりますが、HondaJetは4万3000フィートを飛行できるので、通常のエアラインの航路を飛行してもぶつかりようのない上の世界を飛行できるので、この安心感は乗って初めて分かったこと」と話した。

自分の機体とまわりの飛行機の高度の差を確認できる表示機能

 千葉氏は「最後は着陸の安定性です。ほとんどオートパイロットなのですが、最後着陸をするときは機長がマニュアルに戻して着陸します。普通の小型機はマニュアルにした瞬間に揺れ始めますが、まるでレールの上を走るように滑走路に向かって降りていき安全に着陸できる。こんな小さな飛行機なのに、安定性、静粛性、高高度の飛行、これだけ詰まっているのは藤野さんが30年かけてチームとともに作り上げてきた、こだわりのかたまりなのではないかと感じました」と話した。

着陸の様子

 続いて行なわれた千葉氏のプレゼンテーションでは、日本においても一般の人が航空機を所有して運用する、自家用車のように飛行機を使用する「General Aviation」の必要性を説いた。千葉氏は「空港を自由に離発着したり、駐機場所の問題、パイロットを養成するための学校、練習機関、今日これから利用したいといったときの機動性、(そういった要素が課題となり)日本ではGeneral Aviationが困難であること。日本の空をオープン化していきたい、そんな社会をお手伝いをできないかと、まさに今日、買うということと皆さまの前でお話する決断をしました」と今回の機体購入についての狙いを話した。

 また、HondaJet Eliteを共同所有することについて、千葉氏は「General Aviationの文化を作るには仲間が必要」と話し、続けて「飛行機を生活の中で気軽に使ってみる、そういったことをチームの仲間たちが情報発信をしていくことが、日本の空をオープン化していく第1步につながるのではないか」との考えを示した。さらに個人の夢として「10年以内にたくさんのドローンや空を飛ぶクルマが飛び交う社会を実現したい」との意気込みを述べた。

自身もパイロットを目指して教習を受けているという
共同所有の狙いを紹介するスライド

ホリエモンがHondaJetのインパクトについて語ったトークセッション

 会場では、HACI 社長の藤野氏、HondaJet Japan チーフエグゼクティブの遠矢源太郎氏、千葉氏との共同所有者となる堀江貴文氏、山岸広太郎氏も加わったトークセッションが開催された。その中で、堀江氏がHondaJetが成し遂げたインパクトについて、自身の思いを話した。

堀江貴文氏

 HondaJetの試乗体験をしたという堀江氏は「けっこうビジネスジェットには乗っている方で、最近、僕らの社長仲間もビジネスジェットを買われていて、僕もまた乗る機会も増えています。そういった従来型の機体と比べて、エンジンのマウントが主翼の上に乗って、(これにより)キャビンが広くなっているのがすばらしいと思いました。このクラスの機体はキャビンがメチャクチャ狭くて、ガルフストリームのような大型のビジネスジェットと比肩するくらいのキャビンの快適さがあります。そこが乗る方としては“なんじゃこりゃ”と思うくらいすごい快適。それこそホンダ シビックがアメリカの市場に殴り込みをかけたくらい、バカでかいアメ車しかない時代にシビックで革命を起こした、あのぐらいのインパクトがある機体だなと思いました」などと印象を語った。

 また、HondaJet開発の意義について、堀江氏は「日本はけっこう空港が整備されているんです。戦前は航空大国で、日本、ドイツ、アメリカと3大航空大国だったのですが、戦争に負けたので航空機の設計製造が禁止されて、元々は航空機の設計製造をやっていた人たちが、自動車産業にいったり、一部はロケットにいったりしたわけです。僕もロケット開発をやっていて思うのが、航空機に関する技術の断絶が大きいなと思っているんです。航空機の重要な技術がレシプロからジェットに変わるときに日本は航空機の製造が禁止されて、圧倒的な差ができてしまった。それをHondaJetでやっと取り戻した、歴史的な出来事だと思います。FAAの型式証明を取るのもノウハウの塊ですし、書類を作るのもノウハウで皆さんご苦労されたと思いますが、戦後からやっと日本の空を取り戻した記念すべき日だと思います」との思いを話した。