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「東京モーターショー 2019」で国内初開催されるFAI公認ドローンレース概要説明会
国内トップクラスのドローンレーサー3選手がデモレース
2019年8月26日 20:57
- 2019年8月26日 開催
Drone Tokyo 2019 Racing&Conference実行委員会は、10月24日~11月4日に東京 お台場で行なわれる「第46回 東京モーターショー 2019」内で初開催する国際的ドローンレース・カンファレンス「Drone Tokyo 2019 Racing&Conference(DTRC2019)」の概要説明会を都内で実施した。
DTRC2019はスカイスポーツの国際組織である「FAI(国際航空連盟)」が公認を予定して日本で初開催されるドローンレース。東京モーターショー 2019の「有明エリア」に設置される「DRIVE PARK」(TFTビル横駐車場)で行なわれるレースは、日本で初めてFAIの規定に準拠したドローンレースとなる。なお、DTRC2019実行委員会では、公式Webサイトで8月26日21時からレース参加者の募集を開始する。
説明会では最初に、DTRC2019実行委員会 副実行委員長であり、ホンダ エアクラフト カンパニーの小型ジェット機「HondaJet Elite」国内初号機の共同所有者としても知られる千葉功太郎氏が登壇。エアモビリティ社会の動向などについて解説した。
千葉氏は東京モーターショーでドローンレースを行なう意義について、「FAI公認のドローン国際大会を東京都内で開催し、“真のドローンレース”を開催することで、ルールと技術の追求につながる」と説明。また、千葉氏は自身が実行委員会の副実行委員長を務めていることから、FIA(国際自動車連盟)の国内B級ライセンスを取得。さらにDTRC2019の開催までに国内A級ライセンスを取得する予定であるとコメントした。
これは長い歴史を持つモータースポーツのライセンス講習を受講することにより、レースによってクルマの技術やレギュレーションなどが磨き上げられてきた歴史を体感。これまでレースをTV観戦することはあったが、ライセンスを取得する中で、レースの運営側、エントリー側のシステムが長い歴史によって洗練されていると実感したという。これをレースを通じてドローン業界にも持ち込むことで、クルマと同じようにドローンの技術やレギュレーションの進化を牽引していくと考えているという。
また、千葉氏はドローンなどのエアモビリティは今後の社会実装が重要になり、DTRC2019の開催は単純なエンターテインメントに止まらず、日本のエアモビリティが産業としてスタートしていくきっかけになると説明。自身が共同代表を務める投資ファンド「Drone Fund」で進める2つのファンドで計68億円を集め、日本を取り巻く「人口問題」「インフラ老朽化問題」「気候変動問題」「自然災害」などの問題を解決していくため、大小さまざまなドローンの開発などに投資を行なっていると説明。ドローンの活用イメージや実際の開発状況などが紹介された。
千葉氏は日本政府の取り組みについても紹介。2018年8月から「空の移動革命に向けた官民協議会」などさまざまな会議が行なわれ、2019年6月に行なわれた政府の成長戦略に向けた閣議決定に「2022年度に有人地帯における目視外飛行によるサービス実現を目指す(レベル4)」「2023年度に空飛ぶクルマ(エアモビリティ)の事業化を目指す」という2項目が含まれたと説明。これは先進国では初の事例で、具体的な年度や実現内容を明記していることは非常に大きな意義があるとした。
日本は安定志向でさまざまな意思決定が遅いと言われているが、エアモビリティの分野ではリスクを負いつつチャレンジを行なっていると語り、米国や欧州などに遅れを取っていないとアピール。日本はこれまで自動車産業で大きな成功を収めてきたが、エアモビリティも同じように世界に誇る産業になっていく分野だとの考えを示した。そのためにもDTRC2019でFAI公認のドローンレースを開催し、ドローンの技術とルールを徹底的に磨き上げることがドローンの社会実装に向けた第一歩になると語ってプレゼンテーションを締めくくった。
ドローンレースは年齢や性別なども影響のない無差別級の競技
続いてDTRC2019実行委員会 副実行委員長であり、このイベントの発起人である小松周平氏がDTRC2019の詳細について説明。
先の千葉氏のプレゼンテーションでも指摘されたように、DTRC2019の実施でドローン技術を磨き、ルールについて洗練させてレースから社会実装されるエアモビリティの制度作りもつながっていくと解説。DTRC2019では「運行管理システム」「仮想現実空間」の2つをセットにして来場者に紹介していきたいとした。
「運行管理システム」では、小松氏が代表取締役会長を務めるA.L.I.Technologiesでは誰でも無償で利用できるドローンなどの運行管理システムを年内に発表する予定で、その運行管理システムをDTRC2019で運用して、位置情報の捕捉などについて紹介するという。
「仮想現実空間」については、地面の上に用意される道路とは異なり、エアモビリティでは物理的に進行ルートを規定することが難しい。将来的に複数のエアモビリティが空を利用する際にバラバラなルートを想定していると交通整理が効かなくなってしまう恐れがある。小松氏はこの問題の解決に向け、3DCGで利用されるレンダリングの技術を活用。モニター上にエアモビリティが実際の道路の上を走っているように表現するため、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を組み合わせた映像技術が有効になるだろうとした。
また、ドローンレースはほかの競技と比べてハンデキャップのある人の参加が非常に容易であることを説明。車いすを利用する人でも健常者と対等に競い合えるほか、年齢や性別などによる体格差も影響のない無差別級の競技であるとした。
DTRC2019がドローンの社会実装に向けた第一歩になるためには、より多くの人に知ってもらうことも非常に重要だと小松氏は語り、東京モーターショー 2019での開催によって数千人規模の来場を想定していることに加え、イベントを応援するアンバサダーとして女性アイドルグループ「日向坂46」を起用。エンターテインメント性も高めていきたいとした。
DTRC2019開催はエアモビリティの歴史的な分岐点になる
DTRC2019実行委員会 実行委員長で、自由民主党 衆議院議員 ドローン推進議員連盟PT 座長の今枝宗一郎氏は、以前は日本のドローン政策は明確なロードマップもないような状況だったが、4~5年前から活動を始めたドローン推進議員連盟のプロジェクトチームで積極的な活動をスタート。民間の開発力などと合わせ、しっかりと制度設計していけば十分に世界に冠たる技術に育てていくことが可能なポテンシャルがあると認識。実際に自分たちが用意しているロードマップでも、計画を前倒しにしながら進捗していると語った。
今回のDTRC2019開催が、十数年後にエアモビリティが一般化した時に振り返って、6月の閣議決定と同じように歴史的な分岐点になると確信していると力説。多くの人に歴史的な分岐点となるであろうDTRC2019に参加、観戦してほしいとアピールした。
国内トップクラスのドローンレーサー3選手によるデモレース
説明会の後半では、実際にドローンレースがどんなものであるかを紹介するため、国内トップクラスのドローンレーサー3選手によるデモレースが行なわれた。
集まったのはいずれもドローンレースで優勝実績などを持つ有名選手。ラジコンヘリの大会でも数々の優勝実績を誇る中尾侑資選手に加え、子育てをしながらドローンレースにも参加する女性選手の白石麻衣選手、JAPAN DRONE LEAGUE 2019の総合ランキングで暫定1位となっている11歳の小学生プロドローンレーサーの上関風雅選手という3選手で、ドローンレースが体格などを問わず活躍できる競技であることを示していた。
デモレースは発表会場をそのまま使ったコンパクトなコース設定であることを受け、実際のDTRC2019で利用されるドローンよりもやや小型でスピードも控えめな機体で行なわれたが、ピストン西沢氏によるレース実況もあり、白熱した内容でドローンレースの魅力をアピールした。