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ジェイテクトの「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」vs純正バッテリー。-40℃で「Ninja」のエンジンはかかるのか?

デモンストレーションを動画で紹介

-40℃でNinja 250のエンジンはかかるのか。ジェイテクトがデモンストレーションを実施

 ジェイテクトは、同社の伊賀試験場で報道向けに製品技術体験会を実施。その中で「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」と純正バッテリー(鉛蓄電池)を用いて、-40℃の環境下で川崎重工業の2輪車「Ninja 250」のエンジンを始動するというデモンストレーションを行なったので、動画で紹介する。

 今回のデモンストレーションで使用されたジェイテクトの高耐熱リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオン電池や従来のリチウムイオンキャパシタの-20℃~60℃という動作温度範囲よりも幅広い、-40℃~85℃という範囲で動作するのが最大の特徴。さらに、リチウムイオン電池に比べて蓄電容量は少ないものの、繰り返し充放電を行なった際の寿命が長いというリチウムイオンキャパシタの特性はそのまま持ち合わせている。

 また、高耐熱リチウムイオンキャパシタは電圧を制限することで最高温度105℃まで対応するため、冷却装置といった熱対策が不要となり、省スペースでの搭載が可能。電動化や自動運転技術装置の普及が見込まれ、限られた空間しかない自動車の非常用電源や電動パワーステアリングなどの電力アシストといった電力源のほか、自動車分野以外の航空宇宙など過酷な条件下での産業用途にも展開が可能だという。

 今後はキャパシタ単体の販売だけでなく、バランス回路などと組み合わせたパッケージや、充放電コントローラーと組み合わせた充放電システムとしての販売も予定されている。

高耐熱リチウムイオンキャパシタの概要
蓄電デバイスの動作温度範囲の違い
高耐熱リチウムイオンキャパシタの製品形態

-40℃の環境下に置かれたバッテリーで、バイクのエンジンはかかるのか

デモンストレーションの概要

 今回、ジェイテクトが行なったデモンストレーションは、同じ出力の高耐熱リチウムイオンキャパシタと純正バッテリーを-40℃まで冷やし、Ninja 250のエンジンを始動するというもの。

特殊な機械の中で-40℃になるように冷やされた高耐熱リチウムイオンキャパシタ(上)と純正バッテリー(下)。表面の霜を拭いてもすぐにまた霜がついてしまうくらい、キンキンに冷やされていた。なお、デモンストレーションに使用した純正バッテリーの動作保証温度は約-30℃とのこと
-40℃に冷やしたジェイテクトの「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」で「Ninja」のエンジンはかかる?

 まずは純正バッテリーでエンジンを始動させようとすると、バイク側ではモーターを動かそうとするが、純正バッテリーからは電力が供給されないため、エンジンは始動しない。続けて高耐熱リチウムイオンキャパシタで同じようにエンジンを始動させようとすると、驚くほどスムーズにエンジンが始動した。

オシロスコープにも電力が伝わったことがはっきりと表われた

 恐らく実際に-40℃の環境でバイクに乗ろうと考える人はいないだろうし、容量や継続した電力供給など従来の鉛蓄電池や液式バッテリーの方が勝る部分もある。しかし、電動化が進み、自動運転技術が発達した未来では、瞬発的な電力供給でも問題のない補助電源システムとして、キャパシタが活用される可能性もあるだろう。

 ジェイテクトの高耐熱リチウムイオンキャパシタは5月から生産が開始されており、9月からは生産工場が本格始動に入るという。今後、さまざまな用途が見込まれる高耐熱リチウムイオンキャパシタに、大きな夢を見たような気がした。今後の展開に注目していきたい。