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ジェイテクト、CASE対応の次世代技術や独自の製品化を目指す新規事業について説明
2019年度上期は「昨年と比べて苦しい決算になった」と安形社長
2019年11月20日 06:00
- 2019年11月19日 開催
ジェイテクトは11月19日、2020年3月期 第2四半期の決算や、今後の事業戦略について説明する記者説明会を都内で実施した。
登壇したジェイテクト 取締役社長の安形哲夫氏は、2020年3月期 第2四半期の状況について「昨年と比べてなかなか苦しい決算になった」と話した。その理由としては円高や需要の減少、さらには北米事業の再編に伴うリストラ費用を特別損失として計上したことで、純利益の減益幅が拡大したと説明する。
さらに営業利益が減少した背景として、売価水準が低下する一方、それを原価改善でカバーできなかったこと、CASE(Connectivity/Autonomous/Shared/Electric)対応に向けた研究開発費の増加などが挙げられた。
2020年3月期通期の業績予想については、円高の進行や需要減少による販売減などを見込み、減収減益の計画に見直している。ただ、配当金については通期で44円と、前年と同額を維持すると安形氏は説明した。
続けてジェイテクトの注力分野について説明が行なわれた。その1つとして挙げられたのが自動運転への貢献である。ジェイテクトはアクチュエータメーカーとして関わるだけでなく、舵角やステアリングを切るスピード、Gを検知して、それらのデータを演算することによって運転者の意図を把握する仕組みを持っていると説明し、この領域でも自動運転に貢献すると安形氏は話した。
また、ジェイテクトはデンソー、アイシン精機、アドヴィックスと共同して新会社のJ-QuAD DYNAMICSを立ち上げている。その意図について安形氏は「ステアリングだけで自動運転ができるわけではなく、エンジン出力など諸々の制御があって実現できる。これは単独だけではなんともならないので、協業して新たな会社を立ち上げ、自動運転用の統合制御システムを開発していく。例えるなら、ここ(J-QuAD DYNAMICS)で作るのは小脳、ジェイテクトが開発しているのは筋肉と反射神経」と語った。
もう1つ、自動運転の対応技術として説明されたのが、手動操舵と自動操舵をシームレスに切り替える技術だ。安形氏は「真面目に運転している時と、そうでない時のステアリングの操作は違う。これを判別した上で、手動操舵と自動操舵をスムーズに切り替える技術を開発している」と紹介した。
高耐熱リチウムイオンキャパシタの量産に向け、花園工場内に生産棟を新設
また、CASEの「E」に相当するEVへの対応について、ジェイテクトのすべての事業領域がEV化に対応すると安形氏は説明。その例として紹介されたのが、従来のガソリンエンジン車でアイドリングストップ用に使われていた電動オイルポンプだ。安形氏は「ピュアEVは大きなモーターを使うために冷却が必要」と説明し、そのための油冷装置として電動オイルポンプが使われていると解説する。また、既存技術を活用して新規製品を開発した例として、独立駆動モーターを利用して後輪の駆動をアシストする「E-AWD」を紹介した。
CASE対応以外の取り組みとしては、高耐熱リチウムイオンキャパシタが取り上げられた。安形氏は「ジェイテクトは電動パワーステアリングメーカーとして、小型車から大型のSUVまで対応できるフルラインアップを唯一そろえている」とする。ただ、大型SUVなどでは、大きな電流が必要となる際などに出力不足が発生するという。
この課題に対応するため、ジェイテクトではキャパシタの開発に取り組んできたが、通常のキャパシタや電気二重層キャパシタでは、-40℃~85℃という広い環境温度に耐えられないという。そのため、通常はクーラーやヒーターを使用して要求される温度に対応させているが、ジェイテクトが新たに開発した高耐熱リチウムイオンキャパシタは環境温度の要件に適応。これにより、クーラーやヒーターが不要になると安形氏は説明し、「その分価格を抑えられるほか、コンパクトにできることが従来のキャパシタとの違い」と述べた。
さらに安形氏は、このキャパシタについて「自動車以外にも多くの引き合いが来ている」と語り、量産に向けて花園工場内に新キャパシタ生産棟を新設したことを紹介。具体的な用途としては、建設機械や農業機械、オートバイ、飛行機などでの利用を挙げた。
J-WeLLで水を涸らさず「井戸の長寿命化」を実現
新規事業についての説明も行なわれた。安形氏は「社会的課題であるニーズと、われわれが持つシーズの交点に何らかのビジネスチャンスがあるのではないかという発想で新規事業を検討した」とする。それによって生まれた新規事業として紹介されたのが「J-Walker テクテック」と「ファクトリーエージェント」、そして「J-WeLL」である。
J-Walkerは「自立推進歩行器」と呼ばれるもので、左右のグリップを握って片方ずつ前後にスライドさせると、モーターが使用者の前進をアシストする。グリップをスライドさせる動作によって腕を振って歩く状態が再現され、高いトレーニング効果が得られるとする。
2つ目となるファクトリーエージェントは、中小の製造業や町工場と、作り手を見つけられないスタートアップや大学の研究室などをつなぐマッチングサービスだ。すでに数多くの製造業の企業がデータベースに登録されており、そこからプログラム、またはエージェントを使って検索することが可能となっているほか、見積りから決済まで一括で対応できることも特徴となっている。
最後のJ-WeLLは「井戸の長寿命化」を実現するソリューションだ。水不足は多くの国で問題となっており、そうした国の1つであるインドでは、農業用水や生活用水の多くを井戸に頼っているが、その一方で井戸の寿命が短いことが問題になっているという。
安形氏は、井戸の長寿命化においては水を涸らさないことが重要だと語り、水位センサーやIoE(Internet of Everythings)、制御技術などを活用し、井戸への水の流入量や揚水量を可視化。揚水ポンプを適切に制御することで井戸の長寿命化につなげられるとした。
最後に安形氏は「今までわれわれは、インダストリーやモビリティ領域で社会に貢献してきたが、今後はさらにヒューマンライフサポートなどを含めた新しい事業で次の世の中に貢献していきたい」と語った。