ニュース

ジェイテクトの将来技術、高剛性ハブユニットはステアリング感覚が“スッキリ”と

通常のハブユニットと高剛性ハブユニットを装着したトヨタ「オーリス」を乗り比べ

 電動パワーステアリングやベアリング、工作機械で知られるジェイテクトは、同社伊賀試験場において新製品の体験会を報道向けに開催した。この体験会は、まだ市場に投入されていない各種製品を紹介するもので、新製品の説明および試乗が実施された。

 本記事では、ジェイテクトの提案する高剛性ハブユニットを紹介する。

 ジェイテクトは1921年創業の光洋精工と1941年創業の豊田工機が、2006年1月に合併してできた総合自動車部品メーカーとなる。ベアリングなどの軸受けはKoyoブランドが、工作機械やメカトロはTOYODAブランドが用いられ、自動車だけでなく、鉄道、航空機、医療など多方面で利用されている。

ジェイテクトはさまざまな軸受を製造している

 自動車用軸受もさまざまなものを製品化しており、ハブユニットもその一つになる。当初はハブまわりの小さな部品だったが、自動車メーカーの組立工数の削減、一体化による軽量化、ユニットによる性能ばらつき低減などにより、周辺部品と一体化。第3世代ハブユニットでは、ABS用のセンサーを内蔵し、シール装着・自己与圧保持によりメンテナンスフリー化を図っている。

ハブユニットは第3世代へ進化
ジェイテクトハブユニットの強み
センシングを行なうことで統合制御に寄与していく
ハブユニット

 今回、ジェイテクトの提案する高剛性ハブユニットは、高剛性化による操安性の向上を目指したもので、より走りが愉しくなるものだという。試乗車としては、FFのトヨタ自動車「オーリス」が用意され、通常のハブユニットと高剛性ハブユニットを伊賀試験場のテストコースで乗り比べることができた。

 試乗コースは、100km/h超のレーンチェンジと、30~40km/hの低速ワインディングで、その違いを確認するというものだ。

 まずは、通常のオーリスを試乗。オーリスはトヨタの日欧戦略車と位置付けられたクルマで、FF車としては走りを意識して開発されている。そのため高速のレーンチェンジ、低速ワインディングもとくに不満なく走ることができた。もちろん、TNGA化される前のオーリスなのでシャシーなどのしなやかさを強く感じ、それがステアリングまわりの甘さにつながっている部分もあるのだが、一般的に乗る上では好ましさにもつながっている。

 一方、高剛性ハブユニットを搭載したオーリスは、その違いが低速から分かるもので、とにかくステアリング操作に対する追従が抜群に優れている。シャシーなどのしなやかさが残りつつ、ステアリングを右に切れば右へ、左へ切れば左へ、気持ちよくクルマが曲がる。感覚的には“スッキリ”クルマが動く感じで、ステアリング操作に対する横滑り角の出方が素直な印象だった。

通常のハブユニットと高剛性ハブユニットを装着したトヨタ「オーリス」を乗り比べた

 例えば、ハイグリップタイヤを装着してもステアリング操作に対する追従を上げることができるが、その場合は“グイッ”と力強く向きが変わっていく感じで、それとは異なる曲がり方だったのが印象的。高剛性ハブユニットを搭載したオーリスは、日常感覚のままスッキリ曲がっていき、レーンチェンジなどにおいても、速やかにレーンチェンジを終えることができるなど、収束が早く、ステアリングの戻しにおける気持ちよさも感じられる。クルマの質が2段階ぐらい上がった印象を持つことができた。

 ジェイテクトのスタッフによると、高剛性ハブユニットはとくにドライビングの気持ちよさや操安性の向上に効く部品なので、自動車メーカーのコストダウン要求とは相反する面もあるという。ただ、これだけレーンチェンジの開始や収束が素直であれば、運転して楽しく、将来的に自動レーンチェンジが普及したときでも補正量が小さくてすむことから価値ある部品であるのは間違いないだろう。