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ジェイテクト、培ったノウハウを活かして自動車市場だけではない新規事業を開拓
事業戦略説明会で自立歩行支援を目的とした介護機器発表
2019年5月27日 22:28
- 2019年5月27日 開催
ジェイテクトは5月27日、2018年度決算をふまえた事業戦略について説明会を開催。説明会では中期計画の進捗のほか、介護領域における新規事業に関する発表も行なわれた。
説明会では、ジェイテクト 取締役社長の安形哲夫氏がまず決算状況について解説。2019年3月期の連結決算について、売上高は前年同期比797億円(5.5%)増の1兆5208億円、営業利益は同147億円(18.2%)減の666億円、当期純利益は同250億円(50.4%)減の246億円とした。
営業利益が減収となった理由については、自動車メーカーの値下げ要求が厳しいことに加え、原価改善や売上でカバーしなければならなかった研究開発費やIT関連費、人材開発費などがカバーしきれなかったことに原因があるという。さらに、バランスシートの適正化を積極的に行ない、バランスシートのトータル数を減らしていることも要因の1つだと説明した。
続けて2020年3月期の業績予想についても触れ、純利益は平常パターンに戻ると予想。安形氏は「今年はなんとしても原価改善で乗り切るという所存でございます」と話し、売上高は前年同期比91億円(0.6%)増の1兆5300億円、営業利益は同比33億円(5.1%)増の700億円、純利益は同比153億円(62.2%)増の400億円とした。
また、研究開発費は「CASEの時代なのでやらなければ死んでしまう」と言い、売上高のうち4.4%を占める680億円(前年同期比43億円増)に増やすとした。
自動車市場に左右されない新たな収益創出にチャレンジ
安形氏は続けて、中期経営計画における事業戦略についての説明を実施。今後、自動車業界の中心になるであろうCASEへの対応については、Autonomous(自動運転)を支える技術・製品がメインの取り組みになると紹介。ジェイテクトのほか、アイシン精機、アドヴィックス、デンソーとともに2019年4月に設立した合弁会社「J-QuAD DYNAMICS」によって「欧州の大手メーカーにも対抗できる」と安形氏は自信を覗かせた。
加えて、Shared(シェアリング&サービス)については自動車数の減少が見込まれるため、新規事業の創造に取り組んでいると説明。まずは多様な活用方法が見込まれるリチウムイオンキャパシタが、今秋に出荷開始予定となると紹介した。
そのほかにも「自動車市場に左右されない新たな収益創出へのチャレンジをしている」と話し、製造業マッチングクラウドサービス「ファクトリーエージェント」や、2018年8月に販売を開始したパワーアシストスーツ「J-PAS」に加え、新しく自立歩行支援を目的とした介護機器となる自立推進歩行器「J-Walker テクテック」の開発に着手していることを紹介。
今回初めての紹介となるJ-Walker テクテックは、介護施設および家庭での使用を想定し、2020年度の販売を目指して開発を実施。手を振って歩くことで有酸素運動効果が見込まれる「ポールウォーキング」のトレーニング機能を採用し、ジェイテクトが自動車分野で培ったモーター制御により、上り坂アシストや下り坂ブレーキ、片流れ防止、転倒予防ブレーキといった歩行アシスト機能で外出時の安全性を確保。さらにスマートフォンと連携してゲーム性を持たせることで、飽きずにやる気を継続できる工夫を凝らしたという。
安形氏は、新規事業について「社会的ニーズがあり、ジェイテクトが保有している強みを掛け合わせたものだけを開発している」と紹介。今後も既存事業にとらわれず、広い視野で事業を開拓していくと述べた。
そのほかのCASEへの対応について、Connected(つながる)の領域ではサイバー攻撃からの侵入を防ぎ、車両が乗っ取られることを防ぐためのセキュリティ向上に取り組んでいると紹介。Electric(電動化)では、従来の4輪駆動システムで培った技術や知見を活かした電動4輪駆動システム「E-AWD」の開発を進めているほか、電池を作るための設備や、高速回転に耐えられるモーター用ベアリングの設計といった取り組みなどを行なっていると解説した。
さらに、CASEへの対応以外の事業戦略について安形氏は「今後のために乗り越えないといけない」と将来を見据えた取り組みを行なっていると説明。
ステアリング事業では、トラックの隊列走行やバスの正着制御といった自動運転に関する取り組みや、ラックアシストEPSの切り替えのために2023年ごろまで設備投資を実施していると話したほか、駆動事業については「競争力が上がってきて注文が増え、新規社屋の建設も検討しなければいけない」と紹介。軸受事業では、ハブユニットの生産体制を強化するとともに、新材料、スポーツ、鉄道車両などの新規ビジネスを開拓していくと話し、工作機械・メカトロ事業については設備の改修や人材育成と同時に、自動化・無人化を行なうことで競争力をつけていくという戦略を紹介した。