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トヨタ、車両衝突時の傷害を再現・解析可能なバーチャル人体モデル「THUMS」の情報無償公開

幅広いユーザーがTHUMSを活用することで、クルマの安全性能向上に期待

2021年1月 情報公開

歩行者モデル(左)と乗員モデル(右)

 トヨタ自動車は6月15日、クルマの衝突事故における人体傷害をコンピュータ上で解析できるバーチャル人体モデルTHUMS(サムス:Total HUman Model for Safety)を、2021年1月より無償で公開すると発表した。

 この施策は、安全なモビリティ社会の実現に向けた取り組みの一環で、無償公開を通じてより幅広いユーザーがTHUMSを活用することで、クルマの安全性能向上に貢献したいとの考えから行なわれるもの。

 THUMSは、車両の安全技術の研究や開発を目的に、2000年当時世界初となる車両衝突時の全身の傷害が再現・解析可能なバーチャル人体モデルとして、トヨタと豊田中央研究所が共同で開発。2019年に公表された最新の「Version 6」に至るまで、骨格・脳・内臓、さらには筋肉を組み込む一方、性別・年齢・体格の異なるさまざまなモデルを追加するなどして進化してきた。

 衝突安全試験に広く利用されるダミー人形に比べ、THUMSは人体の形状や強度を精密に再現したモデルであるため、衝突による傷害がより詳細に解析できることが特徴。また、コンピュータ上のシミュレーションであるため、さまざまな衝突パターンを模した解析を繰り返し行なうことができ、衝突実験にかかる開発期間や開発費を大幅に抑えることが可能となる。

人体モデルTHUMSのバージョンごとの進化点

 現在THUMSは、100以上の国内・海外の自動車メーカーや部品メーカー、大学、研究機関などでクルマの安全研究に使用されており、シートベルトやエアバッグ、歩行者事故時の傷害を軽減する車両構造など、さまざまな安全技術の研究や開発に活用されている。また、自動車アセスメント機関による将来的なバーチャル安全性能評価試験の導入計画において、THUMSの活用が検討されている。

 THUMSを無償公開することで、より多くの人がクルマの安全研究に利用可能となると共に、ユーザー自身でTHUMSに改良を加え、その成果を他のユーザーと共有するなど、利便性の向上も期待される。

歩行者モデル(画像はVersion 4のモデル)

 今回のTHUMS無償公開にあたり、先進技術開発カンパニー・フェローの葛巻清吾氏は「THUMSは2000年の誕生以来、改良を重ね、貪欲に人体構造の再現とバリエーションの充実に努めてまいりました。今やトヨタの安全技術・車両開発に不可欠な技術として確立されています。今回、THUMSの無償公開に踏み切ったのは、より多くのユーザーにご活用いただき、自動車業界全体でのクルマのさらなる安全性向上、そして交通事故死傷者ゼロの安全な社会の実現の一助になれば、との思いからです。自動運転車など将来のモビリティ社会を想定した開発の現場で広く活用いただけることを期待しています」と述べている。

 なお、無償公開の開始に伴い、JSOLおよび日本イーエスアイを通じて行なっているTHUMSのライセンス販売は2020年中に終了となる。また、無償公開対象はVersion4・5・6となる。

乗員モデル(画像はVersion 4のモデル)