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トヨタの新型「RAV4 PHV」プレゼンテーション。PHVの“P”にはパフォーマンスの意も込められていた
「エコは当たり前、スポーツカーのような性能も出せる新しいシステム」
2020年6月8日 10:30
トヨタ自動車は、6月ごろの発売を予定する新型「ハリアー」と、“間もなく発表”とアナウンスされた新型「RAV4 PHV」(いずれもプロトタイプ)の試乗会を袖ケ浦フォレストレースウェイで開催した。本稿ではMid-size Vehicle Company MS製品企画 安部朋彦氏による新型RAV4 PHVのプレゼンテーションについて紹介する。
既報のとおり、「RAV4」の最上級モデルに位置付けられるRAV4 PHVでは新開発のプラグインハイブリッドシステム「THSII Plug-in」を採用。RAV4のハイブリッドシステムよりもフロントモーターとインバーターを高出力化し、さらに新しい18.1kWhの新型リチウムイオンバッテリーと組み合わせることでシステム最高出力は225kW(306PS)を達成し、スポーティで力強い走行を可能にした。
一方で、満充電状態でのEV走行距離は95km(WLTCモード)とし、ハイブリッド燃費は22.2km/L(WLTCモード)を実現。ガソリンタンク容量も55Lを確保したことで、最長航続距離は1300㎞以上を誇る。こうした特徴を持つTHSII Plug-inについて、トヨタは「エコは当たり前、スポーツカーのような性能も出せる新しいプラグインハイブリッドシステム」と説明している。
また、今回のシステムではエアコン冷媒の活用によりリチウムイオンバッテリーの温度管理を徹底。また、エアコンにはヒートポンプシステムを採用し、ヒートポンプが外気の熱を使ってエンジン冷却水を温め、車内を暖房する。エアコンを使用した際の消費電力を抑え、EV走行距離の低下を抑制する仕組みが採用されている。
デザインについては従来のRAV4から大きな変更点はないものの、エクステリアでは専用LEDデイライトで先進感を強調するとともに、切削光輝仕上げのスポークとサイドのブラック塗装が特徴になる新意匠の19インチ専用アルミホイール、RAV4 PHV専用のボディカラー「エモーショナルレッドII」を採用。「BLACK TONE」グレードには、専用色としてブラックが映える2トーンカラーの全5タイプを設定し、、ボディ下部に加えてルーフやドアミラーをアティチュードブラックマイカでコーディネイトする。
インテリアでは天井やピラー、オープントレイなどをブラックで統一し、インストルメントパネルやドアトリム、シート、ステアリング、シフトブーツ、センターコンソールにレッドステッチを施した。また、合成皮革シート表皮採用のスポーティシートを全車標準装備し、「BLACK TONE」「G“Z”」には横基調のキルティング意匠とレッドリボン加飾が採用される。
そのほか上質なドライビング空間を構築するべく、ボディにノイズ対策を実施した。吸遮音材の最適配置に加えてダッシュパネルやフロアの吸音材範囲を拡大し、さらに接合部の隙間も埋めることで車内への音の進入を抑制した。加えて高遮音性ガラスを採用し、風切り音も低減させている。
PHVの“P”はパフォーマンスの意も込められる
新型RAV4 PHVのプレゼンテーションを行なった安部氏はまず初めにRAV4の歩みを振り返り、「初代RAV4は1994年に街でもアウトドアでも楽しめる新ジャンルSUVのパイオニアとしてデビューしました。以来、脈々と受け継がれてきたRAV4のDNAは、『SUVのワクドキ』です。どこにでも行けそうな気がするデザインと走破性、いかなる使用シーンにも応えられる使い勝手のいい荷室空間がお客さまからご好評をいただきました」。
「そんな中、2019年4月に5代目となる新型を国内にガソリン、ハイブリッドモデルとして導入しました。RAV4のポジショニングですが、昨今のSUV市場はよりカーライクな方向に移行してきています。そうした中、RAV4はこれらのトレンドとは一線を画すポジショニングで、『SUVのワクドキ』『強いアイデンティティ』が皆さまから支持をいただいていると考えています」とコメント。
そして今回の新型RAV4 PHVのポジショニングは現行RAV4の延長線上に位置し、“SUVのワクドキ”がさらに突き抜けるモデルとして開発を行なったという。現行RAV4の独自のポジションをさらに強固なものにするべく、トヨタのSUVとして初めてプラグインハイブリッドシステムを搭載しており、車両コンセプトには現行RAV4の「Robust(たくましさ) Accurate(洗練された緻密さ) Vehicle with 4 Wheel Drive」に、RAV4の魅力を電気の力で加速させるという意味を込めた「“E”-Booster」を加えた。“E”にはRAV4の楽しさを加速させる「Enjoy(楽しさ)」、RAV4の快適性を加速させる「Electric(電気を使う)」、RAV4の環境性能を加速させる「Environment(環境)」の3つの意味を込めたという。
また、プラグインハイブリッドシステムの概要については、「新開発のリチウムイオンバッテリーを床下に搭載し、フロントモーターとインバーターの高出力化を図り、エンジンと合わせたシステムの最大出力は225kWで、従来のSUVにはない異次元の走りを実現しました」とアピール。
特に今回の新型RAV4 PHVでは走る楽しさを目指しており、「競合する2.0リッターターボエンジン搭載車を凌ぐ加速性能を実現しました。こういった意味では、PHVの“P”はプラグインを指しますが、われわれ開発陣としてはパフォーマンスの“P”という思いを込めて開発してまいりました」と述べるとともに、「航続可能距離は従来のガソリン、ハイブリッドモデルに対して大幅にしのぐ1300km以上を実現しました」と、単に加速性能を高めただけでなくどこにでも行けそうな航続距離を実現したことをアピールした。
また、充電については新型RAV4 PHVでは普通充電にも対応し、付属の充電ケーブル(AC200V・AC100V兼用)をコンセントに接続するだけで充電ができ、さらに外出先ではPHV充電サポートに加入することで、G-Station(充電器)が設置されているトヨタ車両販売店(約4200基)をはじめ、全国の普通充電スポット(約1万800基)での充電が可能になっている。安部氏はこれらに加え、給電については最大1500W(AC100V)の外部給電機能を標準装備しており、「エンジンをまったくかけずに電気を7時間供給し続けることが可能です。SUVならではのキャンプなどのシーンで十分に活躍できるのではないかと思います。さらに万が一の災害時・停電時においては、エンジンを使ってとはなりますが3日間にわたって最大1500Wの電力を供給し続けることが可能です」とのこと。
そのほか、快適装備についてはヒートポンプが外気の熱を使ってエンジン冷却水を温め車内を暖房することで、エアコンを使用した際の消費電力を抑え、EV走行距離の低下を抑制する「ヒートポンプエアコン」、車室外からエアコンのON/OFFが切り替えられる「リモートエアコンシステム」、PHV専用装備として後席シートヒーターが与えられたことなど、EV走行距離に寄与するアイテムが投入されたことも紹介した。