試乗インプレッション

トヨタ新型「RAV4」の3種類の4WDシステム、オフロードでの走りの違いは?

オンロードではガソリン車とハイブリッド車を乗り比べ

 雪上試乗に続いて雪が消えるこの季節、トヨタ自動車の新型「RAV4」のオフロードとオンロードの試乗をすることができた。ここではこの試乗をレポートしよう。

 最初にプレゼンが終了してから、少し離れた特設のオフロードコースに向かう。モーグルコースと少しスピードの高い180度の円旋回コースだ。ここでは4WDシステムの違いを体験する。

モータージャーナリストの日下部保雄が雪上に続きオフロード&オンロードでRAV4を試乗

 おさらいになるが、ガソリン車には2種類の4WDシステムがあり、1つは「Adventure」に搭載している左右後輪に各1つのカップリングを持つ「ダイナミックトルクベクタリングAWD」。もう1つが「X」に搭載されるリアデフの前に1つのカップリングを持つ「ダイナミックトルクコントロールAWD」。さらに、ハイブリッドに搭載される4WDシステムが後輪をモーターで駆動する「E-Four」である。

マルチテレインセレクトをROCK&DIRTに設定して、いざ挑む

 まずモーグルコースではコンベエンジン2種類の違いをテストする。タフなRAV4には余裕でクリアできそうだが、並みのクロスオーバー車では難コースとなりそうだ。モーグル通過の際は1輪が完全に接地を失うようなコース設定だが、RAV4は18度のアプローチアングルと20.5度のデパーチャーアングルを持ち、最低地上高も200mmと高いので、顎や下まわりを打つ確率は少なそうだ。

 まずAdventureでモーグルに臨むが、タイヤが浮き上がっても間髪を入れずに、浮き上がったタイヤにブレーキをかけて、接地しているタイヤにトルクをかける。この状況はダイナミックトルクコントロールAWDと似ているが、接地している後輪が間髪を入れずに駆動するので、ドライバーは特に意識しないで簡単に走破できる。もちろんフロントタイヤが浮いても同じ理屈で、接地している後輪でグイグイと前に進む。あっけないほどだ。

 XでもダイナミックトルクコントロールAWDやブレーキ、ステアリングなどを統合制御するのでモーグルも走破できるが、駆動力が伝わるのにタイムラグがあり、一瞬、空転した後にグイと前に進む。慣れれば容易だが、アクセル操作に少しコツが必要だ。

 マルチテレインセレクトは、いずれもこのような路面で駆動力を微妙に配分して出力のコントロールが滑らになる「ROCK&DIRT」を選んだ。ちなみに今回は試せなかったがハイブリッド車では「TRAILモード」がこれに該当する。

Xでも片輪が浮くようなモーグルを走破できる

 また、急勾配の下り坂をアクセルとブレーキコントロールなしで下りることができる「ヒルディセントコントロール」もAdventureには標準となり、こちらもハンドル操作だけに集中していればよいので、オフロードビギナーでも容易に急勾配を下りられる。

 Xはヒルディセントコントロールを持たないので、ブレーキ操作などちょっと気を使わなければならない。しかし、ブレーキのコントロール性に優れていることに加えて、4輪の接地力や重心高がよく、安定した姿勢を保つことができた。

ヒルディセントコントロールでオフロードの急勾配も難なく安定して走破可能

それぞれ個性のある3種類の4WDシステム

 続いて、少しスピード域の高い180度の円旋回をAdventure、X、そしてハイブリッドの3種類の4WDでテストしてみる。およその感覚はスノーサーキットで経験済みだが、ここではラフロードでの確認となる。

 まず、アプローチルートの荒れたラフロードはゆっくり走るが、それでも乗用車とは違った気やすさがある。上下動もよく吸収してくれ、頼りになる。短いストレートからアクセルを踏みだすと、結構スピードが乗る。各車同じ速度に合わせて、コーナー途中でアクセルを踏みながら旋回すると、各4WDシステムとクルマの特徴がよく現われた。

Adventureはダイヤル式の「マルチテレインセレクト」
路面状況に応じてMUD&SAND、NORMAL、ROCK&DIRTを切り替えできる
Xのマルチテレインセレクトはボタンプッシュ式
HYBRID GではダイヤルがECO、NORMAL、SPORTを切り替える「ドライブモードセレクト」となり、専用の「TRAILモード」スイッチが付く
モードを切り替えるとメーター内の表示も変わる
Xのメーターはアナログの2眼タイプ。メーター中央に4.2インチTFTカラーのマルチインフォメーションディスプレイを備える

 Adventureでは雪道と同じようにライントレース性に優れ、ターンインからノーズの入りがよく、アクセルを踏み出すとグイグイと旋回していく。コーナーでアクセルを踏むのは抵抗があるが、メリットは路面変化があった時に多いに助けられる。

 Xでは姿勢安定性は高いが、アンダーステアとなるので旋回力はAdventureほど高くない。早めにアクセルOFFして姿勢を立て直すことになるが、4WDの信頼性は高く、RAV4の走りの質は高い。

 ドライブモードセレクトは、アクセルレスポンスがシャープになり4WDもトラクションがかけやすい「SPORT」を選択した。

Xでも姿勢安定性は高い

 さらにハイブリッドになると車両重量がXより120kgほど重い1690kgあるので、荒れた路面ではどうしても上下動が大きくなり、さらに慣性力で徐々にアウトに流れていく。パワーも大きいことが影響しているだろう。しかし、ハイブリッドの旋回姿勢は安定しており、オーバースピードで滑りやすい路面に入らなければ、安心感は高い。

 いずれにしても4WD統合制御のポテンシャルは高くて、巧みな4輪のマネージメントはドライバーに優しい。

 ちなみに、ハイブリッドは2.5リッターの「A25A」型エンジンとフロント88kW、リア40kWのモーターの出力で後輪の駆動力が高いので、後ろから押し出されるような加速力は俊敏だ。

ハイブリッド車は後ろから押し出されるような機敏な加速力があった

オンロードでAdventureとHYBRID Gに試乗

 オンロードではAdventureとハイブリッドの2モデルのRAV4に乗ることができた。

 Adventureは235/55R19で横浜ゴムのオールシーズンタイヤを履く。全幅はワイドサイズ。大型のフェンダーアーチモールを装着しているので、1865mmと他グレードより10mm広くなる。伸びやかなスタイルはこの全幅の広さで視覚的効果も大きい。

 燃費はWLTCモードで15.2km/L。重量は1630kgでカップリングを2個持っていることもあってXよりも60kgほど重いが、後輪に負荷をかけない場面ではプロペラシャフトのディスコネクト装置が作動して完全なFFとなるので、燃費削減に大きな効果があり、Xの2WDの15.8km/Lに近い値を出しているのは立派だ。このディスコネクトの効果は2%とされ、燃費削減に大きな効果がある。

撮影車はAdventure。ボディサイズは4610×1865×1690mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2690mm。車両重量は1630kg
235/55R19サイズの大径タイヤと切削光輝+ブラック+マットクリア塗装のアルミホイールの組み合わせ
リアにマットブラックのグレードマークを装着。テールランプにはエアロスタビライジングフィンが付く
最高出力126kW(171PS)/6600rpm、最大トルク207Nm(21.1kgfm)/4800rpmを発生する直列4気筒 2.0リッター「M20A-FKS」型エンジンを搭載し、トランスミッションには無段階変速機「Direct Shift-CVT」を組み合わせる。駆動方式は4WDで、システムは新開発のダイナミックトルクベクタリングAWDとなる
Adventureのインテリア。撮影車の内装色はブラック
全車オーディオレスの設定。撮影車は販売店オプションの「T-Connectナビ 9インチモデル」を装着
シートは専用合成皮革にオレンジステッチが入る
ラゲッジルームは580Lの容量を確保

 ハンドリングは素直でロールも少なく、スーと回っていく。ステアリングギヤレシオは特に早くはないが、その分落ち着いてシットリとしているのが印象的だ。通常の場面ではダイナミックトルクベクタリングAWDの恩恵を如実に感じることはないが、確実に旋回性は上がっている。また、直進安定性も高い。コーナリング時のアクセルOFF、パーシャルスロットル、アクセルを緩やかに踏む、という動きに忠実に反応するので扱いやすいクルマだ。

 視界もスカットルが低いので直前視界に優れており、さらに斜め前方視界も開けている。Aピラーの角度と位置がよく検討されていることが分かる。これもドライビングにストレスの少ない大きなポイントだ。

視界がよく、気持ちよくドライブできる

 Direct Shift-CVTはアクセルを全開にしないような場面ではリズミカルにシフトして、トルコンATのようで小気味よい。全開時には例のラバーバンドフィールが顔を出すが、以前よりもはるかにCVT感は払拭されている。

 エンジン出力は2.0リッターのNAなので、それほどパワーが余剰にあるわけではない。しかし126kW/207Nmで出力は日常的にはパワー不足感はないし、十分にエンジンを活用している感覚がいい。欲を言えばきりがないが、多人数乗車で荷物が満載、急勾配でもなければ事足りる。

 ハイブリッドは225/60R18のダンロップ「グラントレック」を履く。こちらはパワフル。アクセルレスポンスに優れて、後ろから押し出されるようにグンと出る感触はダート同様に新鮮だ。ハンドリングも安定感があってパワーに負けていない。

 乗り心地はハイブリッドならではのピッチングを抑えたトルク制御に加えて、アクセルOFF時の減速感がきちんと出ており、スッキリしたドライブフィールだ。ドライバーの感覚によくマッチしている。

 室内は質感が高いだけでなく、スペースが広く、解放感がある。小物入れも豊富だ。そしてラゲッジルームも奥行きがあって実質的な荷室容量はかなり広く、実用性が高く、あらゆる場面でミドルサイズのSUVらしく使い勝手がよい。

 さすがグローバルでの人気車種だけあって、隅々までRAV4マインドがいきわたり、力の入ったモデルチェンジとなっている。

HYBRID Gのボディサイズは4600×1855×1685mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースはガソリン車と同じ2690mm。車両重量は1690kg
最高出力131kW(178PS)/5700rpm、最大トルク221Nm(22.5kgfm)/3600-5200rpmを発生する直列4気筒 2.5リッター「A25A-FXS」型エンジンを搭載。駆動方式は4WDの「E-Four」となるのでフロントに最高出力88kW(120PS)、最大トルク202Nm(20.6kgfm)を発生する「3NM」型モーターを、リアに最高出力40kW(54PS)、最大トルク121Nm(12.3kgfm)を発生する「4NM」型モーターを搭載し、システム最高出力は163kW(222PS)となる。トランスミッションは電気式無段変速機を組み合わせる
リアのほかに、フロントとサイドにハイブリッドシンボルマークを装着
225/60R18タイヤに、スーパークロームメタリック塗装のアルミホイールを組み合わせる
HYBRID Gのインテリア。内装色はライトグレー
シートはステッチ付きの合成皮革
全車で前席の頭上にヘルプネットのボタンを配置
ステアリング右のスイッチ類。ステアリングヒーターとパワーバックドアはHYBRID Gに標準装備
中央のエアコンダイアルの下には標準装備の快適温熱シート(運転席・助手席)のスイッチを配置
アクセルペダルは全車オルガン式
オプティトロンメーターと、7.0インチTFTカラー(スピードメーター表示)のマルチインフォメーションディスプレイを装着
ハイブリッド車でもラゲッジルームはガソリン車と同様の広さ
2段デッキボードを下げた状態
デッキボードの下には工具類を収納
ラゲッジルームには全車にAC100Vのアクセサリーコンセントをオプション設定。ガソリン車は100W、ハイブリッド車は1500W(非常時給電システム付)となる
パワーバックドアのスイッチ

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛