試乗インプレッション
トヨタ新型「RAV4」の3種類の4WDシステム、オフロードでの走りの違いは?
オンロードではガソリン車とハイブリッド車を乗り比べ
2019年4月10日 13:30
雪上試乗に続いて雪が消えるこの季節、トヨタ自動車の新型「RAV4」のオフロードとオンロードの試乗をすることができた。ここではこの試乗をレポートしよう。
最初にプレゼンが終了してから、少し離れた特設のオフロードコースに向かう。モーグルコースと少しスピードの高い180度の円旋回コースだ。ここでは4WDシステムの違いを体験する。
おさらいになるが、ガソリン車には2種類の4WDシステムがあり、1つは「Adventure」に搭載している左右後輪に各1つのカップリングを持つ「ダイナミックトルクベクタリングAWD」。もう1つが「X」に搭載されるリアデフの前に1つのカップリングを持つ「ダイナミックトルクコントロールAWD」。さらに、ハイブリッドに搭載される4WDシステムが後輪をモーターで駆動する「E-Four」である。
まずモーグルコースではコンベエンジン2種類の違いをテストする。タフなRAV4には余裕でクリアできそうだが、並みのクロスオーバー車では難コースとなりそうだ。モーグル通過の際は1輪が完全に接地を失うようなコース設定だが、RAV4は18度のアプローチアングルと20.5度のデパーチャーアングルを持ち、最低地上高も200mmと高いので、顎や下まわりを打つ確率は少なそうだ。
まずAdventureでモーグルに臨むが、タイヤが浮き上がっても間髪を入れずに、浮き上がったタイヤにブレーキをかけて、接地しているタイヤにトルクをかける。この状況はダイナミックトルクコントロールAWDと似ているが、接地している後輪が間髪を入れずに駆動するので、ドライバーは特に意識しないで簡単に走破できる。もちろんフロントタイヤが浮いても同じ理屈で、接地している後輪でグイグイと前に進む。あっけないほどだ。
XでもダイナミックトルクコントロールAWDやブレーキ、ステアリングなどを統合制御するのでモーグルも走破できるが、駆動力が伝わるのにタイムラグがあり、一瞬、空転した後にグイと前に進む。慣れれば容易だが、アクセル操作に少しコツが必要だ。
マルチテレインセレクトは、いずれもこのような路面で駆動力を微妙に配分して出力のコントロールが滑らになる「ROCK&DIRT」を選んだ。ちなみに今回は試せなかったがハイブリッド車では「TRAILモード」がこれに該当する。
また、急勾配の下り坂をアクセルとブレーキコントロールなしで下りることができる「ヒルディセントコントロール」もAdventureには標準となり、こちらもハンドル操作だけに集中していればよいので、オフロードビギナーでも容易に急勾配を下りられる。
Xはヒルディセントコントロールを持たないので、ブレーキ操作などちょっと気を使わなければならない。しかし、ブレーキのコントロール性に優れていることに加えて、4輪の接地力や重心高がよく、安定した姿勢を保つことができた。
それぞれ個性のある3種類の4WDシステム
続いて、少しスピード域の高い180度の円旋回をAdventure、X、そしてハイブリッドの3種類の4WDでテストしてみる。およその感覚はスノーサーキットで経験済みだが、ここではラフロードでの確認となる。
まず、アプローチルートの荒れたラフロードはゆっくり走るが、それでも乗用車とは違った気やすさがある。上下動もよく吸収してくれ、頼りになる。短いストレートからアクセルを踏みだすと、結構スピードが乗る。各車同じ速度に合わせて、コーナー途中でアクセルを踏みながら旋回すると、各4WDシステムとクルマの特徴がよく現われた。
Adventureでは雪道と同じようにライントレース性に優れ、ターンインからノーズの入りがよく、アクセルを踏み出すとグイグイと旋回していく。コーナーでアクセルを踏むのは抵抗があるが、メリットは路面変化があった時に多いに助けられる。
Xでは姿勢安定性は高いが、アンダーステアとなるので旋回力はAdventureほど高くない。早めにアクセルOFFして姿勢を立て直すことになるが、4WDの信頼性は高く、RAV4の走りの質は高い。
ドライブモードセレクトは、アクセルレスポンスがシャープになり4WDもトラクションがかけやすい「SPORT」を選択した。
さらにハイブリッドになると車両重量がXより120kgほど重い1690kgあるので、荒れた路面ではどうしても上下動が大きくなり、さらに慣性力で徐々にアウトに流れていく。パワーも大きいことが影響しているだろう。しかし、ハイブリッドの旋回姿勢は安定しており、オーバースピードで滑りやすい路面に入らなければ、安心感は高い。
いずれにしても4WD統合制御のポテンシャルは高くて、巧みな4輪のマネージメントはドライバーに優しい。
ちなみに、ハイブリッドは2.5リッターの「A25A」型エンジンとフロント88kW、リア40kWのモーターの出力で後輪の駆動力が高いので、後ろから押し出されるような加速力は俊敏だ。
オンロードでAdventureとHYBRID Gに試乗
オンロードではAdventureとハイブリッドの2モデルのRAV4に乗ることができた。
Adventureは235/55R19で横浜ゴムのオールシーズンタイヤを履く。全幅はワイドサイズ。大型のフェンダーアーチモールを装着しているので、1865mmと他グレードより10mm広くなる。伸びやかなスタイルはこの全幅の広さで視覚的効果も大きい。
燃費はWLTCモードで15.2km/L。重量は1630kgでカップリングを2個持っていることもあってXよりも60kgほど重いが、後輪に負荷をかけない場面ではプロペラシャフトのディスコネクト装置が作動して完全なFFとなるので、燃費削減に大きな効果があり、Xの2WDの15.8km/Lに近い値を出しているのは立派だ。このディスコネクトの効果は2%とされ、燃費削減に大きな効果がある。
ハンドリングは素直でロールも少なく、スーと回っていく。ステアリングギヤレシオは特に早くはないが、その分落ち着いてシットリとしているのが印象的だ。通常の場面ではダイナミックトルクベクタリングAWDの恩恵を如実に感じることはないが、確実に旋回性は上がっている。また、直進安定性も高い。コーナリング時のアクセルOFF、パーシャルスロットル、アクセルを緩やかに踏む、という動きに忠実に反応するので扱いやすいクルマだ。
視界もスカットルが低いので直前視界に優れており、さらに斜め前方視界も開けている。Aピラーの角度と位置がよく検討されていることが分かる。これもドライビングにストレスの少ない大きなポイントだ。
Direct Shift-CVTはアクセルを全開にしないような場面ではリズミカルにシフトして、トルコンATのようで小気味よい。全開時には例のラバーバンドフィールが顔を出すが、以前よりもはるかにCVT感は払拭されている。
エンジン出力は2.0リッターのNAなので、それほどパワーが余剰にあるわけではない。しかし126kW/207Nmで出力は日常的にはパワー不足感はないし、十分にエンジンを活用している感覚がいい。欲を言えばきりがないが、多人数乗車で荷物が満載、急勾配でもなければ事足りる。
ハイブリッドは225/60R18のダンロップ「グラントレック」を履く。こちらはパワフル。アクセルレスポンスに優れて、後ろから押し出されるようにグンと出る感触はダート同様に新鮮だ。ハンドリングも安定感があってパワーに負けていない。
乗り心地はハイブリッドならではのピッチングを抑えたトルク制御に加えて、アクセルOFF時の減速感がきちんと出ており、スッキリしたドライブフィールだ。ドライバーの感覚によくマッチしている。
室内は質感が高いだけでなく、スペースが広く、解放感がある。小物入れも豊富だ。そしてラゲッジルームも奥行きがあって実質的な荷室容量はかなり広く、実用性が高く、あらゆる場面でミドルサイズのSUVらしく使い勝手がよい。
さすがグローバルでの人気車種だけあって、隅々までRAV4マインドがいきわたり、力の入ったモデルチェンジとなっている。