試乗インプレッション

トヨタの新型「RAV4 PHV」は環境性能だけじゃない、スポーティなドライビングも楽しめる

重いPHVがフットワークよく走り、コーナーも楽しいクルマ

RAV4にPHVが登場

 トヨタ自動車「RAV4」は2019年4月に日本でも再登場以来、市場からも高い評価を得て、2019-2020年の日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄誉も獲得した。

 そのRAV4に最上級グレードのPHV(プラグインハイブリッド)が登場する。PHVはEV(電気自動車)とHV(ハイブリッド)を組み合わせたシステムで、欧州勢を中心に高燃費を訴求してラインアップされている。

 RAV4のPHVは、トヨタが得意とする燃費のよさで定評のあるシリーズ・パラレルハイブリット「THS-II」に大容量のリチウムイオンバッテリーを組み合わせたもので、EVでの走行距離はWLTCに則った計測法で95km、基本となるHV燃費は22.2km/Lとされている。EVとHVを組み合わせた航続距離は最大1300km以上にも及ぶ。

 2.5リッターのダイナミックフォースエンジンはPHVの要件に合わせてチューニングされ、ハイブリッドシステムもフロントモーターとインバーターの高出力化で、2019年に発売したRAV4 ハイブリッドの88kWから134kWに上げられている。リアモーターの出力は40kWと変更はない。

間もなくの発売がアナウンスされたトヨタ自動車「RAV4」のPHVモデル「RAV4 PHV」。新開発のプラグインハイブリッドシステム「THSII Plug-in」を採用し、RAV4のハイブリッドモデルよりもフロントモーターとインバーターを高出力化するとともに、大容量・高出力の新型リチウムイオンバッテリーと組み合わせることでシステム最高出力225kW(306PS)を達成。力強い走行を可能にする一方、満充電状態でのEV走行距離は95km、ハイブリッド燃費は22.2km/Lを達成。最長航続距離は1300㎞以上とアナウンスされている
2.5リッターのダイナミックフォースエンジンは、最高出力130kW(177PS)/6000rpm、最大トルク219Nm/3600rpmを発生。5NM型フロントモーターは最高出力134kW(182PS)、最大トルク121Nmを、4NM型リアモーターは最高出力40kW(54PS)、最大トルク121Nmとなり、システム最高出力は225kW(306PS)
天井やピラーなども含めブラックで統一したインテリアでは、インパネをはじめドアトリム、シート、ステアリング、シフトブーツ、センターコンソールにレッドステッチを採用。合成皮革シート表皮採用のスポーティシートも全車標準装備する

 骨格には基本はRAV4と同じGA-Kプラットフォームを使うが、同じプラットフォームでもより重量の大きな「ハイランダー」のプラットフォームを一部で使い、標準モデルより出力と重量が大きなPHVに合わせている。プラットフォームの汎用性にTNGAの効果がよく生かされている。

 そのプラットフォームの中央床下には18.1kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが収まっており、バッテリーの保護部材で高剛性ボディはさらに剛性が高まった。しっかりとしたボディは乗り心地にも大きな効果がある。また、重いバッテリーを床下中央に置くことで低重心化が図れてハンドリングにもいい影響を及ぼす。

プラットフォームの中央床下に18.1kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載

 エンジンとモーターのシステムの最高出力は225kW(306PS)で、燃費がいいだけではなく、かなりパワフルなSUVに仕上がっている。

0-100km/h加速6秒というパンチの効いた加速

 最初の試乗車は235/55R19の横浜ゴム「AVID GT」を履く。満充電でのスタートなので、オートモードにしておくと普通のペースで周回してもエンジンがかかるシーンはない。いつもながらEVの振動と音のない走行はストレスフリーで、いったんEV走行を経験してしまうとしばらくはガソリン車の振動と音が気になってしまう。

 ガソリン車はどんなにマウントを工夫してもどうしても細かな振動を伝えるし、遮音に精を出してもエンジンノイズはやはり聞こえてくる。進化したガソリンエンジンには魅力は沢山あるが、まずは振動の少なさがEVの魅力だ。

 アクセルレスポンスは早いが、高出力のBEV(バッテリー式電気自動車)のように吹っ飛んでいくような感じではなく、ノーマルモードでは滑らかで常識的な速さだ。アクセルの踏み込み側のレスポンスもいいが、もう1つ、アクセルをOFFした時の回生ブレーキの効果もあって荷重移動が自然で、セオリーどおりの運転がしやすい。スポーツモードでも回生ブレーキの減速Gを極端に大きくしておらず、ワンペダル操作ができるようには設定されていない。

 エンジンも、リアモーターも、駆動用モーターも、使ったシステムをフル稼働させるようにアクセルを強く踏み込むとグンを力強い加速を示す。この時は0-100km/h加速6秒というパンチの効いた加速をする。ガソリン車でいえば2.0リッターターボ並みの瞬発力だ。ちなみに、エンジンを使わないEVモードでの0-100km/hでも10秒を切る加速力があるので、急加速が必要な場面でも対処できそうだ。

 また、ドライブモードをスポーツに入れるとアクセルレスポンスがシャープになり、アクセルOFFでは減速Gも大きくなるのでメリハリの効いたドライブができる。車速が高いほど減速Gが大きくなるので、スポーティなドライビングに向いている。

 RAV4はコーナーでも楽しいクルマだが、ターンインでの姿勢変化が素直でグイグイとまわり込んでいく。さらにブレーキ制御も入って旋回力を上げて、重いPHVがフットワークよく走る。ハイブリッドのRAV4で味わった気持ちのよさはPHVでも受け継がれて、クルマの性格には1本筋が通っている。

 ハンドルの効きは素直で、舵角を増やしていくようなケースでも滑らかに追従してくれる。この余裕が嬉しい。操舵感もシットリとして手に馴染む。

 もう1台、225/60R18サイズのダンロップ「GRANDTREK」装着車も乗る機会があった。こちらは先ほどの19インチとキャラクターが違って、ソリッドな感触よりもコーナーでクルマがユッタリと動くイメージだ。このフィーリングもわるくない。

災害時の給電施設としても役立つ

付属の充電ケーブル(AC200V・AC100V兼用)をコンセントに接続するだけで充電が可能

 RAV4 PHVにはヒートポンプ式のオートエアコンが装備されている。暖房の場合、エンジンに頼ることなく、EV走行中でも冷媒を使って外から熱を取り入れることで室内を暖めることができる。PHVには必須のシステムだ。駐車中のクルマでも外からエアコン作動をさせるリモートスイッチがスタートキーに織り込まれているのもグッドアイデアだ。ちなみに電気を効率よく使うために、後席にもシートヒーターが装着されている。

 このエアコンの冷媒は電池パック内のセルを冷却しており、バッテリーの温度上昇をコントロールして効率よく働かせている。

 もう1つ、PHVは1500Wまで使えるコンセントを持っているので、フル充電の電池では7時間、エンジンも稼働すると3日間稼働する。アウトドアでの活動はもちろん、災害時の給電施設としても役立つ。

 走行中の充電はHVオートモードで必要に応じて充電できるが、チャージモードを使えば走りながら積極的に充電でき、さらに200Vの普通充電設備があれば、空の状態から80%充電を行なうのに5時間半で可能だ。使用条件によって複合的に組み合わせた使い方ができるのもPHVの特徴だ。

 燃費だけで価格差を埋めるのは難しいが、電気の保険として考えるとPHVとの生活にはまた別の意義が見い出せる。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛