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ダイムラー、レーシングカー由来のデザインを採用する新型「メルセデスAMG GT ブラックシリーズ」

730HP/800NmのメルセデスAMGでもっとも強力なV8エンジン

2020年10月5日(現地時間)発表

メルセデスAMG GT ブラックシリーズ(Mercedes-AMG GT Black Series)

 ダイムラーは10月5日(現地時間)、新型「メルセデスAMG GTブラックシリーズ」を発表した。

 GTブラックシリーズは、サーキット走行を前提として、アクティブな空気力学と現在のAMG GT3レーシングカーに直接由来するデザインを組み合わせた1台。

メルセデスAMGでもっとも強力なV8エンジン

 新しいGTブラックシリーズで搭載されるエンジンは、ドライサンプ潤滑のAMG V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンをベースにし、多くの変更が加えられたため新しい内部コード“M178LS2”が付与される。新開発のカムシャフトとエキゾーストマニホールドは、新しい点火順序によりガスサイクルをさらに改善。最高出力は537kW(730HP)/6700-6900rpmを発生し、最大トルクは800Nm/2000-6000rpmを生み出す。

 ツインスクロールエキゾーストターボチャージャーは、スロットルレスポンスをさらに最適化する減摩ベアリングを採用。また、大きなコンプレッサーホイールのターボチャージャーが装着され、1時間あたり合計1100kgの空気を供給可能としている(AMG GTRは900kg/h)。そして、給気温度を常に可能な限り最良の範囲内に保つ大型のインタークーラーも完備する。

 その圧倒的なパフォーマンスは、0-100km/hが3.2秒で、0-200km/hは9秒未満。最高速は325km/hをマークする。

V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンをベースに手が加えられている

AMG SPEEDSHIFT DCT7Gトランスミッション

 動力はすべてのAMG GTモデルの場合と同様に、最適な重量配分のためのトランスアクスル配置となっていて、後車軸に配置されている7速デュアルクラッチトランスミッションを介して後輪に伝達される。

このデュアルクラッチトランスミッションは、AMG GTブラックシリーズで使用するために採用され、800Nmのトルクにも対応。これによりシフトパフォーマンスが向上し、よりサーキット走行に適したものになったという。

GTブラックシリーズのエンブレム

 スタート回転数の増加、より敏感なホイールスリップコントロール、そしてサーキット用スポーツタイヤのおかげで、レーススタート機能も向上。さらに、トランスミッションの冷却性能も高められ、ギヤ比もわずかに変更されている。

 エンジンとトランスミッションをつなぐ「トルクチューブ」は、わずか13.9kgのカーボンファイバー製を採用し、AMG GTのアルミニウム製よりも約40%軽量。ドライブシャフトも軽量なライトカーボンファイバー製を採用している。

洗練されたエアロダイナミクス

 エクステリアでは「AMG GT3」と同じように新しい非常に大きな冷却空気入口グリルを採用。ラジエータートリムにはダーククロームの垂直支柱を備え、ホイールアーチクーラーにも中央の吸気口から直接空気が供給されるようになった。鎌形のフリックはここで空気の流れを最適化し、フロントアクスルでのダウンフォースを増加させるだけでなく、ブレーキの冷却も改善されている

ボンネットの2つの大きな排気口がエアロパフォーマンスを向上

 2つの大きな排気ダクトを備えた新しいカーボンファイバーボンネットも、モータースポーツから直接的に引用されたものの1つ。大きな排気ダクトは、斜めに配置された冷却パックから供給される暖かい空気をエンジンコンパートメントから導き出す。このテクノロジーもモータースポーツから直接派生していて、全体的なダウンフォースを高めると同時に空気抵抗が減少し、エンジンを冷却するための空気質量流量が最適化される。

ボンネットの大型ダクト
軽量なカーボンファイバー製ボンネット
ボディカラーのフィンとフロントカーボンファイバーウィングのホイールの後ろにある排気口を備えたシームレスに統合されたルーバー(エアスロット)は、効果的なホイールアーチベンチレーションによってフロントアクスルのダウンフォースを高める

調整式2段リアウイング

 リアビューは、大きなディフューザーを備えた新しいリアバンパー、外側の左右に2つの丸みを帯びたツインテールパイプトリム、サイドホイールアーチベンチレーション、革新的なリアエアロフォイルコンセプトが特徴。

 上下の翼型ブレードはカーボンファイバー製で、機械的に調整できる。2番目の低い位置にあるブレードは、クルマの前部からの空気に対して理想的なサイズという。

カーボンファイバー製の2段ウイング
中央部にある2段目の小さなウイングも角度調整が可能

 上部ブレードの中央部には可動フラップが搭載され、このアクティブな空力要素は、運転状況と選択されたAMG DYNAMICSモードに合わせて、電子的に20度調整され、縦方向と横方向のダイナミクスに影響を与える。フラットな状態では空気抵抗が減少し、最高速にすばやく到達するのに役立ち、傾斜した状態ではリアのダウンフォースを増加させ、ブレーキ性能とコーナリングの安定性を向上させる。なお、250km/hで400Kgをはるかに超えるダウンフォースを発生する。

選択したドライブプログラムに応じて、急ブレーキ、加速、コーナリング、ステアリングなどダイナミクスが検出されるとフラップが稼働。その後、3秒半の短いホールドタイムがあり、フラップは再び収縮する。レース用プログラムの場合は、20km/h~250km/hまでは傾斜がつき、速度が250km/hを超えると空気抵抗を減らすためにフラットになり、最高速にすばやく到達させる
リアゲート自体もカーボンファイバー製となり、軽量化に大幅に寄与する

AMGコイルオーバーサスペンション

 GTブラックシリーズにはAMG GT Rと同様、激しいサーキット走行に対応できるように、調整可能なスプリングプリロードを備えたAMGコイルオーバーサスペンションを採用。工場出荷時は、ホッケンハイムリンク、ラウジッツリング、ニュルブルクリンクなどの人気のあるサーキットに適した車高に設定されているという。

車高は走行シーンに合わせて、出荷時から最大10mm下げられる

 AMGコイルオーバーサスペンションは、電子制御された無段変速機のアダプティブダンピングシステムと組み合わされ、各ホイールのダンピングを現在のハンドリング状況や速度、道路状況に応じてダンパーの反発力と圧縮力の2つバルブを自動的に変更し、迅速かつ正確に最適な減衰特性に調整される。

 この機能もモータースポーツテクノロジーに基づいており、現在の速度に合わせてダンピングを連続的に可変調整することで、可能な限り最高の路面接地を確保し、高速領域でも安全性を高めるという。

V字型のセンターコンソールにあるカラーディスプレイボタンは、ドライブモード、トランスミッションロジック、サスペンション、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム=横滑り防止機能)、エキゾーストシステム、リアエアロフォイルフラップ、スタート/ストップといった機能が備わる
メーターディスプレイでも操作はできるが、これらのボタンはレーシンググローブを装着した状態でも操作しやすくするためのもの
ウイングのフラップも手動で稼働させられる

 AMG DYNAMIC SELECTドライブモードには、公道に最適な「コンフォート」、公道から滑りやすいトラックコンディションのサーキットでも使える「スポーツ」、グランプリコースのような本格サーキットにも適応する「スポーツ+」の3つのモードが設定される。

コンフォート
スポーツ
スポーツ+

専用のホイール&タイヤ、そしてブレーキ

 工場出荷時に取り付けられる標準タイヤは、GTブラックシリーズ用にミシュランと共同開発し、特別にカスタマイズされたソフトコンパウンドの「パイロットスポーツカップ2 R MO1A」。より高温となるサーキット走行のための改造オプションとしてハードコンパウンドの「パイロットスポーツカップ2 R MO2」も設定される。

フロントは10J×19インチホイールに285/35ZR19が、リアは12Jx20インチホイールに335/30ZR20が装着される

 また、特別なブレーキパッドとディスクに変更された黒色塗装のブレーキキャリパーと白色のレタリングを備えた標準的なセラミック高性能複合ブレーキシステムも、軽量で高性能であることが特徴となる。

9段階のグリップを実現するAMGトラクションコントロール

 サーキットを走る場合にESPをオフにした状態で「AMGトラクションコントロール」を使用すると、ドライバーはESPブレーキの介入なしに、各サーキットに理想的なトラクションを得られるように微調整が可能となる。AMGトラクションコントロールの制御は、GT3レーシングカーと同様に、エンジンエレクトロニクスの対応するマップを介してのみ行なわれる。

 加速中に車輪が設定したレベルのスリップに達すると、トラクションコントロールがエンジン出力を調整してこのレベルを超えないようにし、車両はこの指定されたスリップで加速を続ける。また、エンジンの駆動トルクだけでなく、電子デフロックのロックレベルも制御するという。

ダイヤルでトラクションのレベルを9段階で調整できる。レーシンググローブを着用していても操作しやすいように配慮された作り
レベルは見やすいメーター内にも表示される。レベル1は安全性が高いウェットでの運転用にプログラムされていて、レベル9ならドリフト走行も可能となる

スポーティなオレンジカラー

 内装はナッパレザーを採用し、オレンジ色のトップステッチを備えた黒のスポーティなDINAMICAマイクロファイバーと組み合わされる。オプションでグレーのトップステッチも選択可能。AMGカーボンファイバーバケットシートは、軽量と最適な横方向のサポートを兼ね備える。なお、アメリカ、カナダ、中国ではAMGパフォーマンスシートが標準装備となる。

ループプルハンドルにはマニュアルギアチェンジ用のアルミ製パドルシフトも装備
黒×オレンジがスポーティさを演出
ヘッド部分にはAMGのロゴが刺繍される
AMGロゴ入りスカッフプレート

オプションのAMGトラックパッケージ

 オプション設定となる「AMGトラックパッケージ」は、ロールオーバープロテクションシステム、運転手と助手席用の4点式シートベルト、消火器で構成。ロールオーバープロテクションシステムの軽量ボルト締めチタンチューブケージは、メインロールバー、シートベルトを取り付けるためのブレース、2つの後部ブレース、および後部の斜めのXブレースで構成される。このシステムは、すでにすぐれた車両の剛性をさらに高め、車両のドライビングダイナミクスにもプラスの影響を与え、パッシブセーフティも向上する。

チタン製のチューブケージが組まれる
オプション「AMGトラックパッケージ」が装着された状態
DIMLER「The new Mercedes-AMG GT Black Series」(10分)