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ダイムラー、レーシングカー由来のデザインを採用する新型「メルセデスAMG GT ブラックシリーズ」
730HP/800NmのメルセデスAMGでもっとも強力なV8エンジン
2020年10月7日 08:32
- 2020年10月5日(現地時間)発表
ダイムラーは10月5日(現地時間)、新型「メルセデスAMG GTブラックシリーズ」を発表した。
GTブラックシリーズは、サーキット走行を前提として、アクティブな空気力学と現在のAMG GT3レーシングカーに直接由来するデザインを組み合わせた1台。
メルセデスAMGでもっとも強力なV8エンジン
新しいGTブラックシリーズで搭載されるエンジンは、ドライサンプ潤滑のAMG V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンをベースにし、多くの変更が加えられたため新しい内部コード“M178LS2”が付与される。新開発のカムシャフトとエキゾーストマニホールドは、新しい点火順序によりガスサイクルをさらに改善。最高出力は537kW(730HP)/6700-6900rpmを発生し、最大トルクは800Nm/2000-6000rpmを生み出す。
ツインスクロールエキゾーストターボチャージャーは、スロットルレスポンスをさらに最適化する減摩ベアリングを採用。また、大きなコンプレッサーホイールのターボチャージャーが装着され、1時間あたり合計1100kgの空気を供給可能としている(AMG GTRは900kg/h)。そして、給気温度を常に可能な限り最良の範囲内に保つ大型のインタークーラーも完備する。
その圧倒的なパフォーマンスは、0-100km/hが3.2秒で、0-200km/hは9秒未満。最高速は325km/hをマークする。
AMG SPEEDSHIFT DCT7Gトランスミッション
動力はすべてのAMG GTモデルの場合と同様に、最適な重量配分のためのトランスアクスル配置となっていて、後車軸に配置されている7速デュアルクラッチトランスミッションを介して後輪に伝達される。
このデュアルクラッチトランスミッションは、AMG GTブラックシリーズで使用するために採用され、800Nmのトルクにも対応。これによりシフトパフォーマンスが向上し、よりサーキット走行に適したものになったという。
スタート回転数の増加、より敏感なホイールスリップコントロール、そしてサーキット用スポーツタイヤのおかげで、レーススタート機能も向上。さらに、トランスミッションの冷却性能も高められ、ギヤ比もわずかに変更されている。
エンジンとトランスミッションをつなぐ「トルクチューブ」は、わずか13.9kgのカーボンファイバー製を採用し、AMG GTのアルミニウム製よりも約40%軽量。ドライブシャフトも軽量なライトカーボンファイバー製を採用している。
洗練されたエアロダイナミクス
エクステリアでは「AMG GT3」と同じように新しい非常に大きな冷却空気入口グリルを採用。ラジエータートリムにはダーククロームの垂直支柱を備え、ホイールアーチクーラーにも中央の吸気口から直接空気が供給されるようになった。鎌形のフリックはここで空気の流れを最適化し、フロントアクスルでのダウンフォースを増加させるだけでなく、ブレーキの冷却も改善されている
ボンネットの2つの大きな排気口がエアロパフォーマンスを向上
2つの大きな排気ダクトを備えた新しいカーボンファイバーボンネットも、モータースポーツから直接的に引用されたものの1つ。大きな排気ダクトは、斜めに配置された冷却パックから供給される暖かい空気をエンジンコンパートメントから導き出す。このテクノロジーもモータースポーツから直接派生していて、全体的なダウンフォースを高めると同時に空気抵抗が減少し、エンジンを冷却するための空気質量流量が最適化される。
調整式2段リアウイング
リアビューは、大きなディフューザーを備えた新しいリアバンパー、外側の左右に2つの丸みを帯びたツインテールパイプトリム、サイドホイールアーチベンチレーション、革新的なリアエアロフォイルコンセプトが特徴。
上下の翼型ブレードはカーボンファイバー製で、機械的に調整できる。2番目の低い位置にあるブレードは、クルマの前部からの空気に対して理想的なサイズという。
上部ブレードの中央部には可動フラップが搭載され、このアクティブな空力要素は、運転状況と選択されたAMG DYNAMICSモードに合わせて、電子的に20度調整され、縦方向と横方向のダイナミクスに影響を与える。フラットな状態では空気抵抗が減少し、最高速にすばやく到達するのに役立ち、傾斜した状態ではリアのダウンフォースを増加させ、ブレーキ性能とコーナリングの安定性を向上させる。なお、250km/hで400Kgをはるかに超えるダウンフォースを発生する。
AMGコイルオーバーサスペンション
GTブラックシリーズにはAMG GT Rと同様、激しいサーキット走行に対応できるように、調整可能なスプリングプリロードを備えたAMGコイルオーバーサスペンションを採用。工場出荷時は、ホッケンハイムリンク、ラウジッツリング、ニュルブルクリンクなどの人気のあるサーキットに適した車高に設定されているという。
AMGコイルオーバーサスペンションは、電子制御された無段変速機のアダプティブダンピングシステムと組み合わされ、各ホイールのダンピングを現在のハンドリング状況や速度、道路状況に応じてダンパーの反発力と圧縮力の2つバルブを自動的に変更し、迅速かつ正確に最適な減衰特性に調整される。
この機能もモータースポーツテクノロジーに基づいており、現在の速度に合わせてダンピングを連続的に可変調整することで、可能な限り最高の路面接地を確保し、高速領域でも安全性を高めるという。
AMG DYNAMIC SELECTドライブモードには、公道に最適な「コンフォート」、公道から滑りやすいトラックコンディションのサーキットでも使える「スポーツ」、グランプリコースのような本格サーキットにも適応する「スポーツ+」の3つのモードが設定される。
専用のホイール&タイヤ、そしてブレーキ
工場出荷時に取り付けられる標準タイヤは、GTブラックシリーズ用にミシュランと共同開発し、特別にカスタマイズされたソフトコンパウンドの「パイロットスポーツカップ2 R MO1A」。より高温となるサーキット走行のための改造オプションとしてハードコンパウンドの「パイロットスポーツカップ2 R MO2」も設定される。
また、特別なブレーキパッドとディスクに変更された黒色塗装のブレーキキャリパーと白色のレタリングを備えた標準的なセラミック高性能複合ブレーキシステムも、軽量で高性能であることが特徴となる。
9段階のグリップを実現するAMGトラクションコントロール
サーキットを走る場合にESPをオフにした状態で「AMGトラクションコントロール」を使用すると、ドライバーはESPブレーキの介入なしに、各サーキットに理想的なトラクションを得られるように微調整が可能となる。AMGトラクションコントロールの制御は、GT3レーシングカーと同様に、エンジンエレクトロニクスの対応するマップを介してのみ行なわれる。
加速中に車輪が設定したレベルのスリップに達すると、トラクションコントロールがエンジン出力を調整してこのレベルを超えないようにし、車両はこの指定されたスリップで加速を続ける。また、エンジンの駆動トルクだけでなく、電子デフロックのロックレベルも制御するという。
スポーティなオレンジカラー
内装はナッパレザーを採用し、オレンジ色のトップステッチを備えた黒のスポーティなDINAMICAマイクロファイバーと組み合わされる。オプションでグレーのトップステッチも選択可能。AMGカーボンファイバーバケットシートは、軽量と最適な横方向のサポートを兼ね備える。なお、アメリカ、カナダ、中国ではAMGパフォーマンスシートが標準装備となる。