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ゼンリン、オンラインセミナーで3D地図データとUnreal Engine 4のスマートシティ活用を説明

2021年2月24日 開催

Unreal Engine 4でゼンリンの3Dデータを用いて再現した雨上がりの道路

 ゼンリンは2月24日、オンラインで「スマートシティにおけるゼンリン3D地図データ活用~まちづくりのDXに役立つゼンリン3D&2D地図ソリューション紹介~」と題したセミナーを開催した。ゼンリンが提供する3D地図データとリアルタイム3D制作プラットフォーム「Unreal Engine 4」を組み合わせる手法、特に自動運転車開発における活用法について紹介した。

ゼンリンは3D地図データをデジタルで提供

 最初は「まちづくりのDXに役立つゼンリン3D&2D地図ソリューション紹介」としてゼンリン 東京営業部 東京GIS営業三課 黒木湧太郎氏が、ゼンリンが提供している地図データについて紹介した。

 黒木氏は、スマートシティの実現にはまちづくりのDX化が必要とし、そのために仮想空間に現実世界の環境を再現する「デジタルツイン」と「シミュレーション」に活用できるとした。特に可視化シミュレーションにおいて、ゼンリンがそのベースとなる地図コンテンツを提供していることを紹介した。

スマートシティで使えるゼンリン地図データ
ゼンリンの3D地図データ

 黒木氏はゼンリンが提供している地図データを紹介し、3D地図、2D地図のほか、建物ポイントデータや混雑統計データの提供があるとして、周辺環境を3D化する手間とコストを大幅に削減できるとした。

 国内21都市をサポートする「3D都市モデルデータ」は現実の町並みを再現したテクスチャ付き3D地図データで、交通標識など細部にわたったデータであるとともに、高速道路の複雑なジャンクションを立体的に再現するほか、道路の掘り下げや効果の表現も可能となっているという。

3D都市モデルデータ
広域3次元モデルデータ
DXF地図データ

 また、全国版のデータでは詳細な建物情報を反映した「広域3次元モデルデータ」や、汎用CADソフトなどに取り込める「DXF地図データ」を紹介。専用Webサイトからデータをダウンロードで取得でき、活用しやすい点を強調した。オンラインでのデータ提供となるが、3Dデータに航空写真を貼り付けてダウンロードできる「航空写真貼付機能」など新機能も提供するとした。

用途に合わせて選べるDXFデータ
オンラインでデータを提供する

 さらに価格についても従量制から使い放題の定額プランまで用意し、用途に応じて使い分けができることと合わせて、すでに多くの企業等で使われていることも強調した。

Unreal Engine 4を採用する理由は、いろいろなデータを取り込み映像化できること

 続いて「Unreal Engine 4を用いたスマートシティ活用方法」として理経 新規事業推進室 室長 石川大樹氏が3D地図データとUnreal Engine 4を組み合わせ、仮想空間上に現実杭感を再現することを解説した。

 Unreal EngineとはEpic Gamesによって開発されたリアルタイム 3D 制作プラットフォーム。3Dゲーム用として開発されたものだが、シミュレーションやアニメーション制作などさまざまな分野に活用されている。

理経がUnreal Engine 4を使った実績
Unreal Engine 4に関する受賞歴

 理経では2016年にUnreal Engineを使った新しい事業部を立ち上げ、これまでに消防士訓練用VR開発としてプロの消防士が訓練できるものを産学官で共同研究したほか、自動車関係ではスバル向けに自動運転のための仮想空間、日立Astemo向けに自動運転技術の可視化にVRを活用するなどのプロジェクトを行なってきた。これまでの取り組みで、EPIC MegaGrantsというグローバルな表彰でも賞を受け、Epic Gamesから技術的な支援を受けられる状況になっている。

 石川氏は、現実空間の情報をもとにさまざまな要素を仮想空間上で再現するためには不可欠な3つの要素があり、3Dモデル、3Dモデルを物理的に存在するものと同様に動作させるソフトウェア、さまざまなライブデータを仮想空間上に再現するライブデータストリームが必要とした。

仮想空間に現実空間を再現する概要
なぜUnreal Engine 4が必要なのか
Unreal Engine 4を活用したスマートシティの事例

 そのうえで、数値データの視覚化による新たな分析手法の提供と、現実に難しいシミュレーションの実施に、リアルタイムレンダリングに強いゲームエンジンの活用を行なうとした。

 具体的にUnreal Engine 4の活用事例としては、国内ではこれといった事例はないものの、グローバルでは多く事例があり、例えばデジタルツインシャンハイでは、人の流れやクルマのシミュレーションが行なわれているという。

Unreal Engine 4を活用する利点

 また、理経がスマートシティの取り組みにおいてUnreal Engine 4を採用しているかというと、クオリティが高い映像が容易に作れることや、いろいろなデータを取り込みやすい点を挙げた。その上で「スマートシティでの活用における要求は、現実空間の特性を再現することや、ライブデータの連携といったステップが求められていく」と指摘した。

 さらに石川氏は「Unreal Engineはビジュアライゼーションやきれいな絵ができるというイメージの人が多いが、シミュレーション連携が得意で、どちらかというとわれわれがUnreal Engineを使ってる背景はそちらのほうが大きい」とUnreal Engine 4の利点を語り、「Carsim」など自動車向けのシミュレーションエンジンとリアルタイムに連携をして計算された情報を映像化することも得意だとした。

Unreal Engine 4なら自動運転のAIに学習させるデータも生成できる

 理経からは新規事業推進室 XRソリューショングループ グループ長の田村貴紀氏も登場し、車両開発や自動運転について説明した。

 田村氏は将来の自動運転について触れ、現在のADASは前車に追従やレーンキープなど結果的にカメラやLiDERなどのセンサーによって自車判断で運転しているが、将来の自動運転は「スマートシティに自車判断がプラスするかたちで自動運転というのが進んでいくと思う」と指摘した。

将来の自動運転ではスマートシティに自車判断がプラス
スマートシティで対応できると思われること
車両開発においてシミュレーションに必要な要素

 例えば、センサーでは車両から検知できないところは死角となるが、スマートシティ化することで、都市に存在するセンサーの情報をネットワーク越しに走行している車両に送ることで、死角をなくすことができるとした。自動駐車にしても、スマートシティと連携すれば、あいている場所に駐車することができるという。

 一方、Unreal Engine 4を開発に使うかについても説明。一般的な車両開発のシミュレーションにおいて、車両など5つの要素でシミュレーションしていたが、Unreal Engine 4を使うことで最後に「景観」という要素を加えることができるという。これまで景観という要素のクオリティが高くなく、Unreal Engine 4では時間帯や天候などを簡易的に変えることができ、豪雨や路面の反射、雨上がりの逆光なども再現可能なため、白線検知の評価もできるとした。

Unreal Engine 4で再現した夜の首都高速
Unreal Engine 4で再現した豪雨の首都高速

 Unreal Engine 4の活用方法としては、現時点では主に4つあり、自動運転用AI開発、測定データの可視化、評価結果の可視化、デザイン評価がある。

 そのなかで、自動運転用のAI開発について説明。AI開発には教師データという素材が必要で、そのデータをAIに見せることで自分の中で学習していくことになる。Unreal Engine 4で認識シミュレータとして映像を生成し、これが車両に搭載される疑似カメラの映像となり、自動運転用のコントローラにその映像を見せることで、知能ユニットが動作を行ない、車両シミュレータからの情報を認識シミュレータに戻すことでループが発生する。

Unreal Engine 4を用いたシミュレータの活用
Unreal Engine 4を用いた自動運転車両開発の連携
ゼンリンの3Dモデルについての評価

 また、AIに見せる仮想空間の制作フローの説明では、さまざまなデータが必要になるが、ゼンリンの3D地図データを用いて景観に対してリアリティを生み出すことが可能とし、ゼンリンの3Dデータについては、カーナビにも用いられている3Dモデルで建造物の座標位置が正確なことや、必要な部分だけ購入できること、一般的なFBX形式のデータでUnreal Engine 4への一括インポートが可能なことを評価した。