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パナソニック、「ナノイー X」説明会 車載向けが累計1000万台を突破した理由とは

2021年7月20日 開催

パナソニック株式会社 アプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部(左から)中田隆行主幹、中村浩二部長、山下幹弘主幹

新型コロナウイルスよりはるかに小さいナノイー粒子

 パナソニックは7月20日、空気質の向上に貢献するパナソニック独自のクリーンテクノロジー「ナノイー」および「ナノイー X(エックス)」に関するオンラインセミナーを開催した。

 まず、パナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 デバイス商品部の中村浩二部長より、ナノイーの基本説明が行なわれた。ちなみにナノイーとは「ナノテクノロジー( nano -technology)」と「エレクトリック( e lectric)」を掛け合わせた造語。すでに世界各国で商標登録を済ませているという。

 パナソニックが「空気清浄」をテーマとした研究に着手したのは24年前の1997年のこと。当時はハウスダストや臭いに対して、水が持つ臭気成分を溶かす性質を利用できないかとスタート。そして2003年にナノイー技術を確立させ、初めて空気清浄機に搭載。以降、さらなる小型化と高性能化が進められてきたという。

 このナノイーとは「空気中の水に高電圧を加えることで生成される、ナノサイズの微粒子イオンのこと」を指す。成分は水で弱酸性、サイズは約5nm~20nm。その中で反応性の高い「OHラジカル」という脱臭、菌、ウイルス、アレルギー物質抑制などに作用する、ナノイーの肝となる成分が生成されている。最大の特徴はその名のとおり「ナノ(10億分の1m)」サイズであること。花粉や人の細胞よりもはるかに小さく、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスよりも小さい。

ナノイーとは
ナノイーのサイズ
開発の歴史

 仕組みとしては、霧化電極を冷やすことで空気中の水を結露させ、その結露水に高電圧をかけることで、ミストに次々とレイリー(Rayleigh)分裂を起こさせ、ナノイーを生成&放出する流れ。先に述べたとおり極小サイズなので、衣服や絨毯などでも繊維の奥の奥にまで入り込めることが最大の特徴となる。

 また、ナノイーの中に生成されているOHラジカルは、水素(H)の電子が1つ足りない“超不安定”な状態となっているため、自らを安定させるために有害物質から水素(H)を奪おうとする特性を持つという。さらに、OHラジカルは水に包まれているので、空気中の酸素や窒素に反応することなく対象成分に近づくことができるのも強みとなる。水に包まれていないマイナスイオンなどは、空気中の酸素や窒素に反応することで短時間で消滅してしまい、対象成分までたどり着くことができないという。この残存時間を寿命とするとナノイーはマイナスイオンの約6倍も長生きで、寿命が長いことでより遠くの細かい部分にまで届くことが可能となる。

ナノイー製造方法
ナノサイズのメリット
OHラジカルは超不安定
水に包まれているため長持ち
寿命も長いから遠くまで届く

 ナノイーは、2006年に第2世代へ、2007年に第3世代へと進化するが、パナソニックは2008年にナノイーの進化とは別に次世代の「ナノイー X」の開発に着手。2011年にはナノイーは高反応成分量アップと小型化により第4世代へと進化し、2015年にはJR東日本の山手線(新型車両)にも搭載されるなど、自社の家電製品だけでなく、幅広いジャンルへと展開していった。

 そして2016年、山形大学の東山教授との共同開発により、ナノイー生成時にこれまでの「コロナ放電」から新たに「マルチリーダ放電」を採用することで、ナノイー内のOHラジカルの生成域の拡大に成功。毎秒4800億個のOHラジカルを生成していた従来技術に対して、毎秒4兆8000億個と約10倍のOHラジカルの生成を可能とする新技術を確立した。そして10倍の10はローマ字でXと書くことから「ナノイー X」と命名されたという。

ナノイー Xとは

 新たな放電方式で誕生したナノイー Xはには主に7つの効果が挙げられ「カビの抑制」「花粉の抑制」「タバコやペット、加齢臭など生活5大臭の抑制」「PM2.5など有害物質の分解」「菌やウイルスの除菌と抑制」「アレルギー物質の抑制」に加え、「美肌・美髪」の効果もあるという。ドライヤーや加湿器にもナノイー Xが搭載されるのはこの効果があるからだ。

 ナノイーのメカニズムには、繊維の奥まで入り込み臭いなどの原因物質と化学反応を起こし、染み付いた臭いを元から取り去ってくれる「分解」と、菌の細胞壁と細胞膜を損傷させ、タンパク質を奪い取ることで菌を抑制する「変性」の2つがある。変性についてはハーバード大学と共同検証によりその効果を確認済みという。こういった効果が実証されたことで「自社の40商品に搭載されるだけでなく、自動車メーカー8社、鉄道会社11社、エレベーター7社、コインランドリーのような業務用機器など、合計44社への納入実績がある」と中村氏は説明した。

7つの効果
メカニズム(分解)
メカニズム(変性)
導入実績

自動車への採用が広がるナノイー・ナノイー X

 昨今のコロナ禍では、オフィスや公共空間に加えて、電車やタクシーなどの公共交通機関や乗用車といった移動空間でも、空気質の向上が一層求められる傾向にあるとのこと。

 また、中村氏はコロナ禍の影響によりマイカーでの移動が約40%も増えていることや、3人に1人が車内の空気質を気にしているというアンケート結果を紹介すると同時に、すでに8社96車種にナノイーが搭載されていて、自動車メーカーもユーザーニーズに対応するため、搭載車種が少しずつ増えている現状を解説。

 ちなみに自動車では、2007年にマツダが初めて「MPV」の生産ラインに組み込んでいて、当時はまだナノイー Xができる前の第3世代のナノイーを搭載していた。また、2011年にはトヨタ自動車が「カローラ」の生産ラインに組み込み、その後トヨタは車室空間の空気質改善の取り組みの一環として積極的に導入しているそうで、7月19日に発表されたばかりの新型「アクア」にもナノイー Xが搭載されている。

清潔ニーズの高まり
空気質を気にする場所
8社96車種に搭載
新型アクアにも搭載されている

 ここ数年の需要増により、ナノイーとナノイー Xは、初出荷以来13年が経った2021年に累計販売台数が1000万台を突破。「2025年にはさらに倍となる累計2000万台を目標に掲げている」と中村氏は言う。

 この大きな目標を支えているのが、しっかりとした効果の根拠。パナソニックではトヨタの「ヴェルファイア」(容積は約7m 3 )を使い、運転席、運手席の後ろの2列目席、3列目の中央のヘッドレスト高さと、実際に搭乗者の顔のくる位置に試験対象を付着させた試験片を配置。ナノイーを1時間稼働させ、その効果を測定している。

 結果、菌とウイルスは共に99%以上を抑制。タバコ臭は1ランク、花粉は約70%抑制と、しっかりとした高効果を証明している。もちろんこれは1時間だけの稼働なので、さらに数時間と連続稼働させることで、この効果はさらに高まるという。

車載向けナノイーのテスト内容
菌抑制データ
ウイルス抑制データ
付着臭脱臭データ
花粉抑制データ
今後の展開目標

 なお、車載向けナノイー発生器本体は、とてもコンパクトでエアコンの送風機の近辺に搭載されるため、本体を目で見ることはまずないが、メーカーの規定に沿って車種に合わせたサイズの本体を搭載しているという。もちろん、すでにナノイーを搭載しているクルマでも、さらにドリンクホルダーに置くタイプのナノイー発生器を置けば、単純に車内のOHラジカルが増量するので、クリーン効果を高めることが可能となる。

 最後に中村氏は「クリーンにする効果は実証できているものの、実際にユーザーが効果を目にすることができないことも課題と捉えていて、いずれは効果の可視化を実現したい」と目標を語ってくれた。

ナノイー発生器本体
ナノイー X発生器本体