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「グランツーリスモ7」収録台数は400台以上 ポリフォニー・デジタルの山内一典氏に聞く
2021年9月16日 22:00
- 2022年3月4日 発売予定
2022年3月4日に発売予定のPlayStation 5/PlayStation 4用ソフト『グランツーリスモ7』(GT7)を開発するポリフォニー・デジタル 代表取締役 プレジデント 山内一典氏に、Car Watchはインタビューする機会を得た。インタビューの中で山内氏は、『GT7』の収録台数が400台以上になることを明かすとともに、新作に対する思いを語った。
初代グランツーリスモの誕生から25年、山内氏は「25年前と今とを比べると、新しいカーエンスージアストであったり、新しいカーファンを生み出す、社会的な環境がほとんどなくなってしまったんです。で、150年も続いている自動車の文化みたいなものをゼロから説明して、新しいクルマファン、クルマ好きを増やすことができる数少ないオプションの1つがグランツーリスモだろうと思っていたので、その自動車文化に対して、自動車産業に対しての責任感みたいなものはものすごく強くなりました」と、クルマをめぐる社会の変化、グランツーリスモの役割について話した。
150年もの自動車の文化とレースの文化を伝えるデザインに
そうした社会の変化がある中で、『GT7』の目標として長きにわたるシリーズのファンだけでなく、クルマをよく知らない初心者にも過去150年もの自動車の文化とレースの文化のすべてを伝えられるデザインにすることを目標に掲げ、シリーズの集大成としてゲームシステム、ゲームボリューム、あらゆる面で大きな進化を遂げたという。
──今、現実世界の自動車メーカーはカーボンニュートラルの実現に向けて、電動化やモビリティのサービス化など変革を求められています。将来的に、ガソリン車を好きなだけ走らせられるのはゲームの中のファンタジーになってしまうのかという寂しさを個人的には感じていますが、今現実世界に起こっていることに対する山内さんの考え、作品に込めたメッセージなどがあれば聞かせてほしいです。
山内氏:『GT7』にはもちろんポルシェのタイカンが入っていたり、テスラが入っていたりしていて、あるいはVISION GTの中には完全なEVのクルマもありますし、グランツーリスモって常に自動車産業、自動車文化とともに歩んできたので、そういった変化はグランツーリスモの中にも起きています。
けれども、重要なことは今回400台以上のクルマが最初から用意されます。それは本当に過去から現在までの名車たちです。そういったクルマたちがとても精度高くゲームの中で再現されていて、それがドライバブルな形で保存されていくという、そういう文化事業的な側面もあるので、それは僕らの重要なミッションだろうと思っています。
新しいクルマ好きの誕生のため“カー・コレクション・ゲーム”としてデザイン
『GT7』では、これまでのシリーズ以上に“カー・コレクション・ゲーム”としてデザインされた。自動車の文化に触れる最初の一歩はクルマの形と名前を知ること、覚えることとして、新たに「GTカフェ」が登場。ブランドセントラルや中古車ディーラーでクルマを購入しながらゲームをコンプリートしていく目的が与えられている。
──『GT7』の収録台数を聞いて驚きました。公式サイトで公開された「中古車ディーラー」の画面を拝見しましたが、本物の中古車情報サイトを見ているようで楽しい気分になりました。“カー・コレクション・ゲーム”としてデザインされている部分、ステアリングを動かす“SPORT”に関わる部分以外で、こだわっているところをお聞かせください。
山内氏:今回、カーコレクションという軸を新たに導入しました。これまでのグランツーリスモでもクルマは用意されていましたけれども、基本的にレースで勝ち、クレジットを稼ぎ、レースに勝つために必要なクルマを買い、というのを繰り返していけばゲームをコンプリートできたのです。けれども、今回はレースで勝つということに加えて、クルマをコレクションする要素を入れました。
それはなぜかというと、例えばこれまでのグランツーリスモは単にクリアするだけだったら、10台ぐらいのクルマを買えばクリアできたのです。クルマって、速さだけで分類してしまうとせいぜい5段階ぐらいしかないんですね。で、そのクルマの違いってほとんど出てこないのです。速さという軸で見ていくと、チューニングができればなおさらですよね。
これまでも例えばFF車限定とか、FR車限定といったレースを作ることでそれらのクルマにも興味を持ってもらうというか、そういうシチュエーションを作ってきましたが、それでも10台ぐらいあればゲームはコンプリートできてしまったのです。
それでは、さすがにもうまずいだろうって思いがあります。というのは、これまでグランツーリスモが好きだった方、すでにクルマが好きな方は、極端な話“俺はもうスバルのインプレッサ WRX 22Bが手に入ればそれでオッケー”という部分もあるんです。でも、そういう人ばかりではないというか、そもそも「356」と聞いてそれがクルマの名前と分かる人がほとんどいないかもしれない。「911」や「Z」ですらそうなんです。だからそういう人たちに対して、世界中にはこんなにたくさんのカーマニュファクチャラーがある、世界中にはこんなにたくさんの名車があるということを、イチから伝えたいと思っています。
そういう重大なミッションが僕らにはあって、なので今回カーコレクションという軸を加えて、世界中にこんなにたくさんのクルマたちがあって、それにはこんな文化的な背景があって、ということをきちんと伝えようと思っています。そのために「GTカフェ」という場所を作ったのです。
あのカフェに行くと、カーコレクションでこのクルマを集めようってことを授かるわけですけれども、同時にその集めたクルマに対してカフェのマスターがちゃんとそのクルマがどういう意味を持つのか、どういう文化的な背景を持つのかということを説明してくれるのです。そういうことを丹念に積み上げていかないと、やっぱり新しいクルマ好きって生まれないのかなと思っています。
Fanatecと新しいステアリングホイールをチューニング中
──グランツーリスモは、やはりステアリングコントローラーで楽しむ人も多いと思います。これまでに発表されている(T300RSなど)公式ステアリングコントローラーでも進化を感じ取れる部分はあるのでしょうか? また、Fanatecと「グランツーリスモ」のパートナーシップが発表されましたが、新しい公式ステアリングコントローラーの発売計画もあるのでしょうか?
山内氏:フィジックスが進化していて、シミュレーション部分が進化していますので、自然にクルマのコントロールができるはずで、それはスティックでもステアリングホイールでも感じることができると思います。これまでのグランツーリスモの操作フィールも自然であったと思うんですけれども、それがもっと自然にドライブできるようになっているだろうと思います。
ステアリングコントローラーに関しては、これまでにも様々なステアリングコントローラーを作っているメーカーの皆さんとパートナーシップを組んで製品を作ってきました。今回、新たにFanatecの皆さんと今やっている最中で、Fanatecが持っているダイレクトドライブのモーターはレスポンスがすごくいいので、ステアリングのほんの切り始め、この瞬間に入ってくるインフォメーションみたいなものの表現力があるんですね。ですから、そのあたりを今チューニングしてるところです。
『グランツーリスモSPORT』の活動を引き継ぎ、『GT7』でその幅を拡大
──自動車メーカーとのコラボ、eスポーツとして国体文化プログラムやオリンピック・バーチャルシリーズでの採用など、『グランツーリスモSPORT』ではオンライン・オフラインとゲームの中だけにとどまらない体験の場を広げたと思います。『グランツーリスモSPORT』での活動の振り返りと、『GT7』で目指す新しい方向性について、今の考えを聞かせてください。
山内氏:『グランツーリスモSPORT』で、僕らはデジタルモータースポーツ、Eモータースポーツでも心を揺さぶられ、あるいはモータースポーツとしてのエキサイトメントがそこに現に存在しうることが確認できましたよね。やっぱり、人間の持っている素晴らしさというか、スポーツとは何かみたいなことを僕らは発見したわけですけれども、それはそのまま『GT7』に引き継がれていくだろうと思います。同時に『GT7』は、カーライフシミュレーターという側面が完全に戻ってきますので、じっくりと自分だけの世界でカーライフを楽しむこともできるようになっていますので、そこの幅が広がっていると思います。
2022年3月4日に誕生する『グランツーリスモ7』では、どんな体験をさせてくれるのだろうかと、山内さんの話を聞いて期待が高まった。その発売日まで楽しみに待ちたい。
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