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日産自動車が開催した「#日産あんばさだー はたらくクルマ3」レポート
2021年11月25日 05:45
- 2021年11月23日 開催
日産自動車は2019年から社会や人々の生活をサポートする車両を集めて紹介する「はたらくクルマ」という取材会を開催してきた。そして11月23日に第3回となる「#日産あんばさだー はたらくクルマ3」を神奈川県にある日産追浜事業所内「GRANDRIVE」にて開催した。
開会前に担当者からは「日産ではたくさんの商用車を作っています。また、商用車でなくてもお仕事で日産のクルマを活用してくださる方も大勢います。こうした方々は私たちにとってすごく大事な存在です。クルマを社会のために活用してくださっている方々の存在があるからこそ、われわれが世に送り出すクルマが生きるということです。この場では仕事に対してクルマを活用されている方々に集まっていただいています。それぞれの取り組みや活動に対する想いなどを取材していただければと思います」というあいさつがあった。
今回の「#日産あんばさだー はたらくクルマ3」に展示された車両は以下のとおり。東京消防庁 広報車、厚木市立病院 災害派遣医療チーム「DMAT(ディーマット)」移動用車両、ローソン 移動販売車、宝自動車交通 リーフタクシー、日産自動車「移動会議室 Minimo」実証車両、シンコーフレックス 再生バッテリー使用ゴルフカート、コアテック 再生バッテリー使用スポーツカー、日産ノート ライフケアビークル、そして東京オートサロン2021用に製作し、バーチャルオートサロンや自動車メディアにて紹介された「NV350 CARAVAN ES MOBILITY CONCEPT」「NV350 CARAVAN OFFICE POD CONCEPT」だ。これらの車両を順に紹介していこう。
東京消防庁 広報車/日産エクストレイル
東京消防庁から持ち込まれたのはエクストレイルを使用した広報車両。役割は名称にあるとおり広報活動がメインで、東京消防庁の主要行事などに出場(消防車が出動することを出場という)するが、そのほかに災害現場などでの役割もある。
最近では熱海で発生した伊豆山土砂災害にも出場。現場の映像や画像などを記録する役割を行なったという。ただ、広報車が記録した画像や映像はリアルタイムの現場把握用ではなく、のちの分析、資料用の意味合いが強いという。
このように緊急出場もあるのでエクストレイルには救急車や消防車と同じく赤色灯が付いているので、緊急時は赤信号などでも交差点へ進入する走行が行なわれる。そのため、このクルマを運転するには通常の運転免許のほかに東京消防庁が設定する「機関員」という運転資格が必要。機関員の資格は車両の種類ごとに分けられていて、広報車は普通車ベースの車両の運転が許可される「普通機関員」の資格が必要となる。救急車の運転も普通機関員の資格が必要だ。このほか、ポンプ車を運転できるポンプ機関員、はしご車など運転できる特別捜査機関員がある。普通機関員はランク的には最も下になるが、緊急車両の運転許可となるだけに資格の取得はとても厳しいとのことだった。
厚木市立病院 災害派遣医療チーム「DMAT」移動用車両
神奈川県にある厚木市立病院に所属する災害派遣医療チーム「DMAT」が、現場などへの移動の際に使用するエクストレイル。なお、DMATは大規模災害などが発生した際に現場に急行して救命活動を行なうような機動性を持った医療チームのこと。
機動力が必要なチームなので専用の車両は欠かせない装備。それだけに以前からチーム移動用の車両はあったが、病院ということで設備投資の予算は医療関係が優先だったので古くなった車両を入れ替えできない状況が続いたという。そこで、クラウドファンディングにて資金調達を行なうことで車両をエクストレイルへ入れ替えることとなったが、厚木市立病院がある地域には日産自動車の技術系拠点である日産テクニカルセンターがあり、DMAT車両にエクストレイル導入の話を耳にしたテクニカルセンターは、在籍するデザイナーによる車両のカラーリングを提供。そうした流れで出来上がったのがこのクルマだ。
株式会社ローソン 移動販売車
日産NV150クリッパーをベースとするローソンの移動販売車。こちらは横浜市の磯子区にある「ローソン栗木一丁目店」が使用している車両で、主な活動としては買い物に出かけるのが難しい高齢者の元へ出向いて(老人ホームなど)食品や日用品を販売している。
向かう先はいくつかあって毎週決まった時間に出向いているが、高齢者施設では到着を楽しみにしてくれている人が多いらしく、移動販売車が着くと皆さん、楽しそうに商品を選んでいるとのことだ。なかには買いすぎてしまう人もいるようで、施設の職員さんから「来週も来てくれるからそんなに買わなくても大丈夫」と声がけしていることもあるという。また、オヤツとして買いたかったお団子など、お目当ての商品が売り切れていると「次回来るときには売り切れないように取っておいてほしい」とお願いされることも多いという。
このように行く先々でお客さんが「楽しみに待ってくれている」仕事だけに、移動販売車で実際に施設を回っているスタッフさんからは「やりがいがある」というコメントだった。
この移動販売車は全国で54台稼動しているということで、導入したいという話も多いため、今後はさらに増えていく予定だという。ちなみに現在はローソンのリアル店舗に付属する車両という位置づけで、積載する商品もリアル店舗の在庫を使っているが、今後は移動販売車のみの店舗が登場する可能性もあるとのこと。利用者だけでなく起業を考える人にとっても、この移動販売車は興味深いものではないだろうか。
宝自動車交通株式会社 リーフタクシー車両
こちらは東京近郊では見慣れたカラーリングのタクシーだが、リーフは珍しい。導入した宝自動車交通は以前から環境保護へ高い意識を持っていて、ハイブリッドカーも他社に先がけて導入していたという。リーフも初代からタクシーとして使用していた。
LPGを燃料とするタクシーは燃料補給を意外と頻繁に行なう必要があったため、ドライバーさんの行動に“燃料補給へ向かう”という負担があったが、リーフは電費が優れているので補給の手間がなくなったとのこと。また、メンテナンスコストも低く、整備しやすい面もあるという。タクシードライバー歴が15年というベテランドライバーさんからは「運転しやすいので勤務時の疲れ具合が以前より軽減した」というコメントも聞けた。
実証実験車「移動会議室 Minimo」
大日本印刷、日産自動車、ゼンリン、ソフトバンク、クワハラの5社で共同開発を進めている移動会議室車両。移動時間を有効に生かすことを目的としたもので、エルグランドのVIPパワーシートパッケージ(2列仕様)をベースとした。架装部分は前席と後席の間に隔壁を設けて、後席スペースを独立した部屋としている。設けた壁には33インチの大型モニターを設置。インターネット環境も搭載しているので、このモニターを使ってWeb会議などが行なえる。また、ノートPCなどの操作用にテーブルを備えている。
ドライバーとのコミュニケーションは壁があるため、従来のような声がけで行なうことができないので、この車両では付属のタブレットを通じて行なう。タブレットには任意のテキストも打ちこめるが、よく使用する依頼ごと、例えば「降車する」などについては定型文ごとにボタン化されているので、それを操作するだけドライバーへ意志を伝えられるようになっている。
リーフ搭載バッテリーを再利用するゴルフカート
ここから先はリーフに搭載していたバッテリーを再生して使用する車両を紹介する。まずはシンコーフレックスというメーカーの「LIBCART」から。
この車両はゴルフ場内で使用するカートで、従来は鉛バッテリーを使用していたが、シンコーフレックス自体が環境負荷の低減の取り組みを始めたことから、鉛バッテリー以外のバッテリーを探していた。そこにマッチしたのがリーフのバッテリー。BEVとしてはバッテリー能力が低下していてもカートであれば十分な性能が残っていることから、リーフの再生バッテリーを使用することにしたという。ちなみに、リーフにはセルが48個使われていて、そのうち7個をこのカートで使用する。
このことにより従来の鉛電池仕様より120~200kgの大幅な軽量化が実現し、稼働時間は約2倍になり、充電時間も約8時間から約3時間へ短縮。また、車重が軽いとタイヤなどの寿命も延びるので、メンテナンスに入る時間も削ることができたという。これらのメリットによりカートの保有台数削減なども可能になるので、ゴルフ場の運営コストの削減にもつながるとのことだ。
疾走感を重視するEVトライク
続いては省電化機械、設備メーカーであるコアテックが製作した再生バッテリーを使用したスポーツカー。こちらもリーフの再生バッテリーを使用している。3輪構造のトライクという乗り物で市販化に向けて開発中とのことだが、現在の仕様でほぼ完成。認可も取っているので2022年には発売になるようだ。
車両のスペックは最高出力が35kW、最高速が80km/h、航続距離が280kmと公称されている。車体サイズは2500mm×1300×1200mm(全長×全幅×全高)で車重は485kg。カウルはFRPでフレームはアルミツインチューブ。フロントサスペンションはダンパーが横にセットされたダブルウィッシュボーン。リアはオートバイのようなスイングアーム式を採用。モーターはリアにダイレクトドライブのインホイールモーターを使う。この方式のモーターは走りを重視するモビリティに適しているということだった。
日産自動車の展示
このあとは日産自動車からの展示車となる。内容はリーフベースのライフケアビークルに、東京オートサロン2021用に製作したコンセプトカー2台。このうちNV350キャラバンを使用したコンセプトカーについては別記事に掲載しているので今回は写真を中心に紹介していこう。