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マツダ、富士24時間は1.5リッターから1.8リッターバイオディーゼルに換装した「MAZDA2 Bio concept」で参戦 ミッションも強化へ

2022年5月10日 実施

5月10日に富士スピードウェイで実施された公式テストで走行する「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concept」

耐久性のあるドグミッションも準備中で、本番レースまでに搭載予定

 国内で唯一の24時間レースとなる「NAPAC富士SUPER TEC 24時間レース」がスーパー耐久シリーズの第2戦として6月4日~5日にかけて富士スピードウェイで開催される。24時間走り続ける過酷な耐久レースの実施に先駆けて、5月10日に夜間走行を含めた公式テストが富士スピードウェイで行なわれた。

 今季からスーパー耐久シリーズのST-Qクラスにシリーズ参戦している「MAZDA SPIRIT RACING」。2021年シーズンに新設されたST-Qクラスは、スーパー耐久シリーズの主催者となるSTO(スーパー耐久機構)が認めた「メーカー開発車両や各クラスに該当しない車両」が参戦可能な枠。自動車メーカーはマシンに極限の負荷がかかるモータースポーツシーンで車両開発を進めることで多くのデータが蓄積されるといい、積極的に複数社がエントリーしている。

ル・マン24時間で優勝したレーシングカー「787B」のゼッケン55を引き継いでいる

 このST-Qクラスには2021年シーズンからトヨタが「Corolla H2 concept」と「GR SUPRA」をエントリーさせているが、今季は開幕戦からマツダのほかにも、スバルの「BRZ CNF Concept」が増え、さらに今回の24時間レースから日産が「Z Racing Concept」を参戦させて活況を呈している。

スーパー耐久に参戦している広島マツダのHM RACERSからもメカニックが派遣されていて、メーカーのエンジニアと合わせた混成チームとなる

 マツダはひと足先に岡山国際サーキットで実施された昨年の最終戦で「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」をデビューさせ、今季からは「MAZDA2 Bio concept」としてシーズンフル参戦をスタートした。モータースポーツは一般的に主催者が車両規定を決めて、なるべく同一の条件下でレースができるようにしている。そのためエントラントごとのアップデートが許されていることは少ないが、自動車メーカーの車両開発の場として認められているST-Qクラスは、レースごとにマシンに改良を施すことが許可されている。

24時間レースはナイトセッションもあるため、公式テストでも夜間走行が実施された

 そのため、MAZDA SPIRIT RACINGではスポット参戦した昨年の最終戦から開幕戦の鈴鹿サーキット大会の間にも大小さまざまなアップデートを行なってきた。エンジンはSKYACTIV-D 1.5のままだが、タービンを可変ジオメトリターボチャージャーに換装。もちろん制御系も仕様に合わせて調整している。タービン自体はCX-30やMAZDA3などに採用されているSKYACTIV-D 1.8のもので、高回転域での出力とトルクの向上が期待されていた。

タービンは開幕戦の時点で可変ジオメトリーターボチャージャーに換装されていた

 だが、トランスミッションは純正のままだったため負担がかかり、開幕戦の練習走行時にブローしてしまった。トランスミッションは、モデルによってトルク許容度が決められているため負荷がかかってしまうことは予想されていたが、トライアンドエラーも開発テストの一部で、どの程度の負荷がかかるとギヤが破損するかのデータが取れたはず。開幕戦の5時間レース中はトランスミッションの耐久性を考慮して出力を抑制したため、108周を走り切って完走を果たした。

 開幕戦では鈴鹿サーキットを訪れていたマツダの丸本明代表取締役社長から「シーズン中に高出力エンジンを搭載したマシンを投入する」とサプライズでの発表があり、この発言に基づいたものか定かではないが、第2戦の富士24時間レースに向けた公式テストでは、エンジンが開幕戦のSKYACTIV-D 1.5からSKYACTIV-D 1.8に換装されている。

昨シーズンの最終戦と3月の開幕戦はSKYACTIV-D 1.5を搭載していたが、満を持してSKYACTIV-D 1.8に変更。レースではウィークポイントとなっていたトランスミッションを強化することで、ラップタイムの向上も期待できる

 トランスミッションは純正のままだったため、開幕戦と同様に出力を絞った状態でのテスト走行となったが、富士24時間レースまでの期間で強化したトランスミッションも導入するとのこと。搭載される予定のトランスミッションは市販車に搭載されている上位グレードのタイプではなく、耐久性に優れたドグミッションになるようだ。ギヤ単体の強度が高くなっているため、24時間レースでも威力を発揮してくれるはず。

燃料は年間を通してユーグレナのサステオを使用。スーパー耐久のST-Qクラスではカーボンニュートラルに向けた取り組みも行なっていて、MAZDA2 Bio conceptは使用済み食用油と微細藻類のユーグレナから抽出した次世代バイオディーゼル燃料を使っている

 MAZDA2 Bio conceptは、富士スピードウェイでの公式テストでのラップタイムが2分6秒台となっていて、同じ車格のロードスターなどのST-5は2分4秒台前半でラップしている。目標としては2分4秒台を上まわるラップタイムで周回することとのことで、排気量アップとトランスミッションの強化がどのような影響をおよぼすのか注目したい。

 チームとして初めて24時間レースに参戦するMAZDA SPIRIT RACING。ドライバーはチーム代表も務める前田育男選手を筆頭に、社内テストドライバーの寺川和紘選手、レーシングドライバーの井尻薫選手、関豊選手、手塚祐弥選手とカーグラフィックの加藤哲也選手を加えた6名が務める。新たなパワートレーンや各種のアップデートがどのような結果をもたらすのか24時間レースの行方を見届けてもらいたい。

24時間耐久レースでの飛躍を期待したい