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ヴァレオの電動化製品「eDrive」や最新LiDAR「SCALA 3」をデモカーで体験してみた
2022年6月13日 13:01
- 2022年6月6日 実施
過去30年で15億個以上の製品をグローバルに出荷しているヴァレオ
フランスに本拠地を持つティア1部品メーカーの「ヴァレオ(Valeo)」は、5月に横浜パシフィコで開催された「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA」に出展した「48V ライト eシティーカー」や、2019年に群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター:CRANTS(Center for Reseach on Adoption of NextGen Transportation Systems)と共同開発した「48V 4WD EV軽トラック」、最新の第3世代3Dレーザースキャナー「SCALA 3」など、ヴァレオ製品を体感できるメディア向け試乗会を実施した。
ヴァレオは1985年に日本法人ヴァレオジャパンを立ち上げ、日立オートモティブシステムズ(現:日立アステモ)と共同出資でヴァレオユニシアトランスミッション(現:ヴァレオカペックジャパン)を設立。また、自動車用ライトを手掛ける市光工業もグループに加え、活動の幅を徐々に拡大している。
試乗前の説明会では、ヴァレオジャパン取締役CTOの武内稔氏が「自動車社会がカーボンニュートラルとより安全なモビリティに大きく変革していく中、ヴァレオもイノベーションとテクノロジでそれらに対応していきます」とあいさつ。
続けてヴァレオジャパン 日本パワートレーンシステム ビジネスグループ リサーチ&ディベロップメント ディレクターの高橋明博氏より、2022年2月に発表した2025年へ向けての価値創造戦略「Move Up」について説明があり、「電動化の加速」「ADAS(先進運転支援システム)の加速」「ライティング・エブリウェアの再創出」「インテリア・エクスペリエンスの再創出」という4つのメガトレンドを軸に事業を成長させていくと、今後の方向性を改めて紹介。
また、ヴァレオは2016年にドイツの電機メーカー「シーメンス(Siemens)」と共同で立ち上げたヴァレオシーメンスeオートモーティブを、2022年7月に100%子会社化することを発表していて、高電圧の電動化製品の開発強化を加速させている。
主な電動化製品については、インバータやモーターといったパワートレーン系と、ヒーターやコンプレッサなどサーマル(温度)マネージメント系があり、今後もEV(電気自動車)の市場は拡大していき、「2021年~2030年にかけては高電圧パワートレーンは年平均17.5%の成長を、マイルドハイブリッドも年平均15%程度の成長を見込んでいる」と高橋氏はいう。
ADASについては、ヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムズ R&Dディレクターの伊藤善仁氏より解説が行なわれた。
ヴァレオのADAS関連製品の開発は、1991年の超音波センサーに始まり、バックガイド線付きリアカメラ、3Dサラウンドビューなどを経て、2017年には3D LiDAR(初代SCALA)を開発し、アウディやホンダなどが次々に搭載。2021年にはホンダの「レジェンド」が世界初のレベル3自動運転を実現させたのも記憶に新しいところ。近年ではさらに進化させたSCALA 2が、ダイムラーのトレーラーに搭載されている。
ヴァレオの主なADAS関連製品は、超音波センサー、サテライトカメラ、レーダー、LiDAR、フロントカメラなど、近距離から長距離はもちろん360度センシングできるセンサーまでを揃えている。もちろん、それらのセンサーで読み取ったデータを計算するコンピューティングハードウェアや、自動駐車やアクティブセーフティといったソフトウェアも手掛けている。また、2020年11月には自動運転レベル4を実現する「Drive4U」の実証走行までも実現している。
こういったADAS関連製品の市場は、2021年は150億ユーロ規模だが、2035年には8倍の1200億ユーロまで拡大すると予想され、伊藤氏は「ヴァレオは過去30年で15億個以上の製品をグローバルに出荷してきた実績があり、今後5年でその2倍の出荷を想定している」という。
すでにグローバル規模で超音波センサーは44%、サテライトカメラは21%、フロントカメラは11%のシェアを持ち、2035年までにそれぞれ47%、25%、20%まで伸ばす計画を掲げている。
そのため現在は、こういったADASにつながる製品を、新規のモビリティメーカーが手軽に利用できるようにと、車載センサーとハードウェアとソフトウェアをパッケージングした「モビリティキット」として用意。自動車だけでなく、小型モビリティや循環型モビリティなどへの普及を想定しているという。
そのほかにも、現在開発中という「ニアフィールドLiDAR」は、従来のLiDARのようにレーザー光を上下左右に照射するのではなく、フラッシュ方式で78°×110°の範囲にカメラのストロボのように一度に照射し、跳ね返ってくる速度で距離を算出。収集した点群データにはすべて位置情報が入っていて、周囲の情報を立体で認識することが可能という。また、広範囲を瞬時に把握できる代わりに長距離の把握は苦手となるため、自動車へ搭載する際は、死角や至近距離にある障害物を完全な形状で検出する用途などが想定されている。
電動モーターや最新のLiDAR(SCALA 3)を体験
今回はヴァレオの電動化製品とADAS製品を搭載したデモカーなど、計4台の試乗車が用意された。2台は48Vのモーターなどを搭載したコンパクトカーと軽トラック。1台は高電圧製品eAxleを搭載した市販車のPHEV。もう1台は最新の次世代3Dレイザースキャナー(LiDAR)の「SCALA 3」を搭載した開発車両。
都市型モビリティの「48V ライトeシティーカー」
シトロエンのコンパクトEVの「ami(アミ)」には、ノーマルでヴァレオのモーターeAccessがフロントに搭載されているが、「L6」カテゴリー車両のため最高速が45km/hと制限が設けられている。そこでデモカーは、ひとつ上のL7カテゴリー仕様と仮定して、モーターの出力を6kWから10.5KWへアップ。あわせて減速比も15.6から11.4へと変更。最高速は90km/hに達するようになっている。出力アップさせたため、48Vバッテリも5.5kWから8.64kWに変更していて、これにより車重はノーマルの476kgから533kgと57kgほど増えている。なお、後部にはヴァレオ製の48/12V DCDCコンバータも搭載している。
アクセルペダルに足を乗せ、軽く踏み込めば車体が軽いので2名乗車でもスッと動き出す。市販車ベースということもあり乗り心地もよく、音も比較的静か。さらに床までアクセルペダルを踏み込むと、力強く滑らかに加速していき、あっというまに60km/hに到達。テストコースのため直線が限られていたが、まだまだ余力を残していて、そのまま走っていれば90km/hにもすぐに到達できそうな勢いだった。
48V 4WD EV軽トラック
近距離移動や物流のラストワンマイル、農作業などでの使用を想定とした48V 4WD EV軽トラックは、ヴァレオが製品を提供して、群馬大学の次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)が車両を製作。日本の軽トラックは4WDの比率が高いことから、デモカーは前後に48Vインバータと48Vモーターをセットにした15kWの「eDrive」を搭載して4輪駆動モデルに仕上げている。
4WDなので走り出しは力強く、グイグイと路面をつかんでいく。若干モーターの音が大きい感じがするものの、通常の軽トラックよりも車体は安定していて、とても安心感が強い。エンジンと違い踏んだ分だけスッとトルクが出て前に進むので、気持ちよくサクサク運転できた。
高電圧製品「eAxle」を搭載したPHEV
DS オートモビルのPHEV(プラグインハイブリッド)4WDモデル「DS 7 クロスバックE-TENSE 4×4」には、ヴァレオシーメンスeオートモーティブが手掛ける83kW(112PS)/166Nmを発生する高電圧製品「eAxle」をリアに搭載。そのほかにも、ソナーやセンサー、ライト類、サーマルシステムなど多数の製品が採用されている。
DS 7のほかにも、メルセデス・ベンツの「EQS」やフォルクスワーゲンの「ID.4」など、すでに多くのEVやハイブリッド車に採用されている。
次世代3Dレーザースキャナー(LiDAR)の「SCALA 3」(プロトタイプ)
SCALA 3を搭載していた車両は、ルーフに開発中のセンサーなどが多数装着されていたため撮影NG。ルーフの前方に搭載していたSCALA 3のみ撮影が許可された。
SCALA 3は初代SCALAと比較すると水平方向の視野角で8倍、解像度が265倍、点群密度が175倍のスペックを誇る。毎秒25フレームという速度はそのままで、性能を飛躍的に向上させている。この性能向上の主目的は、自動運転における高速道路での車速を130km/hまで想定し、もし130km/hで走っていても遠くの落下物を素早く正しく検知するためという。
この日はかなり強い雨が降っていたが、走り出す前からディスプレイには周囲をキレイに映し出していて、裸眼ではとても見えない遠くの路面のひび割れや路面に書かれた白文字、設置されているパイロンなども完璧に検知していた。あまりにリアルなのでカメラで撮影した映像のようにも見えてしまうが、これは収集した点群データをコンピュータが処理して、人間に見やすく画面上に表示しているもの。