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ブラックベリー QNX、フォルクスワーゲングループのソフトウエア子会社CARIAD(キャリアド)が採用
2022年8月26日 15:09
- 2022年8月26日 開催
カナダのソフトウエア・ベンダーであるブラックベリー(BlackBerry)は8月26日、オンラインで記者会見を開催し、同社が自動車メーカーなどに提供している自動車用OS「QNX」が、フォルクスワーゲングループのソフトウエア子会社「CARIAD」(キャリアド)が開発しているソフトウエア・プラットホーム「VW.OS」の構成要素として採用されたことを明らかにした。
また、同社は会見の中で、「BlackBerry IVY」と呼ばれるエッジからクラウドまで一貫して扱えるソフトウエア・プラットホームに関しても説明を行ない、ソフトウエアリソースの少ない自動車メーカーや部品メーカーなどでも、車両からのデータを容易にクラウドにアップロードし、マシンラーニングの学習環境などを整えて、新しいアプリケーションやサービスを構築することができると説明した。
自動運転やデジタルコックピット用のOSとして自動車メーカーに採用が進むQNX
ブラックベリー シニアバイスプレジデント 兼 BlackBerry Technology Solutions責任者 ジョン・ウォール氏は、ブラックベリーのビジネスの現状や直近に発表された自動車メーカーなどとの提携などに関して説明した。
ウォール氏は「3月22日に開催された株主総会では、過去最高のデザインウイン(筆者注:顧客が自社製品の採用を決定すること)があったと説明。全体で119件のデザインウインがあり、同社が車載インフォテインメントシステムや自動運転・ADAS向けに提供しているOS「QNX」の自動車への新規採用が50件あったと説明した。そして、最終的に製品として出荷されていない受注残に関しては1年前が4億9000万ドルだったところ、現在は5億6000万ドルとなっており、順調に受注が増えていっているとアナウンスした。
自動車関連のビジネスでは、2021年には累計で1億9500万台のQNXを搭載した自動車が出荷済みで、2022年にはそれが2億1500万台まで伸びる見通しになっており、それには日本市場での成長も大きく寄与しているとウォール氏は説明した。
ウォール氏は「すでに世界のトップ10メーカーすべてで採用されており、自動車メーカーとしては45社で採用され、25あるEVメーカーのうち24社で採用されている。270を超える車種で採用されており、ティアワンの部品メーカーのうち上位7社すべてで採用が決まっている」と述べ、EVメーカーではテスラを除く全社で採用されているほか、大手自動車メーカーのすべてが同社の顧客になっていると報告した。
そうした自動車メーカーの中で最新の採用例としてBMWを挙げ、従来はADASのOSとしてLinuxを採用してきたBMWが、Linuxに代わってQNXを採用したことを強調。また、ボルボの商用車部門であるボルボ・トラックスでも複数の領域で採用が決まるなど、QNXの採用が多くの自動車メーカーで進んでいることを強調した。
フォルクスワーゲングループ子会社CARIADが、QNXをVW.OSに採用
また、ウォール氏はQNXをソフトウエアとしてより安全で安心に使えるものにするだけでなく、QNXを動かすハードウエア、つまり半導体メーカーが提供するSoCとも連携を深め、自動車メーカーがより安心して使えるようなエコシステムを構築することを重要視していると強調した。
ウォール氏は「NVIDIAやQualcommのような車載半導体を提供する半導体メーカーと協業している。NVIDIAが提供しているDRIVE OSにはQNXの技術が使われており、Qualcommのデジタルコクピット向けのデザインウインのうち88%はQNXのHypervisorが利用されている」と述べ、半導体メーカーとの協業に関しても順調に進んでいると説明した。
そうしたQNXの最新のデザインウインとして、ドイツのフォルクスワーゲングループのソフトウエア子会社となる「CARIAD」(キャリアド)がQNXの採用を決めたことを明らかにした。CARIADは、フォルクスワーゲングループ傘下の自動車メーカー(フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニなど)向けの自動運転などのソフトウエアを横断的に開発するソフトウエア・ベンダーで、VW.OSと呼ばれるソフトウエア・プラットホームを開発し、それをフォルクスワーゲングループの自動車メーカーに供給している。ブラックベリーによれば、QNX OS for Safety 2.2と呼ばれる機能安全を実現するソフトウエアコンポーネントを含むADAS/自動運転向けのQNXの技術がVW.OSに採用されることになったという。
また、中国のティアワン部品メーカー「PATEO」のデジタルコクピット向けソリューション「PATEO CONNECT+」にもQNX Hypervisorなどを含むQNXのソフトウエアが採用されたことも同時に明らかにした。
BlackBerry IVYを利用すると、自動車からクラウドまで一気通貫にサポートできるシステムを容易に構築可能
ブラックベリー シニアバイスプレジデント IVY Platform Development サラ・タティス氏は、BlackBerry IVY(ブラックベリー・アイビー)と呼ばれるエッジからクラウドまで一気通貫に提供される自動車向けのソフトウエア開発プラットホームに関しての説明を行なった。
タティス氏によれば「BlackBerry IVYはAWS(Amazon Web Services、Amazon傘下のクラウドサービス事業者)と共同で開発しているサービスで、OSやハードウエア、クラウドサービスに対して中立に利用することが可能なプラットホームになっている。自動車メーカーがマシンラーニングなどを活用しながらアプリケーションやサービスを開発することができる」とのことで、自動車メーカーが自前でソフトウエアのインフラを持っていなくても、エッジとなる自動車からセンサーが生成するデータをクラウドにアップロードし、クラウド側でそのデータを利用してマシンラーニングの学習を行なう……というプロセスを容易に回せるようにして、自動車メーカーが新しいアプリケーションやサービスを簡単に提供できるようにする仕組みだと説明した。
その上でBlackBerry IVY Innovation Fundという、BlackBerry IVYに向けた製品を開発する企業をサポートする仕組みを立ち上げており、そこにドイツのスタートアップ企業であるCOMPREDICTが加わったことなどを明らかにした。