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三菱自動車、2022年度 第2四半期決算は売上高30.1%増の1兆1581億9200万円、営業利益236.0%増の846億2800万円で増収増益 通期見通しも上方修正

2022年11月2日 開催

三菱自動車工業株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏

 三菱自動車工業は11月2日、2022年度 第2四半期(2022年4月1日~2022年9月30日)の決算を発表した。

 第2四半期の売上高は前年同期(8905億6700万円)から30.1%増となる1兆1581億9200万円、営業利益は前年同期(251億8600万円)から236.0%増の846億2800万円、営業利益率は7.3%、当期純利益は前年同期(216億7000万円)から281.8%増の827億3600万円。また、グローバル販売台数は前年同期(44万2000台)から1万6000台減の42万6000台となった。

022年度 第2四半期の業績サマリー

 オンライン開催された決算説明会では、第2四半期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏が説明。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏

 第2四半期は世界的な部品供給不足や物流の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻などにより経営環境は不透明な状況が続いているが、三菱自動車は販売の質的改善、手取り改善活動を推進することに集中し、さらに為替の追い風も受けて前年同期比で大幅に決算内容を改善していると解説した。

 前年同期から236.0%増の846億2800万円となった営業利益の変動要因分析では、382億円の増益要因となった「台数」「MIX/売価」では、台数における地域構成の好転、車種ミックスや販売価格の好転が出ていると紹介。「販売費」では広告・宣伝費を計画どおり積み増しつつ、主に北米地域での販売奨励金の減少が続いていることが大きく影響して99億円の増益要因となった。また、「為替」については米ドル、豪ドルが大きく影響して496億円の増益要因となっている。

 一方、高騰している原材料価格は資材費低減活動で一部を吸収したものの、さらに工場経費、輸送費などが悪化したことが加わって「資材費/輸送費」による355億円、来期以降の新製品投入準備のために計画どおり積み増しを行なった「研究開発費」による83億円が減益要因となっている。

 池谷氏は変動要因分析で「上期で見れば為替影響を除いた状態でも、台数、ミックスと販売費の削減などで資材費、物流費、研究開発投資の増加を吸収して増益決算となっています。全社一丸となった手取り改善戦略の成果と考えております」とアピールしている

2022年度上期における営業利益の増減要因
第2四半期3か月における営業利益の増減要因

 販売台数では半導体の供給不足による生産台数の制約影響などによって全体では前年同期から4%減の42万6000台となっており、とくに“ゼロコロナ政策”を堅持している中国、モデルラインアップの減少とロシア・ウクライナ問題による車両供給停止の影響を受けた欧州の減少が第1四半期から継続している。また、車両供給の不足から北米での販売も低調な数字となっている。

2022年度上期のグローバル販売台数と市場別の内訳

 市場別では、主力となっているアセアン市場ではいずれの国でもコロナ禍以前の状況を取り戻しつつあり、需要も堅調に回復。一方で車両供給不足の制約が続き、解消のめどは立っていない。豪州・NZ市場では予想を上まわる受注を得て好調を維持。部品供給不足による生産台数の影響を、車両装備計画を見直して生産台数を確保して販売台数の最大化につなげていく。

 北米市場では旺盛な需要に対して供給が追いつかない状況が第1四半期から続き、ディーラーの在庫車両は過去最低水準で推移しているという。とくに新型「アウトランダー」が在庫不足の影響を大きく受け、販売を伸ばせない状況となっている。10月12日からは新型「アウトランダーPHEV」は米国でのZEV規制に適合するモデルとなっており、PHEVやS-AWCといった商品特長が大きな反響を得て、ガソリンモデルと合わせての露出によって販売の相乗効果を図っていくとした。

 しかし、大幅な金利上昇などによる景気後退の可能性もあり、自動車需要の下振れリスクも想定しており、販売施策であるインセンティブは現在は低水準となっているが、在庫が正常化に向かっているセグメントでは底打ち状態になっているケースもあるという。一方で供給不足も継続しており、需要の見通しは難しいとした。池谷氏は新型アウトランダーの市場投入以降は価格訴求からの脱皮を目指しており、商品力とブランドを訴求する販売を継続していくと述べた。

 日本国内でも車両供給の不足による影響から販売台数は全体的に低調となっているが、主力車種であるアウトランダーPHEVや「デリカ D:5」などの受注が好調に推移。また、6月から本格受注を開始した「eKクロス EV」は、これまでに6500台以上を受注して好調なスタートを切っているとアピール。eKクロス EVは誰もが気軽に選べる身近な軽バッテリEV(電気自動車)として、バッテリEVならではの静粛性、日常使いに十分な航続距離、手に入れやすい価格、経済的なランニングコストなどが好評を得ていると紹介した。

アセアン市場での販売動向
豪州・ニュージーランド市場での販売動向
北米市場での販売動向
日本市場での販売動向

通期業績見通しで販売台数以外の項目を上方修正

2022年度通期の業績見通し

 続いて2022年度通期の業績見通しを三菱自動車工業 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤隆雄氏が説明。

 加藤氏は2022年度上期について、第1四半期からの力強い需要動向を維持して想定を上まわって好調に推移したと述べ、為替の影響もありつつ、全社一丸となって課題解決に取り組んできた成果であると評価。

 また、7月に公表した通期見通しに対し、営業利益、経常利益は80%前後、当期純利益は90%まで進捗していることから、販売台数以外の通期の業績見通しを上方修正。売上高を2兆3500億円から2兆5300億円、営業利益を1100億円から1700億円、経常利益を1200億円から1800億円、当期純利益を900億円から1400億円、販売台数を93万8000台から90万8000台にそれぞれ修正した。

「2022年度下期も世界経済はインフレやそれに対応する利上げ施策、ロシア・ウクライナ問題をはじめとする国際情勢などによりリセッション(景気後退)に陥るリスクが高まることが予想されています。また、為替の急激な変動といった激変も予想される経営環境で、迅速かつ柔軟に対応できる企業体質への転換を図ることにより、修正した通期業績見通しを達成すべく全力を尽くしてまいります」と加藤氏は述べている。

対前年度比の営業利益見通し変動要因
前回公表値からの営業利益見通し変動要因
2022年度通期の販売台数見通し

「XFC コンセプト」ベースのコンパクトSUVを2023年度にアセアン各国で順次発売

10月26日~30日に開催された「ベトナムモーターショー 2022」で参考出品された「XFC コンセプト」

 2022年度上期のビジネスハイライトでは、日本国内で11月に「ミニキャブ・ミーブ」を販売再開、6月から本格受注をスタートしたeKクロス EVと合わせて軽バッテリEVラインアップを強化して、電動車の先駆者として今後も気候変動やエネルギー問題の解決、カーボンニュートラルの実現に貢献していくとした。また、2022年度上期には日本国内でアウトランダーPHEVを1万749台販売。「エクリプス クロスPHEV」も2430台を販売して国内PHEVシェアの1位と2位に輝き、合わせて国内シェアの約65%を占める結果になっている。

 海外では8月に開催された「第29回インドネシア国際オートショー」で発表した新型「エクスパンダー クロス」をインドネシアで生産。アセアン市場を中心に順次展開して、好評を得ている「エクスパンダー」と合わせてアセアン市場でのプレゼンスをさらに高めていく。欧州市場でも2023年3月から新型コンパクトSUV「ASX」の販売を開始することを発表。アライアンスパートナーであるルノーから欧州市場向けにOEM供給されるモデルで、今後も各販売地域の特性に沿った商品ラインアップを強化していく。

 将来的なモデルとしては、10月26日~30日に開催された「ベトナムモーターショー 2022」で参考出品された「XFC コンセプト」を紹介。これまでアセアン市場向けの商品になかったコンパクトSUVとなるこのニューモデルは、2023年度にベトナムを含むアセアン各国で順次発売になり、将来的には電動車の追加、アセアン以外の地域における販売なども計画しており、「アセアン戦略車から世界戦略車として三菱自動車の販売を牽引するエクスパンダーのような主力車種に育てていきたい」との考えを述べた。

6月から本格受注を開始した「eKクロス EV」に加え、11月24日からは「ミニキャブ・ミーブ」の販売を再開。軽バッテリEVラインアップを強化していく
「アウトランダーPHEV」は国内PHEVシェア1位の1万749台、「エクリプス クロスPHEV」は同シェア2位の2430台を販売。この2モデルによって国内PHEV市場のトップランナーになっている
SUVラインアップのさらなる強化で三菱自動車のプレゼンスを高めていく

 最後に加藤氏は「新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから3年が経過しましたが、ワクチン接種率の向上なども相まってようやく終息に向かいつつあるようです。日本を含む各国の行動制限も順次緩和されてきました。また、引き続き楽観視はできませんが、半導体の供給体制も徐々に整備されつつあります。一方で解決のめどが立っていないロシア・ウクライナ情勢、それにより急速に上昇しているエネルギー価格、急速かつ大幅な円安による原材料価格の高騰や、かつてない水準でのインフレとこれを抑制するための急激な金利上昇、将来の景気後退懸念など、われわれを取り巻くマクロ環境はさらに不確実性を増してきたように感じております」

「そのようななか、当社業績は昨年来進めてまいりました手取り収益改善活動の成果が顕在化してきたことに為替の追い風が加わり、前年同期比で大幅に改善しております。今後も原材料価格の高騰やインフレといったコスト圧迫要因は認識しておりますが、上期実績を踏まえて第1四半期に続き、通期見通しの修正を行ないました。われわれを取り巻く環境は日々変化し、舵取りが難しい状況ではありますが、収益力のさらなる向上を図り、本中経の最終年度となる今年度の修正計画を達成すべく、引き続き全力を尽くしてまいります」と締めくくった。

質疑応答

質疑応答に対応する加藤氏

 質疑応答ではeKクロス EVやミニキャブ・ミーブといったバッテリEVは補助金などの施策によって好調な販売を維持しているが、バッテリEVに対する課税についてどのように考えているかを問われ、加藤氏は「確かにEVシフトになると燃料にかけられている税収はなくなっていきます。ですから何らかの形で、例えば道路の補修といったところで財源確保が必要になると思います。これについては一定程度理解できますが、まだEVは、とくに日本では十分に普及していない状況ですので、やはりEVが普及するまでの当面は現状が望ましいのかなと、将来的なカーボンニュートラルの実現を考えた場合ですね」。

「とは思いますが、ある一定程度までEVが普及した場合は、引き続きどういった税体系がいいのかさまざまな議論をしていく必要があるんじゃないかと思います。走行距離に応じて課税するという手段も1つの形だと思いますが、いずれにしろ自動車にかけられている現行の税制はいろいろなものがありまして、若干複雑であると言えると思いますので、これの簡素化と合わせてEV時代に合わせた税のあり方をぜひ考えていくべきではないかと思っています」と回答した。