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アカザーのトヨタが開発する次世代パーソナルモビリティを見てきました!
2022年11月8日 09:00
- 2022年10月5日~7日 開催
電動車いす「JUU」、超小型EV「C+pod plus Concept」など次世代パーソナルモビリティを公開したトヨタ
どうもアカザーっす! 2000年にスノーボード中の事故で脊髄を損傷して以来、車いすユーザー歴22年目のオレです。そんなオレが10月5日~7日に東京ビッグサイトで開催された「国際福祉機器展H.C.R.2022」のトヨタブースで、“車いすユーザーの移動の未来”を垣間見た気がしたのでレポートさせてください!
2022年のトヨタブースはもう見た目からしていつもと違う雰囲気でした! というのもオレが知る限りは、これまでのHCRのトヨタブースといえば、発売済みの福祉車両の展示、それもほぼすべてが車いすユーザーを介護するための“介護車”の展示というのが定番。
それが2022年はそういったクルマの展示は1台もナシ! 代わりに展示されていたのは未来の福祉車両というか、そういうカテゴライズをも超えたような次世代パーソナルモビリティたち。トヨタのキャッチコピーである“MOBILITY FOR ALL”を具現化したようなブースだったんですヨ!
車いすユーザーでも気軽に出歩ける次世代パーソナルモビリティ
「C+pod plus Concept」は、2021年より発売されているトヨタ初の超小型EV 「C+pod」をベースに、車いすユーザーでも容易に運転ができるようにしたコンセプトモデル。
定員2名の「C+pod」を「C+pod plus Concept」では定員1名とし、空いたスペースに車いすの自動収納を可能とした一人乗り電気自動車です。ちなみに「C+pod」同様なら、最高速度は60キロで高速道路などの使用は不可となる見込み。
車いすユーザー向けの「C+pod plus Concept」の大きな改良点は2つ、座席とステアリングにあります。
乗車は助手席側に車いすをつけて行ないます。車いすから座席に座り、車いすを折りたたんだあと、あらかじめ車いすに取り付けておいたフックを座席の横に取り付けます。
ボタンを押すことで座席が助手席側から運転席側に電動横スライド。そのスライドに合わせて、車いすのタイヤを利用しつつ車内に引き込むという仕組み。車内に車いすを引き込んだあとは、フックを外して車いすを90回転させて収納させる。
なるほど! これなら腕の力が弱くて車いすを車内に引き上げるコトが難しかった頚髄損傷などの車いすユーザーも、運転席への乗り移りさえできればひとりで運転が可能というワケですね。
その運転席には、手動ですがヤリスに搭載されたターンチルト機構つきのものを採用。これによりシートと車いすを近づけるコトができるので、さらに乗り降りがしやすくなる、と。
そして、もうひとつの改良点であるステアリングです。「C+pod」ではおなじみの丸形形状ステアリングですが、「C+pod plus Concept」ではF1のステアリングのような形状に。これにより握力が弱くてもステアリングの保持がしやすくなり、内側にはアクセルボタンが内蔵され、親指で押すことでアクセルの操作が可能とのこと。ちなみにブレーキはステアリングの右下のレバーを押すといった構造。
ここでオレが気になったのは、車庫入れなど大きく素早くステアリングを切るような場面。こちらはバイ・ワイヤ方式で、ステアリングの切れ角を自由に変更できるようにし、使用者の(障害などによる)腕の動きなどにも個別にアジャストできる仕組みにしていきたいとのことでした。
超小型ボディから産まれる可能性!
車いすユーザーとして個人的に「C+pod plus Concept」に感じた最大の可能性が、超コンパクトボディの「C+pod」(全長2490mm×全幅1290mm×全高1550mm)をベース車両に選んだ点。ちなみにこのサイズ感は、横置きだとアルファード1台分の駐車スペースに、「C+pod plus Concept」が2台置けるほどらしいです。
普通サイズの駐車場の横幅は約2.5m。それに対して、「C+pod plus Concept」の横幅は1.29mなので、駐車場内でドアをフルオープン状態にする事が可能とのこと。つまり「C+pod plus Concept」なら、従来の障害者等用駐車場を使わなくても、普通の駐車スペースに停めても車いすでの乗り降りが可能というワケなんです! このトヨタのアプローチには目から鱗!
車いすユーザーのオレが実家の徳島に帰省する際には、携帯型の手動運転装置を持ち帰り、母親の軽自動車に取り付けて動くことが最近の定番になっています。
その理由はひとりで動くなら、小さいクルマのほうが取り回しがいいから。しかも、最近の軽自動車ってドアまわりが大きくとられているので、父親の大型セダンを借りるよりも車いすの積み下ろしが格段に楽なんです。
そして「C+pod plus Concept」ほどではないにせよ、軽の車幅なら普通の駐車場でも端に寄せて止めれば、小さく作ってあるオレの車いすならギリで乗り降りができる感じなんです。
地方だと、ひとり1台軽自動車っていうライフスタイルの家庭も多いような気がします。そして今後の超高齢化社会で、その人たちが車いすユーザーになる事も増えていくでしょう。そうなったときに、現状の障害者等用駐車場では足りなくなるのは目に見えています(個人的にはここ数年で、いきなり利用者が増えた印象があります)。
それらの問題を解決するひとつの答えが「C+pod plus Concept」にはあるような気がします。
現在あるインフラを生かしつつ、軽自動車にかわってEVの特性を利用した“下駄がわり”となる次世代パーソナルモビリティ。「C+pod plus Concept」はそんな“MOBILITY FOR ALL”を具現化したパーソナルモビリティだと感じました。ていうかコレ、数年後とかにフツーに街を走ってそう。
観光地の貸出用車いすに欲しい! 階段も登れる次世代車いす
オレが可能性を感じた、もうひとつの“MOBILITY FOR ALL”が電動車いすの「JUU」です。これは、これまで車いすユーザーにとって大きなバリアとして立ちふさがっていた、砂浜などの不整地や段差や階段などを超えていけるポテンシャルを持つ、新しいパーソナルモビリティとのこと。
しかし、オレのJUUへの第一印象は「デカくて狭い日本の家屋じゃちょっと使いづらそうだな~」というものでした。
が、バックに流れるPVに伊勢神宮の五十鈴川のほとり(っぽい場所)に佇むシーン(CG?)が流れた瞬間。「あ! これって、観光地とかの貸出用車いすとしては最高なんじゃ?」という思いが脳裏に浮かびました。コレって、そもそもが室内で使うというよりも“従来の車いすでは行けなかった場所に行けるようにするモビリティ”なのでは?
というのもまさにこの前日に、私用で伊勢神宮にお参りに行っていたオレは、五十鈴川や内宮前の階段や段差がバリアとなり、その先に進むコトができなかった苦い経験をしたばかりだったんです。
ご存じのように、伊勢神宮は世界遺産級の場所。なので、外宮も内宮も設計はほぼ当時の姿のまま(式年遷宮での建て替えはあるにせよ)。むろんバリアフリーなんて言葉がない時代からある場所なので、段差はありまくりで、参道には玉砂利が敷かれています。
車いすでの参拝時にはこの玉砂利も大敵で、キャスターと呼ばれる小さい前輪が玉砂利に埋まってなかなか前に進めないのです(無理に走ると前輪が引っ掛かり転倒する恐れも)。
そういう場所では、オレはキャスター上げと呼ばれる、前輪をウイリーさせて進む技を使うのですが、さすがにずっと前輪を上げ続けて長い参道を進むのはキツイ感じ。しばらくウイリーで進んで>前輪を降ろして休むを繰り返しながら参道を進み、参拝していました。
そんな感じでこれまでに2度ほど参拝したのですが、2021年に電動車いすの貸し出しサービス(無料)があるコトを知ってからは、貸出し用電動車いすに空きがあるときはコレを借りています。
しかし、この電動車いすでも玉砂利にタイヤをとられて、まっすぐ進むのは至難の業。使い慣れていない介助者が操作するのでなおさらです。そして玉砂利はなんとかなっても、段差や階段の前には従来の車いす同様に無力です。
そんなときにこのJUUがあれば!
まずこの大きなオフロードタイヤが前側にあることで、キャスター上げをしたのと同じ状態になるので、玉砂利などに埋まってスタックしたり、舵をとられるコトもありません。しかも通常の車いす用タイヤより太いので、安定感も抜群だと想像できます。
そして何より、現状で17㎝の段差を超えていけるという登坂能力です。PVにはリモート操作でアルファードの後部荷室に収納するシーンや、ビルの階段を上っていくシーンが映っていたので、将来的にはそこまでの段差をクリアできるようになるのではないか?と期待しちゃいます。ていうか現状の能力でも、一段一段がそれほど高くない伊勢神宮内宮前や五十鈴川前の段差はクリアできるような気がします。
と、ココまで読んでいただいた人ならすでにピンときたように、バリアフリー化が難しいような歴史的遺産の観光地や、鳥取砂丘のような従来の車いすでは行きづらい風光明媚な場所でも、JUUがあれば健常者と同じように、健常者と一緒に、それらを見て回れる可能性が出てくるという事なんですヨ!
「C+pod plus Concept」もそうですが、従来のインフラはそのままで、自らが劇的に変化するコトでバリアを超えていくというこの発想。めちゃめちゃイイと思いませんか?
オレは車いすユーザーとなって20年以上働いてきましたが、車いすユーザーが真の共生社会の一員となって活躍していくには、車いすユーザー自身も変わっていく必要がある気がします。
今後、こういった“車いすユーザーが変わる手伝い”をしてくれるパーソナルモビリティたちが出てくることで、その変化や進化の可能性がさらに広がる! そんなワクワクする未来を想像させてくれた今回のトヨタブース、ついに世界のトヨタが本気出してきたぜ~!