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トヨタ、新型「プリウス」世界初公開 デザインを見た豊田社長「カッコいいね!」

2022年11月16日 発表

新型「プリウス」を世界初公開するワールドプレミアイベントに登壇した、トヨタ自動車 クルマ開発センター デザイン領域 統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏

 トヨタ自動車は11月16日、新型「プリウス」を世界初公開するワールドプレミアイベントを開催。イベントでは、同社クルマ開発センター デザイン領域 統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏が登壇するプレゼンテーションが行なわれ、新型プリウスのデザインを見た豊田章男社長が「カッコいいね!」と言ったことが明かされた。

 新型プリウスは、2.0リッターのプラグインハイブリッドシステム、2.0リッター/1.8リッターのハイブリッドシステムを採用。シリーズパラレルハイブリッド車(HEV)を今冬、プラグインハイブリッド車(PHEV)を2023年春ごろに発売予定としている。

プリウス(2.0リッター PHEV プロトタイプ)
プリウス(2.0リッター HEV プロトタイプ)

 開発にあたっては「Hybrid Reborn」をコンセプトに、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を併せ持ったエモーショナルなプリウスへと進化させ、愛車として長く愛用してもらえるクルマを目指したとしている。

 デザイン領域では、プリウスならではのモノフォルムシルエットを継承しつつ、ワイド&ローなスタンスと大径タイヤの採用で、感性に響くスタイリッシュなデザインを採用。第5世代ハイブリッドシステムと、第2世代TNGAプラットフォームの採用で、ずっと乗っていたくなる、気持ちのいい走りを実現させたという。

 新型プリウスのプレゼンテーションに登壇したサイモン氏は、バッテリEVが注目を集め「#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ……」という声も大きくなるなか、「プリウスは、どうしても残さないといけないクルマ」だと、豊田章男社長がこだわったモデルであることを明かした。

 そして、サイモン氏は、プリウスは「みんなの手が届くエコカー」であり、トヨタには「エコカーは普及してこそ環境への貢献」という考えがあることを強調。次のプリウスの開発するにあたっては、「コモディティ」にするか「愛車」にするかを選択するとき、豊田社長は真の「コモディティ」にするべきではと提案。しかし、開発陣はコモディティではなく愛車を選んだことに、豊田社長は開発陣に対して「この喧嘩おもしろいね」と言ったことなど、新型プリウス開発の舞台裏が語られた。

新型プリウス ワールドプレミア ライブ中継

 下記は、サイモン氏がプレゼンテーションで話した全文となる。

デザイン統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏のプレゼンテーション全文(日本語訳)

 みなさんこんにちは、私は、サイモン・ハンフリーズ、グローバル・トヨタ・デザイン担当シニア・ジェネラル・マネージャーです。本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。

プリウスについて

 今、BEVが注目を集めるなか、この言葉を聞かない日はありません。「#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ……」そんななか、今日お話しするのは、トヨタの新しいハイブリッドカーについてです。新型プリウスに込められた情熱について、社長の章男さんと開発陣の「おもしろい闘い」とともに、お話しできればと思います。

 1997年にデビューしたプリウス。その名前は、ラテン語の「開拓者」に由来しています。初代プリウスの発売以来、トヨタは、グローバルで合計2030万台のハイブリッド車を販売し、累計、約1億6200万tのCO2を排出削減しました。日本では、20年前と比べてCO2排出量を23%も削減。これは国際的に見ても高いレベルになります。

 また、北米では、トヨタ単独で520万台以上のハイブリッド車を販売し、約8,200万トンのCO2排出削減に貢献しています。しかし、プリウスの最大の功績はそれらの数字ではありません。それよりも、ガソリンやディーゼルに代わる、現実的な選択肢を広めたことにあります。ハイブリッド技術は、トヨタだけでなく、自動車業界全体に受け入れられ、発展しました。プリウスは、これまでとは違う考え方の扉を開いてくれたのです。

カーボンニュートラルへの道のり

 そして2022年、時代は変わり、カーボンニュートラルへの道のりが語られない日はありません。ハイブリッドだけでなく、BEVも大きな技術的ブレークスルーを果たし、将来のスタンダードとしての地位を固めつつあります。1年前のBEVイベントで、章男社長が「全ての人にEVを」と話したように、トヨタは、BEVを商品ポートフォリオの重要な一部と考えています。われわれはエキサイティングなBEVをフルラインアップで発表。世界中の多様な顧客ニーズに対応するとともに、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池車についても同様に取り組んでいます。章男社長も常々話すように「BEVは重要な解決策の1つだが、それが全てに勝る選択肢ではない。多様化した世の中には、多様な選択肢が必要」と考えているからです。

次期プリウスについて

 しかし、こうした説明とは裏腹に、冒頭でお話した「#いつまでハイブリッドを作り続けるんだ……」という声も大きくなっています。でも、章男社長は「プリウスは、どうしても残さないといけないクルマ」だとこだわりました。

 なぜか。それは、プリウスは「みんなの手が届くエコカー」だからです。カーボンニュートラルの実現には、世界中のみんなで協力しなければならない。だからこそ、みんなの手が届くエコカーが必要なのです。そして、それは明日からではなく、今日から始める必要があるのです。

 トヨタには「エコカーは普及してこそ環境への貢献」という考えがありますが、プリウスは、マジョリティのための、多くの人に手が届くクルマなのです。一部の人だけではなく、全ての人が運転できるクルマ、それが最大の強みであり、存在理由です。だからこそプリウスは、絶対に失ってはならないブランドなのです。その点は全員が同じ想いでした。

 でも手段はどうあるべきか。熱い議論が交わされました。次のプリウスは、「コモディティ」か「愛車」か、章男社長は真の「コモディティ」にするべきでは、と提案しました。「プリウスを、タクシー専用車にしてはどうか」。走行距離の長いクルマとして台数を増やしてこそ、環境貢献につながるという発想です。

 そしてもう1つは、「OEM車として、他メーカーからも販売してはどうか」。長年培ってきたプリウスの環境技術を、トヨタだけに留まらず、メーカーの枠を超えて普及させることでカーボンニュートラル社会に貢献するというアイデアでした。

 しかし、開発陣は「コモディティ」ではなく、別の考え方がある。と思ったのです。合理的なベネフィットだけではなく、エモーショナルな体験で選んでほしかったのです。確かに、これまでのプリウスのように合理性や燃費性能などの数字を追求すると、制約が増えてデザインは簡単ではありません。しかし、お客さまへの訴求力を高めるためには、「妥協のないクルマ」を作らなければならない、と心から信じていました。数字だけでなく、愛されるクルマ。

 章男社長は、過去の苦労から、それが実現できると思っていなかったと思います。でも章男社長は、われわれ開発陣を否定しませんでした。逆に、闘うチャンスをくれ、コモディティではなく愛車を選んだ開発陣に「この喧嘩おもしろいね」と言いました。そしてデザインを見た時、彼は、「カッコいいね!」と言ってくれたのです。私たちは愛車を選びました。

これが新しいプリウスです。

 このクルマを好きになる理由はたくさんあると思いますが、私のベスト5をご紹介しましょう。

1. 美しさ
 少なくとも私はそう思いたい! では、今回何が変わったのか? それは、「よいデザインはデザイナーだけでは作ない」という相互理解です。エンジニアリングチームは、車高を下げ、ホイールベースを長くし、タイヤを19インチにする努力をしましたが、必ずしもそれは論理的ではありません。しかし、プリウスの象徴的なシルエットを次なるレベルへ昇華させることができたのです。滑らかなだけでなく、力強く、安定しており、また、大胆でシンプルなだけでなく、表面の動きも豊かです。しかし、感動を呼び起こすのは、デザインだけではありません。

2. エンジン付きEV
 相乗効果を発揮するデュアルパワー。PHEVは、モーターとエンジンのシナジーにより、圧倒的なパフォーマンスを実現します。0-100km/hを6秒台で駆け抜け、さらにEV走行できる距離を現行車と比較して50%以上伸ばし、日常の使用であれば、実質的にEV走行で楽しめます。

3. 驚異のドライビング・ダイナミクス
 TNGAプラットフォームはさらに熟成され、ドライビング・ダイナミクスでもあなたを失望させることはないでしょう。大径タイヤを装着しつつ、低重心化を実現。ボディ剛性を高めることにより、直線ではしっかりと安定した応答性を、コーナーではドライバーの意思に応じた、ライントレースのしやすさを叶えました。これに最新のパワートレーンを組み合わせることで、より魅惑的な運動性能を実現しています。

4. デジタル化と品質
 そして今の時代、優れた統合デジタル体験も無視できません。12.3インチのセンタースクリーンを採用しただけでなく、デジタル環境がドライビング体験を損なうことなく、むしろ高めるようなレイアウトとしています。また、高い素材品質や革新的なイルミネーションを組み合わせることで、インテリアのユーザーエクスペリエンスも人々の心をつかむものに仕上げました。

5. そして、それらを叶えつつ依然として世界で最も効率のよいハイブリッドカーであること
 カーボンニュートラルへの積極的な貢献を犠牲にしている訳ではないのでご安心を。ゼロエミッションへの道のりは、確かに険しいものです。でも、地球のために行動しているのだということを、私たちは忘れてはいけません。ゼロの向こう側には、より明るく幸せな未来が待っています。しかしそこに辿りつくためには、世界中の多くの人が、今すぐ行動しなければならないのです。BEV、PHEV、FCEV、HEV、水素あるいはまだ発見されていない技術など、どのような状況にあっても、世界中の人々に、よりよいソリューションを提供するために、あらゆる努力を惜しみません。

「コモディティが勝つか」「愛車が勝つか」。この質問の答えを知っているのはお客さまだけです。勝負の行方、みなさんはどうなると思いますか? 自分としては、新たなプリウスが、世界中の人々に選ばれ、そして愛される日を楽しみにしています。ありがとうございました。