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グランツーリスモをマスターしたAI「GTソフィー」についてソニーAI COO ミカエル・シュプランガー氏に聞く

2022年11月25日〜27日(現地時間) 開催

ソニーAI COO ミカエル・シュプランガー氏

 PS5/PS4用『グランツーリスモ7』を使用したグランツーリスモ公式チャンピオンシップ「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2022」の年間王者を決定するイベント「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2022 ワールドファイナル」がモナコで開催された。

 同会場で、PlayStation4の『グランツーリスモSPORT』を学習したレーシングAIエージェント『グランツーリスモ・ソフィー』(GTソフィー)について、ソニーAI COO ミカエル・シュプランガー氏に話を聞くことができた。限られた時間のインタビューではあったが、シュプランガー氏がGTソフィー発表後の反響や現在の取り組みについて答えた。

 GTソフィーは、ポリフォニー・デジタル、ソニーAI、ソニー・インタラクティブエンタテインメントにより共同開発され、トレーニングを通じて世界最高峰のドライバーを凌駕するレーススキルを獲得。世界最高峰のドライバー相手のレースにおいて、刻々と変化する状況にあわせた瞬時の意思決定が求められるリアルドライビングシミュレーターにAI技術を応用することで、機械学習を次のレベルに進化させたと、英国の総合科学誌「Nature」(2月10日号)に取り上げられている。

──「GTソフィー」の発表後の反響について聞かせてください

シュプランガー氏:そうですね、まだ誰に聞くかによって、ちょっと答えは違うと思うのですが、AIの世界ではやはりすごく好評で、新たなマイルストーン、本当にブレイクスルーができたと認識されています。

 で、僕らはR&D部門なので、重要なポイントとしているのは、やはりGTドライバー側の反応で、彼らが一緒に走っておもしろいと思うかどうかということと、僕らが今見てるのは、彼らがAIがどういう運転の仕方をしているのかをすごく細かく見ていて、それからインスピレーションを受けたり、走り方を真似しようとしていることだったりします。そういった意味では、それは素晴らしいことだと私たちも思っていて、僕らにとってはGTドライバーに対して新たな体験を提供するというのが重要だと考えてるからで、AIの登場でそういったことが実現できるのが最終的な目的でもあります。

──現在のプロジェクトの取り組み状況について聞かせてください。

シュプランガー氏:レースのデモという意味では、これまで4段階のレースを行なっています。まず最初のものは、できるだけ速く、速いスピードをサーキット上で出せるかどうかというテストでした。2回目のものは、もっとスポーツマンシップだったり、フェアネスに集中を当てたものです。で、3回目は、もっとソフィーの多様性を見せられるようなもので、例えば同じ技術を使ってダートコースを走れるようにしたり、そういったことが可能だと、私たちにとってもサプライズなものでした。

 今、僕らがやろうとしていることはプレイヤーと同じレベルで走らせるということ。やはり、一緒に走っていて、あまりにも後ろの方に置いていかれたりすると、一緒に走っても楽しくはないので、様々なプレイヤーの技術レベルに合わせた振る舞いができるように、調整しようとしています。それが今、私たちが集中して取りくんでいる部分です。

──将来の夢として、GTソフィーを搭載した実車がリアルのサーキット上を走るところを見てみたいという思いがありますが、そういうアイデアいかがでしょうか?

シュプランガー氏:それには巨額の投資が必要ですね(笑)。真面目にお話すると、AIの方向性はいくつかありまして、1つはプレイステーションのルートで、ほかのPSのゲームなどに、AIが活用されることがまず1つの進め方としてあると思います。もう1つは本当にリアルに、レースに行くというのは確かにすごくエクサイティングでおもしろいアイディアだと思います。

 GTソフィーというのは、そもそもプレイステーション上ではありますが、リアルレーシングゲームの中で行なっているもので、リアルワールドに行くことも可能だとは思います。ただし、ダメージのことを考えたり、バーチャルではないものの要素も関わってくるので、いろいろと調整は必要だと思いますが、おもしろいアイディアだとは思います。

 グランツーリスモはものすごくリアルなので、これまでもゲームのプレーヤーがリアルのレースドライバーになった前例もありますので、それはエージェントAIでも、同じことが言えるのではないでしょうか。ただし、それだけの投資はかかりますけど(笑)。

──GTソフィーがリアルのサーキットを走行することを楽しみにしております。