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豊田章男氏、50周年&改革のシーズンインを迎えたスーパーフォーミュラに「ワクワクだね」「種をまいてくれたことに感謝したい」と語る

レーシングドライバーとしてのモリゾウ選手でもあり、ルーキーレーシングのオーナーでもある豊田章男氏(中央左)。チームドライバーの大嶋和也選手(中央右)、チーム監督の石浦宏明氏(中央左から2人目)とともに

改革の年を迎えた日本のトップフォーミュラ

 4月8日、50周年を迎えた日本のトップフォーミュラであるスーパーフォーミュラが富士スピードウェイで開幕した。日本のフォーミュラレースは1973年に前身となる全日本F2000選手権が始まっており、2023年は50周年のシーズンとなる。

 スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)は「NEXTGO(ネクストゴー)」プロジェクトとして、この2023年シーズンをターゲットに新型車「SF23」やドライバー視点の視聴アプリ「SFgo」を投入。サステナブルなレースのために、カーボンニュートラル燃料や天然素材採用のADVANレーシングタイヤなど次の50年に向けた取り組みの始まりの年となる。

 ここ数年スーパーフォーミュラを取材してきたが、2023年は飛び抜けて大きな改革が行なわれる年となる。この改革は50周年という節目の年であることも影響しているが、その大きなきっかけとなったのが2020年8月に開催された開幕戦のもてぎ戦になる。

 この年はご存じの通り、2020年2月半ばから始まったコロナ禍のために多くのスポーツイベントがキャンセルなり延期なりの影響を受けた。スーパーフォーミュラも開幕戦を延期、8月のもてぎで観客を最大5000名に制限してやっと開幕にこぎつけた。

 そのもてぎ戦にふらりと現われたのがモリゾウ選手。モリゾウ選手は豊田章男氏として当時はトヨタ自動車社長でもあり、自動車工業会の会長でもあった(これは今もですね)。もちろんスーパーフォーミュラに参戦しているルーキーレーシングのオーナーでもあるが、なぜかにゃんこ大戦争のマスクをしながら、さらに冷却用のハンディファンを持ちながら、スタート前のグリッドを練り歩いてコロナ禍で萎縮しがちなチームを激励。一人のモータースポーツ好きとして、モータースポーツの素晴らしさをチームにもドライバーにも観客にも訴えていた。

 このときとくにモリゾウ選手がスーパーフォーミュラの素晴らしさとして挙げていたのは、レーシングドライバーの能力の高さ。「このレースほど速いクルマがそろっているものはありませんし、世界で戦っているすごいドライバーがそろっているレースもありません。その割りにはと言ってはなんですけど、ちょっと盛り上げが少ないと思いますので。みんなで、みんなでね、世界レベルのレースがここにある、日本で見られるんだよと。世界レベルのドライバーが集まっているんだよと。もうちょっと私も声を大にしていくので。よろしく応援を、みんなで楽しめるような雰囲気作りをお願いしたいなと思います」と語り、レースの素晴らしさやドライバーの能力の高さがあるのに、それが多くの人に伝わっていないと語っていたのが印象的だった。

2020年の開幕戦もてぎからNEXTGOは始まっていた

 記者はこのときモリゾウ選手は一人のオーナーとして激励に来ただけと認識していたのだが、JRP社長の上野禎久氏(当時は取締役)は、その後のNEXTGO施策の発表時にスーパーフォーミュラにエンジンを供給するトヨタ自動車 社長としての豊田章男氏と会談を持ったと発言。その会談でのレースの真摯な盛り上げ策がNEXTGOプロジェクトにつながっていることを明かしている。

 そのモリゾウ選手が、デジタルアプリ「SFgo」の正式提供が始まり、サステナブルな新型車「SF23」が新たに投入された2023年の開幕戦富士に登場。ルーキーレーシングのオーナーの豊田章男氏とて現われた。

 レースシリーズとしての真価はこれからとなるスーパーフォーミュラだが、この3年で数々の改革を行なってきた。新しいスーパーフォーミュラの始まりの年をどう思うのかモリゾウ選手に聞いてみた。

 モリゾウ選手でもある豊田章男氏は、「ワクワクだね、ワクワク」と第一声。5月3日の誕生日を第1回日本グランプリなどサーキットで迎えてきた筋金入りのモータースポーツ好きとして、また脱炭素を目指しつつガソリンくさいクルマが好きと公言するカーガイとして、2023年シーズンが楽しみな様子だ。

 そして一人のレーシングドライバーとして、スーパーフォーミュラのドライバーへのリスペクトは忘れない。「これだけのドライバーが戦っている。あのとき(2020年8月のもてぎ)も言ったけど、決勝は予選のまま行った行ったでは面白くない」と、追い抜きのしやすいエアロパッケージになったことを評価。観客に分かりやすい状態で高度な戦いが行なわれることに対する期待を述べた。

 ただ開幕戦のため改革は始まったばかり。「まだ種まきの段階です。種まきのときは(表面からは)分からないことが多い。でも、あらゆる種をまいてくれたことに感謝したい」と、テストを精力的に行なってアプリや新車、サステナブル素材の導入を図ってくれた関係者に感謝の意を述べる。

 その上で、「まずは行動させてください。行動して盛り上げる。ここのお客さんの数も増えました。これからどのくらい増えるか。スーパー耐久も(ST-Qクラスの創設で)増えた。あとは、マッチ(近藤新会長)と、それぞれのチームの主役であるドライバー。何をしていくかを見守りたい」と語った。

 種まきについては、自身の社長時代を振り返ったときにも語っている言葉で、種まきの時代に批判するよりも、種をまいている努力を応援してほしいとの思いがある。近藤新会長の目指すアジアのトップフォーミュラを目指しての改革は始まったばかり。モリゾウ選手として、豊田章男氏として、見守りつつ応援していくとの強い思いが印象的だった。

TGR-E 副会長の中嶋一貴氏も開幕戦の応援に駆けつけていた