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ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿活動説明会 「チャンスは自らの力で取りに来てほしい」とプリンシパルの佐藤琢磨選手

2023年10月3日 実施

ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS)の活動説明会が実施された

20年ぶりに教習用フォーミュラマシンをフルモデルチェンジ

 本田技研工業の競技用車両およびパーツの製作やモータースポーツ活動を行なう子会社ホンダ・レーシングは10月3日、東京青山にあるHondaウエルカムプラザ青山にて、世界のトップカテゴリーで活躍するレーシングドライバーやライダーを育成する「ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS)」の活動説明会を実施した。

 説明会には、ホンダ・レーシング(HRC)の代表取締役社長である渡辺康治氏、ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿のKart/Formulaクラスのプリンシパルを務める佐藤琢磨氏、同じくMotoクラスのプリンシパルを務める岡田忠之氏、Formulaクラスインストラクター 兼 HRS-F24開発ドライバーの野尻智紀氏が出席した。

 ホンダのモータースポーツ人材育成は、1992年に「鈴鹿サーキット・レーシング・スクール(SRS)」として、当初は2輪のスクールとしてスタート。その後、カート、フォーミュラも開校し、2022年までに861名が卒業。佐藤琢磨選手や角田裕毅選手などF1に4人、インディカーに2名、山本尚貴選手や野尻智紀選手などスーパーフォーミュラチャンピオン4人、SUPER GTチャンピオン7人。二輪もMotoGP参戦や鈴鹿8時間耐久レース優勝ライダーなど、卒業生が幅広いカテゴリーで活躍し、好成績を残している。また、30周年の節目となる2022年には、より人材育成に力を入れていくという決意を込め、「ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿」へと名称を変更した。

2016年に卒業し、F1参戦中の角田裕毅選手
2019年に卒業し、FIA-F2に参戦中の岩佐歩夢選手
2019年に卒業し、Moto3に参戦中の古里太陽選手

 二輪では20213年に、出光興産とともに世界トップレベルで活躍できるアジア人ライダーの発掘と育成および、アジア地域におけるモータースポーツ文化の醸成を目的にしたライダー育成プロジェクト「IDEMITSU Honda Team Asia」を結成。2023年はMoto2に小椋藍(おぐら あい)選手とソムキアット・チャントラ選手、Moto3に古里太陽選手、マリオ・アジ選手が参戦している。

二輪カテゴリーのステップアップの流れ(イメージ)

 また四輪では、「ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)」を展開し、欧州のフォーミュラカテゴリーや国内のFIA-F4、スーパーフォーミュラライツなどに育成選手のシートを用意し、選手のステップアップ環境を整えている。2023年はレッドブルと協力し、FIA-F2に岩佐歩夢選手、GB3選手権に荒尾創大選手、スーパーフォーミュラライツに木村偉織選手、小出峻選手、FIA-F4に三井優介選手、野村勇斗選手、森山冬星選手らが参戦中。

四輪カテゴリーのステップアップの流れ(イメージ)

 HRCの渡辺社長は、「ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS)は、Motoクラスにはロード選手権 最高峰クラスの日本人最多勝利記録保持者である岡田忠之氏、Kart/Formulaクラスには、F1での表彰台経験、インディ500で2度の優勝経験を持つ佐藤琢磨氏にプリンシパルを務めていただいているほか、野路智紀選手をはじめ国内外で活躍するトップ選手を講師に迎えています。また、オーディション形式ではなく、1年間の受講プログラムとしているのが特徴で、現役トップ選手たちとの実戦形式の走行練習、フィジカルやメカニズムの知識、ロガーデータの読み方など、レーシングアスリートに必要不可欠なスキルをすべて身につけられる日本で唯一のレーシングスクールであり、精神的にも人間的にも世界トップカテゴリーで戦える人材を目指した指導を行なっています」と説明。

株式会社ホンダ・レーシング(HRC) 代表取締役社長 渡辺康治氏

 続けて「2024年から新型教習用フォーミュラカー『HRS-F24』を導入し、Formulaクラス受講生のステップアップを視野に入れた性能と、ドライビングスキル評価のさらなる精度向上を実現したほか、最新の安全装備を搭載し、充実した学びの機会を提供します」と、環境面の整備が行き届いていることをアピールした。最後に渡辺社長は、「若者たちの夢を応援し、成長を見守り、そして一緒に夢を叶えていくスクールの取り組みに賛同いただけるパートーナー企業さまの募集も行なっております」と締めくくった。

Motoクラスのプリンシパルを務める岡田忠之氏
Motoクラスの教習マシン「NSF250 R」
HRCが製作するレース専用車両

 Motoクラスのプリンシパルを務める岡田忠之氏は、「若い子たちを1人でも多く世界に通用するライダーに育成していきたいが、ライダーである前に1人の人間としてもしっかりと育てることも重要だと考えています」とあいさつ。Motoクラスには2つのコースがあり、二輪レース活動のベースとなる知識習得とレベルアップを目指す「ベーシックコース」の年間受講料が69万9000円。実戦形式によるレース参戦に向けた強化を中心とした「アドバンスコース」の年間受講料は116万6000円となっている。

Motoクラスの概要
Motoクラスの受講カリキュラム

 Kart/Formulaクラスのプリンシパルを務める佐藤琢磨氏は、26年前に自身のモータースポーツ活動のスタートになったのがこのスクールのカートクラス(3期生)であることを紹介しつつ、「とても大きなチャンスをいただいた」と振り返った。また、2019年に「スクールを改革しよう」と声をかけられたことをきっかけに、スクール運営に参画したという。

Kart/Formulaクラスプリンシパルを務める佐藤琢磨氏

 また、「このスクールを出た選手のほとんどがトップドライバーとなっているケースが多いですから、これからもしっかりと責任感を持ちながら、育てていきたい。もちろん細かいレースのノウハウなどだけではなく、1人の人間としてしっかりと自立して、この先世界に出ていったときに自分がパフォーマンスを発揮できる環境を作れる。さらに世界で戦うドライバーは求心力がとても必要だと思っていまして、チームスポーツであるモータースポーツの中で生き抜いていく、そういう強い選手の誕生を願い、これからも力を入れていきます」と抱負を語った。

Kartクラス概要
Formulaクラス概要
Formulaクラスのカリキュラム

 さらに佐藤氏は、「確かにわれわれは育てる立場にありますが、それは本人の貪欲さ、熱意と取り組みがあって初めて機能するものと信じています。活躍の場としてチャンスはHRSにありますが、でもそれは自らの力で取りに来ていただきたいと思う。野尻選手もスクールを出て、プロになってスーパーフォーミュラの頂点に立ち、その中で多くのことを学んできたと思うんですけども、より若いうちからそういった環境が整っていることがF1を目指すドライバーにとっては非常に重要なポイントになると思っています。いち早く自分のレベルを上げてくれる選手が現れれば、それなりのサポートをこちらとしてはしていきたい。そのための環境として、ハード(マシン)もソフト(世界を見てきた人材)がスクールの中にたくさんいまるので、自らいろいろ吸収して成長してほしいです」と、若いうちから参加することの重要性を説いた。

HRSのステップアップフロー

 なお、Kartクラスも2つのコースがあり、四輪レース活動のベースとなる知識習得を目指す「ベーシックコース」の年間受講料が160万6000円。Formulaクラスへのステップアップを目指す集中強化を中心とした「アドバンスコース」の年間受講料は192万5000円となる。

20年ぶりに教習用フォーミュラマシンをフルモデルチェンジ

Formulaクラスインストラクター 兼 HRS-F24開発ドライバーの野尻智紀氏

 Formulaクラスインストラクター兼HRS-F24開発ドライバーの野尻智紀氏は、新型教習用フォーミュラカーHRS-F24について、「エンジンをはじめ、とにかく乗りやすい、コントロールしやすいクルマに仕上げるのが開発テーマでした。先代マシンのピーキーな特性を削り落とし、グリップが唐突になくなるようなことをなくし、短い時間でマシンに慣れられるようにすることで、技術力の向上もよりスピーディになると考えました。若いうちに高い技術を身につけ、若いうちから世界で戦えるドライバーを育成していきたいです」と開発コンセプトを語った。

新型教習用フォーミュラカー「HRS-F24」
4795×1755×953mm(全長×全幅×全高)、シャシーは東レ・カーボンマジック製。エンジンは戸田レーシング製「TR-FS01」で、排気量は2107ccの自然吸気、最高出力は132kW(180PS)
タイヤはブリヂストンのスリックタイヤ「RF02」、サイズは190/55R13
安全性を飛躍的に向上させるhaloが装備された
HRS-F24ではパドルシフトを採用
9月24日に鈴鹿で開催されたF1日本GPにてデモンストレーション走行を実施した