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日産、モビリティサービスの社会実装に向け市街地で日本初のドライバーレス自動運転実現 横浜市みなとみらい地区で実証実験開始
2025年3月10日 11:00
日産がみなとみらい地区で行なう監視システムと組み合わせたドライバーレス自動運転
日産自動車は3月10日、ドライバーレス自動運転の社会実装に向け、市街地では日本初となる運転席が無人の状態での走行を横浜市みなとみらい地区で公開した。このドライバーレス自動運転システムは、日産が自社開発したものになる。
日産は、少子高齢化に伴う公共交通機関のドライバー不足や地域社会が抱える交通サービスの課題解決に貢献し、自動運転技術を活用して誰もが自由に移動できる新しい交通サービスを提供することを目指しており、この技術はパーソナルカーに適用というより、公共交通や社会サービスとしてのモビリティへの適用を視野に入れている。
具体的な自動運転システムとしては、ミニバン「セレナ」に自動運転実験車両としてカメラ、レーダー、LiDARを搭載。従来の自動運転実験車である「リーフ」に比べて全高が高いため、検出範囲が広く、より高精度の検出が可能になったという。
人やクルマなどのオブジェクト(物体)認識にはAI技術を活用し、車外環境の認識や行動予測による判断と制御機能を進化させている。
それらの認識を用いて、国内や日産先進技術開発センター・シリコンバレーで開発された技術や英国での自動運転研究プロジェクト「evolvAD」などで得られた知見を活用。日産がこれまでの自動運転実験で築き上げてきた自動運転技術をルールベースで構築し、走行させている。
環境認識をAIで、走行をルールベースでとしているのは、環境認識においてはAIのほうがさまざまな物体を認識でき、認識範囲が広いため。一方、走行をルールベースでとしているのは、日産には十分な知見があり、AIであると「なぜそのような走行をしたのか?」ということの解析が難しいためになる。AIは物事をある程度広く捉えることが可能であるという利点はあるが、交通ルールは厳密に解釈することが前提で作られており、そのルールに従って走行させる必要があるからだ。
このドライバーレスで走行する自動運転セレナに、遠隔監視設備を組み合わせて日本の法律に適合。「遠隔型自動運転システム等を搭載した自動車の基準緩和認定要領」および「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」に基づき、遠隔型自動運転システムで実証実験を行なっている。
クルマ自体はドライバーレスだが、遠隔監視設備にいる人によって常時監視されており、その監視者は免許を保有し、いつでも自動運転セレナを操作できるように通信でつながっている。つまり、自動運転レベルでいうとレベル2自動運転になり、法律的にはすでに社会で許容されているものになる。
さらに今回の実証実験では、助手席に非常停止ボタンを押す人員である保安要員を配置。なにかが起きた際に非常停止を人の判断で行なえるようになっている。
つまり、1台の自動運転車について2人の人が配置されており、単純に見てしまうと人員増になる。もちろん、これは将来的に1人が複数台の自動運転車を監視する「1対多」のシステムへ移行し、非常停止用の保安要員も不要となることを目指している。
その方向に進化させていくことでドライバー不足が顕在化している地域において省人化を実現でき、社会から求められているモビリティサービスを提供しようとしている。
2026年度にかけて約20台の自動運転車の運用を予定
日産は、この実証実験の成果をもとに、2025年度下期から2026年度にかけて横浜市で約20台を運用する大規模なサービス実証実験の実施を予定。現在、関連する事業者とともにサービスに必要な運営体制とサービスエコシステムの構築を進めている。
さらにそれらの大規模実証実験における検証成果を活かし、2027年度には自治体や交通事業者を含む関係者と協議の上、遠隔監視設備を備えた自動運転レベル4によるモビリティサービスの提供を目指している。
この取り組みは、経済産業省・国土交通省をはじめとした中央官庁ならびに横浜市などの自治体と密に連携しながら推進。経産省と国交省が主催する「レベル 4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」において、新たな自動運転移動サービスの実現に向けた取り組みも促進していく。
日産は国内外での開発・検証結果をもとに横浜市で技術とサービスを確立するとともに、日本の他の自治体および海外への展開も視野に入れて、引き続き開発を進めていくという。
日産の自動運転システムでは、監視においてもAIの活用を図るとしており、クルマの物体認識や監視にAIを積極活用。しかしながら、クルマの走行においてはいわゆるAIのハルシネーションを防ぐ意味でも、膨大な知見が必要だが確実に原因を追及可能なルールベースを採用。社会実装に適合しやすい自動運転サービスを構築しようとしている。