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トヨタ「ミライ」も参戦した全日本ラリー/TRDラリーチャレンジ最終戦「新城ラリー」リポート

ラリーファンから女性や子供までみんなが楽しめる充実の2日間

2013年10月31日~11月1日開催(TRDラリーチャレンジは11月1日のみ)

 10月31日~11月1日の2日間、愛知県新城市にて「全日本ラリー選手権第9戦」と「TRDラリーチャレンジ第10戦(11月1日のみ)」の併催イベント「新城ラリー」が開催された。メイン会場となる県立新城総合公園の芝生広場を今年は「TOYOTA GAZOO Racing PARK」として、例年展示されている往年のラリーカーやスポーツカーの展示の他、女性や子供限定の「GIRL’S Cafe」や「キッズコーナー」が新設された。

 また、例年どおり様々な企業ブースや警察、消防、自衛隊、JAF等の展示ブースや飲食ブースなどもあり、公園内に設定されたSS(スペシャルステージ:競技区間)が一部の有料エリアを除いてほぼ全てが無料で観戦できることもこのラリーの魅力の1つだ。

 全日本ラリーで凌ぎを削るトップドライバーの走りを間近に感じ、またパイクスピークヒルクライムに挑戦し続けるモンスター田嶋選手やラリードライバー田口勝彦選手らのデモランや同乗走行も楽しめ、2日目には“モリゾー選手”ことトヨタ自動車の豊田章男社長がニュルブルクリンク24時間レースに参戦したレクサス「LFA」でデモランを披露するなど、ラリー以外のイベントも充実した2日間となった。

全日本ラリー選手権第9戦

 すでにシリーズチャンピオンを決めている新井敏弘/田中直哉組(スバル WRX STI)、同じくスバル WRX STIを駆る地元の勝田範彦/石田裕一組、ヨコハマタイヤのお膝元新城での勝利を狙う奴田原文雄/佐藤忠宣組(ランサーエボリューションX)3つ巴の戦いは勝田/石田組が制した。また、ここ新城でチャンピオンが決まるJN-4クラスの戦いや、世界を見据えたGAZOO Racingのラリードライバー育成プログラムで欧州にてトレーニング/実践経験を積んだ勝田貴元選手、新井大輝選手の走りなど、トップドライバーの走りからこれからのラリー界を背負う若手の走りまで見所の多い戦いとなった。また、昨年の00カーに続き、今年は競技車としてトヨタ「ミライ」が参戦した。

本格的な競技を翌日に控えた10月30日には新城市内にてセレモニアルスタートが行われ、地元の小学生をはじめ多くの観客が集まった
優勝は勝田範彦/石田裕一組(スバル WRX STI)
今年のシリーズチャンピオン 新井敏弘/田中直哉組(スバル WRX STI)は2位
3位 奴田原/佐藤忠宣組(ランサーエボリューションX)
JN5クラス優勝は数多くのSSベストタイムを奪った勝田貴元/足立さやか組
今シーズンはアバルトやMINI、プジョーら輸入車勢も多く華やかだ
トヨタ「ミライ」で参戦した国沢光宏/木原雅彦組はJN1クラス2位

TRDラリーチャレンジ第10戦

 全日本ラリーより気軽に参加できる1DAYラリーがTRDラリーチャレンジだ。トヨタ以外のクルマも参加できるオープンクラスはあるものの、参加したほとんどがトヨタ車で全7クラスが行われた。初心者にも参加しやすいラリーだが、参加者リストを見ると全日本ラリーのチャンピオン経験者の牟田周平選手や川名賢選手(コ・ドライバーとして出場)、全日本ジムカーナのチャンピオン経験者の田原憲選手、レーシングドライバーの久保凛太郎選手などから初心者中の初心者まで幅広い層が参加。中にはトヨタ「86」の開発をリードしてきたトヨタ自動車の多田哲哉氏や今年の東京モーターショーでも展示された「C-HRコンセプト」の開発責任者 古場博之氏らトヨタ自動車の開発陣の姿も見られた。また女性選手も多く、自動車関連企業のOLからモデル、学生、主婦とこのラリーの裾野の広さを感じさせた。

E-1(ヴィッツ1500ccエキスパートクラス)を制したのは小山昌子/町田亜矢組
E-2(トヨタ86エキスパートクラス)を制したのは田原憲/本城祐太朗組
トヨタ「86」開発者の多田哲哉選手は、欧州でのラリー参戦を続ける川名賢選手をコ・ドライバーにE-2クラスに参戦
コ・ドライバーの古場博之選手は東京モーターショーでも展示されていたトヨタ「C-HRコンセプト」の開発責任者
カーナンバー118の山本磨美選手は、F1/WRCドライバー、キミ・ライコネン選手のファンが高じてラリーの世界にハマった初心者コ・ドライバーだ
TRDラリーチャレンジに参戦する女性選手によるトークショーも開催。自動車関連企業のOLからモデル、学生、主婦など幅広い層の選手が集まった
車種の指定のないトヨタ車クラスがE-3クラス。加藤英祐/塩田卓史組のAE111が制した
E-3クラスには“元祖ハチロク”のAE86型レビンも参戦
オープンクラスはインプレッサ、コルト、ストーリアの争い

TOYOTA GAZOO Racing PARK

 メイン会場となる県立新城総合公園の広大な芝生広場がTOYOTA GAZOO Racing PARKだ。すでに毎年恒例となりつつある往年のラリーカー展示の他、今年から女性や子供限定のGIRL’S Cafeやキッズコーナーが新設された。今年は晴天に恵まれ、来場者は思い思いの形でゆったりとした広場での時間を楽しんだようだ。

TOYOTA GAZOO Racing PARKでは来場者にショルダーバッグを配布。クイズラリーへの参加者にはミニカーなど様々なプレゼントも用意されていた
今年新設されたキッズコーナー
女性や子供限定のGIRL’S Cafe
グループBマシンのNo21セリカツインカムターボ(TA64)は、1985年にサファリラリーで優勝したユハ・カンクネン車
グループAを戦い続けたセリカGT-FOUR(ST185/ST165)
1957年のオーストラリア一周ラリーに参戦したトヨペットクラウン
ひときわ人気の高かったランチアストラトスは、スペイン選手権で1981年にチャンピオンを獲得した実車だ
マルティニカラーが懐かしいランチアラリー037。奥にはともにグループB時代を戦ったセリカ(TA64)
グループB時代最強マシンの1台、プジョー205T16

 広々とした芝生広場には、昨年同様にかつてWRCを戦いぬいた本物のワークスマシンやそのベースモデルに加え、ニュルブルクリンク24時間レース参戦のレクサス「LFA」などGazoo Racingのマシン、WECで戦い続けるハイブリッドマシン「TS040 HYBRID」、昨年トミ・マキネンのドライブでこの新城ラリーの会場を走った4WDのトヨタ「86」“GR86X(クロス)”など多数展示された。

デモランや同乗走行も多く、2日目の11月1日にはトヨタの豊田章男社長もLFA(ニュルブルクリンク参戦車両)をドライブした
自ら運転してモータースポーツを楽しそうに語り、身近に会える“モリゾー選手”こと豊田章男社長は今年も健在だった
同乗走行を行うアバルト500ラリー
田口選手のランサーエボリューションXにはアッキーナこと南明奈さんも同乗。来場者を驚かせた
デモランはF3マシンなど、そのジャンルはラリー車にとどまらず新城総合公園に響き渡るエキゾーストノートも様々だ

その他の様々なブース展示

愛知県警
新城市消防本部
陸上自衛隊 豊川駐屯地
JAFのエアバッグ体験車
親子で楽しめるファミリー観戦スタンドも用意された
横浜ゴムはイベントを多数開催していた
スバル(富士重工業)は「スバルアクティブライフ活動」の一環として解説付きのラリー観戦を実施。競技終了後はファンと新井敏弘選手が交流。公園内の道路でデモランや同乗走行を行っていた。決して広くはない道路でのドーナツターンは圧巻。解説はラリー選手の小西重幸氏と贅沢な布陣だ

 今年は2日間にわたり晴天に恵まれた新城ラリー。例年以上に様々な展示やアトラクションが充実し、来場したラリーファンはもとより子供やラリーに興味のない人達にも楽しめるような構成になっていた。本来のラリー観戦でメイン会場以外にも気軽に観戦できるエリアを増やしたことは朗報だろう。

 一方でSS観戦と並ぶラリーの魅力の1つであるサービスパークの環境が、スペース、場所ともに軽視されているようなレイアウトは少々気になる。激しい走行でダメージを受けたマシンを短時間で修復し、再びSSに送り出すメカニックの奮闘ぶりを間近に見たり、その際にマシンを降りて休息をとる選手とファンが気軽に交流できるサービスパークはファンにとっても大きな魅力だ。

 また、競技である以上、各々のマシンが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整える事は大切であり、参加者はもちろん観戦するファンにとっても望ましい事だろう。

 サーキットにおけるパドックとはまるで違うこのサービスパークは、ラリーの魅力の1つとして非常に大きなものだ。広大かつ抜群の環境をもつ県立新城総合公園をメイン会場に年々進化し続ける新城ラリーだからこそ、ラリー本来の魅力を伝える更なる進化を期待したい。

(高橋 学)