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「F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2026」トークショーでハース F1の小松礼雄代表がチーム運営の苦労や週末の日本グランプリに向けた戦略を語る
2026年3月26日 09:24
- 2026年3月25日 開催
東京都港区の東京タワー、Star Rise Towerで3月25日、まもなく開催となるF1日本グランプリの魅力を紹介する公式プロモーションイベント「F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2026」が開催され、特設されたステージでは関係者によるトークショーが行なわれた。
今回のトークショーは事前申し込み制となっており、入力時に用意された「各ゲストに聞きたい質問」が集められ、この質問を司会を務めたモータースポーツアナウンサーのピエール北川氏がそれぞれのゲストに投げかける形式で行なわれた。
「レッドブルはそんなに速くない」と感じていた
F1 Special Stageで登壇したハースF1チーム代表の小松礼雄氏は、すでに2戦が終わった2026年のF1序盤戦をふり返った感想についての質問に対し、「ここまでのオーストラリアと中国、とくに中国はこれ以上ないぐらいのできだったと思うんですよ。まず、今年のレギュレーションは本当に大変で、ただ走るだけでも大変なんです。だから(開幕前に行なわれた)バルセロナでのテストで、走ってみなきゃ分からないことがいっぱいあるので、初日から走り込まなきゃいけなかった訳です。マシンを送り出すと、1周走るごとに新しい問題が見つかって、「あ、ここを改善しなきゃ」ってなったりする。本当に走ることが重要で、そういう積み重ねをしてきたから、メルボルンでなんとかポイントを取れたんですよ」。
「ただ、ちゃんとやっていれば、速さ的に『ビッグ4』には敵わないとしても、その次にはいるだろうという感覚がバーレーン(テスト)に行ったときにあって、そうした結果をメルボルンで実際に1台できたことが、すごくうれしかったんです。でも、その次の上海はスプリントで本当に大変だと思っていたんですよ」。
「メルボルンなんて、いちおうは普通の週末だからFP(フリープラクティス)1からFP3まであって、僕らは金曜日ボロボロだったんです。ボロボロっていうのは、今のとても難しいマシンをちゃんと走らせることができなくて、でも、その金曜日の夜に立て直したんです。それが上海だと、そんなことやってられないじゃないですか。でも、みんな本当にメルボルンで成長したことをそのままやってくれて、金曜日の朝からいいスタートを切って、スプリント、クオリファイと全部つながっていったんです」。
「そのときに『レッドブルはそんなに速くないな』と感じていたので、うちがちゃんとやれば、下手したらトップ3の次に行けるんじゃないかという感覚があったんです。実際にスプリントもそうなって、メインレースでもそうなって、もう今はほぼ出し切れてる状態。上海のレースでは本当にちょっとだけピットストップでうちがミスしちゃって、エステバン(オコン選手)にポイントを取らせられなかったのが残念なんですけど……」。
「それを踏まえても、本当に今年は大変なんですよ。マクラーレンがレースをスタートできなかったりとか、いろいろあるでしょ? だから、走るだけで大変っていうのは本当にあるんですよ。皆さん、水の上では余裕ぶってるように見えても、水面の下では足かきまくって大変なんです。アヒルみたいなものです。そういった意味で、本当に想像していたよりもいいと思います。まぁ、それを続けるのは大変ですよね」と語り、順調なチーム状況でも苦労が尽きないことを明かした。
この言葉を聞いて、ピエール北川氏はハース F1は規模の大きなトップチームと比較すればスタッフの人数も潤沢とは言えない状態で、2025年マシンの進化に取り組みつつ2026年度からのマシン開発を並行して進め、テストに間に合わせるためチームを挙げて不眠不休に近い頑張りを続けたと耳にしたとコメント。
これに対して小松代表は「大変ですよ、去年の終盤あたりは。うちはチームが大きくないから去年も捨てられないわけですよ。選手権である程度の順位を取って成績を出してないと、翌年走れないんです。走れないっていうか、開発もできない。だから、なんとか選手権の6位を目指してやって、最後は取れなかったんですけど、でもすごく速いマシンを作れたので、それは絶対に自信になったと思うんですよね。その自信という部分を僕はみんなに与えたかったところがあるんです」。
「というのは、2026年、今年の頭って、何が起きるか分からないじゃないですか。下手したら相当ひどいことになるかもしれないと自分でも覚悟しておかなきゃいけない。そんなときに、もしひどい状況でスタートしても、みんなが『過去2年間はこれだけ開発できた』『速いマシンを造れた』という自信があったら、どんなにひどい状況からでも立ち上がれるでしょ? その覚悟を付けてたっていうこともあったんですよ」。
「でも、それを目指してやっていても、去年の本当に終盤の方とかにはブレイクダウンしそうになっちゃうスタッフもいますからね。やっぱりプレッシャーはすごいですよ。性能の以前にマシンを走らせることができるのか、エンジンをかけることができるのか、毎回コースに送り出せるのか、そのレベルのすごいチャレンジだったので、それはすごいストレス、すごいプレッシャー。グループリーダーのレベルでも『俺でいいのか?』って言い出すような人もいて。だから、そういう人たちに『大丈夫、みんな同じだから』と盛り上げてる」と語り、チーム運営の狙いや難題について紹介した。
戦略で大事にしてることは「基本を大事に」
2つめの質問では、今シーズンの戦いでチームとして大事にしている戦略や強みについて問われ、「戦略で大事にしてることは、やっぱり『基本を大事に』ってことですよね。やらなくちゃいけないことが複雑になればなるほど、難しくなればなるほど、やっぱり基本がむちゃくちゃ大事なんです。例えば、冬のプレシーズンテストの話なら、性能どうこうの前に走れなきゃいけないんですよ、絶対。朝9時にサーキットが開くときには、マシンをちゃんと準備して9時00分から走り出せなきゃいけないんです。走らないことには問題は分からないですから」。
「走るたびに学んで、とにかく基本を大事にやった上でやっと信頼性が見えてきて、マシンが壊れなくなる。マシンが壊れなくなったらもっと走れる、そうしたら性能が見えてきてマシンの完成度が分かってくる。実際にバーレーンの1回目のテストあたりでちょっと問題を発見したんですけど、それも走っていたから分かる訳です。2回目のテストからはもう毎回ナイトシフトで、1日目の夜、2日目の夜とマシンを改善していって、3日目のマシンはむちゃくちゃよくなったんですよ」。
「そこでやっとマシンが設計した意図どおりの性能を発揮できるとこまで来たんです。そこにたどり着くためには、やっぱり基本に忠実に、基本をとにかく大事にしていったら大体9割方いけてるんですよ。その基本をやらないで、かっこいいことだとか、セクシーなことだとか、面白そうなことばっかりやっていたら全部崩れます。英語でも『走る前に歩く』と言うように、その『歩く』ことが大事。ちゃんと歩けないのに走ってもしょうがないでしょ? それが本当に重要で、それをずっとみんなに叩き込んできたから結果につながるんです」と基本の大切さを説いた。
また、チームに所属して2年目の若手であるオリバー・ベアマン選手が勢いに乗っていることについては「ずっと言ってるけど、彼が18歳の時にメキシコのFP1で最初に仕事したときから『速いドライバーだな』と思ったんですよ。そして速さも凄いけど、それ以上に僕が感心したのはまだ18歳ですよ。18歳のときにね、あんなにまわりのことが分かって、僕らがチームとして『これをやらなきゃいけない』って言ったことをちゃんと理解して、ダイジェストに行動へ移せるっていうところ。僕が18歳のときはそんなことできてなかったですね。今もできてないですよ」。
「だから、速さがあってこのメンタリティがあれば、本当に伸びると思っていたんです。すぐにサインしたいぐらいでした。結局、去年1年乗って、もちろん、速さがあるってことは分かっていたとおりでしたが、恐ろしいのは最初から示してくれましたね。やっぱり前半戦はミスが多かったり、結果につなげられなかったですが、それはルーキーですから分かっているんです。それについては『チームと一緒に解決方法を探していこう、一緒に成長しよう』ってずっと言っていました。やっぱり彼のラーニングレートはむちゃくちゃ速いから、シーズンの後半にはもう結果を出せるようになって、それでメキシコのあの4位の走りですよ」。
「今年はもうウィンターテストから僕らの方で環境を整えて、去年の後半から上がってきたところからまたスタートして、素晴らしいんですよ。プレシーズンのテストも含めて、メルボルン、上海と基本的にはミスはないです。素晴らしいと思います。だって、コンストラクターズタイトルで今の4位という成績は、彼が1人で叩き出してるポイントですから。あとは人柄がめちゃくちゃポジティブなんですよ。本当に明るい奴で、まわりの人にやる気を出させる子です」。
「先週の上海でもマックス(フェルスタッペン選手)の2.5秒くらい後ろにずっといたんですけど、まったくミスしないもんね。だから、まわりから見ると『プレッシャー感じてないの?』って思うじゃないですか。むちゃくちゃ感じてるんですよ。感じてるけど、逆にそれで感覚が研ぎ澄まされて、もっとフォーカスがよくなって、そのエクストラなプレッシャーがいい方向に働いてる。本当に凄い」と絶賛した。
間近に迫った鈴鹿サーキットでの日本グランプリの戦略について、ピエール北川氏はハイブリッドシステムのMGU-Kによる発電にフォーカスして質問。
小松代表は「どうなんでしょうね?」と笑いつつ、「難しいと思いますよ。でも、メルボルンってエネルギー回収は結構難しいんです。上海はもうちょっと簡単で、鈴鹿もかなり難しいので、そこをどうマネジメントするか。セクター1の最後の方だとかデグナーだとかは、走り方によって凄く変わってくるんですよ。だからそこらへんの細かいところが、ちゃんとしたラップタイム出すには難しいと思います」とコメントした。
最後に、会場に集まったファンに向けたメッセージとして「本当に雨の中、こんなにたくさんの人が来てくれてありがとうございます。こういった光景から本当に元気をもらえるんですよ。僕らは世界をまわっていますけど、こんなに熱いファンの人たちなんて本当にいないので、F1界を代表してお礼を言います。本当にありがとうございます。このなかから鈴鹿にどれぐらいの人が来てくれるのかは分からないけど、もし来たらいろいろなところ見ていってください。本当にエキサイティングな世界だと思うので、思い切り楽しんでいってください。風邪ひかないでね」と口にしてトークショーを締めくくった。




