自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展」が開幕
パワートレーンの高効率化や電動化の展示多数

2010年5月19日~21日開催
入場無料(要登録)



 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展」が5月19日、神奈川県のパシフィコ横浜で開幕した。会期は5月21日まで。入場無料だが登録が必要。

 自動車技術会は自動車の研究者、技術者などからなる団体で、交流や研究発表など、技術者や研究者の育成イベントを行っている。

 人とクルマのテクノロジー展は、自動車、部品、材料メーカーや関連企業の技術を展示するイベントで、1992年から開催されている。2010年は365社が出展した。

 その展示のほとんどは自動車の研究開発、製造のための計測器やソリューション、要素技術や部品で、エンドユーザーにはあまり関係のないものだが、自動車技術のトレンドを概観できる。ここでは一般のクルマ好きにも興味深い展示をピックアップし、写真を中心に紹介する。

モーターショーではなく技術展なので、新型車やコンセプトカーのお披露目はないが、唯一これから発売されるクルマを展示したのがマツダ。先行予約受付が始まったばかりの新型「プレマシー」の欧州仕様車「Mazda 5」がそれ。日本には導入されない6速MT仕様だがアイドリングストップ機構「i-stop」を搭載している
こちらは童夢の「ECOL DOME SUPER INSIGHT」。ホンダ・インサイトの外皮やホイールをCFRPに置き換えて軽量化し、空力を改善することで燃費の20%向上を目指している。巨大なアンダーパネルを追加することでダウンフォースも得ている
スバルは運転支援システム「アイサイトVer.2」を新たに搭載した「レガシィ ツーリングワゴン」を展示。Ver.2で追加された速度差30km/h以下での衝突を回避するプリクラッシュブレーキや、ステレオカメラによる画像認識をアピールした。中央がアイサイトのステレオカメラモジュール
会場の一隅に設けられたマレーシア自動車産業のパビリオンには、同国の自動車メーカー「プロトン」の3列シートミニバン「イグゾーラ」が展示されている。ディメンションは4592×1809×1691mm(全長×全幅×全高)で、トヨタ・ウィッシュに近い。エンジンは93kW(125HP)を発生する1.6リッター直列4気筒DOHC「カンプロCPS」。2009年4月の発表以来、月3000台がインドネシア向けに送り出されている
日本ナショナルインスツルメンツのブースには、2009年のもてぎEnjoy耐久を完走した「日本NIレディオベリーインサイト」を展示。この展示自体はドライブシミュレーターのデモだが、同社はこの車両のECUのチューニングなどのサポートを行っている
ホンダはハイブリッドスポーツカー「CR-Z」と、2輪車初のデュアルクラッチATを搭載した「VFR1200R」を中心に展示。発売から3カ月が経ったCR-Zだが、その人気は衰えておらず、展示車の周りにはいつも人だかりができている。会場外で行われたエコカー試乗(写真右)でも真っ先に予約が埋まった
ホンダ系のユタカ技研はCR-Zのエキゾーストシステムとフライホイールを展示した
三菱自動車はやはりi-MiEVがメインだが、その横にあったのが「電気自動車用充電ボックス」。要は車庫のコンセントに取り付けるカバーだが、i-MiEVのフォルムをイメージしたデザインで、充電ケーブルを格納できるようになっている
日産は発売予定のフーガ・ハイブリッドの1モーター2クラッチパワートレーンと、副変速機付きCVTを展示。車両はフーガの370GT
ダイハツはエコカー展示コーナーに、2009年の東京モーターショーに出品した軽コンセプトカー「イース」を展示。自社ブースには、アイドリングストップやEGRなどを駆使したイース用の究極の3気筒ガソリンエンジン(写真中の左)と、より高効率を目指した2気筒エンジン(同右)、さらに貴金属フリーの燃料電池システムを展示した
トヨタ自動車はプリウスPHVのカットモデルを展示。巨大なリチウムイオンバッテリーを見ることができる
ポップリベット・ファスナーのブースには、同社の技術を使って組み立てたアウディA2のアルミボディーを展示
展示のトレンドはパワートレーンの高効率化と電動化。後者は純粋なEVだけでなく、PHV、HV、さらにアイドリングストップや回生システムによるマイクロ・ハイブリッドを含み、広範な技術が展示されていた。これはその1つで、デンソーのアイドリングストップシステム用AEスターター。アイドリングストップ機構があるとスターターの動作回数が増えるため、リングギアとピニオンギアの摩耗を減すために開発された
ZFのハイブリッド車用8速トランスミッション「8H70H」。日産フーガ同様の1モーター2クラッチを採用する。写真右はマイクロハイブリッド用薄型モーターで、クランクシャフトに取り付けて、発電のほかに発進加速時のアシストもする
ロータス・エンジニアリングのレンジ・エクステンダーパワーユニット。エンジンは発電にのみ使い、駆動はモーターで行う。エンジンは発電に特化されているため、2バルブでモノブロックのシンプルな構造を採るこのプリウスはロータス・エンジニアリングが開発した接近通報装置を搭載している。バンパー裏のスピーカーで疑似エンジン音を出すが、音の大きさやどんな音にするかをドライバーが選べる
電動パワートレーンといえば注目されるのがバッテリー。東芝は長寿命で安全なリチウムイオン電池「SCiB」の様々なバリエーションを展示した
ユニバンスはスズキ・スイフトPHV用のギアボックスを展示東京R&Dは同社が製作したベタープレイスのバッテリー交換型EVタクシーを展示
電動パワートレーンの一方で、内燃機関の高効率化についての展示も多数見られる。これは三菱重工のブースで、ダウンサイジングに欠かせないターボチャージャー。左から軽自動車用、フォルクスワーゲンの1.4リッターTSI用。写真右の一番右がBMWの2リッターディーゼル用
大型トラックメーカー各社は、ポスト新長期規制に対応したディーゼルエンジンを展示。左からいすゞ、三菱ふそう、日野。いずれも尿素によるNOx低減を採用しているが、日野の中型エンジンはDPR触媒と酸化触媒で対応している
富士通セミコンダクターの全周囲立体モニタシステム。前後左右の4つのカメラの画像を合成して、自車を上から見下ろした状態の画像に合成する技術はすでに市販車に搭載されているが、こちらは立体的に画像を処理することで、クルマを囲む半球のどこからでも自車を見た状態をリアルタイムで再現できる。レースゲームのように自車を斜め後ろから見下ろした状態の画像を走行中に見ることもできるのだ
同じく富士通セミコンダクターのバーチャルコンソール(左、中)とTFTメーター
こちらはトヨタ・クラウン ハイブリッドに搭載されているデンソーのファイングラフィックメーター。歩行者検知ナイトビューを表示できる
カルソニックカンセイの日産NV200用多機能メーター。右側の3.5インチディスプレイには燃費情報などのほか、バックビューも表示できるこちらはやはりカルソニックカンセイのフーガ用メーター。文字板を10度傾けることで視差を小さくしている
積水化学工業のHUD用ガラス中間膜。中間膜をくさび形にすることで、HUDの投影像が二重に映る(写真左の右側)のを防ぐ。中間膜にはHUDのスクリーンとしての機能だけでなく、UVやIR、音を遮蔽する機能もある
豊田紡織のスリムスタイルシート。座面と背面をネット素材とすることで、通気性に優れ、軽いシートとした
古野電気のPND向けGPSモジュール。ジャイロセンサーと加速度センサーを搭載し、PNDでもGPSなしでの位置測定ができるようにしているこちらは車内LAN「CAN Bus」のデータを使うことで、ジャイロセンサーなしで自律航法を実現するモジュールオランダのトムトム・インターナショナルのiPhone用カーナビアプリと、車載キット。アプリの価格は99.99ドル。右は業務用GIS機能を備えたPND
FPSの小型フラットスピーカー。これは天井を振動させるタイプで、ロードノイズから遠いところで音を出せる。またバンパーの裏に貼ってバンパーを振動させれば、接近通報に使える
こちらは1枚でステレオ再生ができるフラットスピーカー。指向性が高いので、車内の座席前面に1つずつ備えておけば、それぞれが異なった音楽や音声を聞ける。リアシートの子供はゲームやビデオ、助手席は音楽、運転席はカーナビの音声や交通情報といったように

(編集部:田中真一郎)
2010年 5月 20日