ニュース
工学院大学、「ワールド・ソーラー・チャレンジ」に「プラクティス(驍勇)」号で初挑戦
「4輪、低重心」の基本設計に、BSのオロジック搭載エコピア、帝人グループの超軽量カーボンなど投入
(2013/7/23 19:18)
工学院大学は7月23日、オーストラリアで10月から開催される世界最大のソーラーカーレース「ワールド・ソーラー・チャレンジ」に「プラクティス(驍勇)」号で初挑戦すると発表した。同日、大学内において発表会を開催した。
ワールド・ソーラー・チャレンジは、太陽光のみを動力源として、オーストラリア連邦のダーウィンとアデレード間、総延長3000kmを走破するタイムを競うソーラーカーレース。1987年に第1回大会が開催され24年の歴史を誇る(1999年からは隔年開催)。前回大会(2011年)、前々回大会(2009年)は、東海大学チームが優勝している。
2013年大会は、タイヤを4つ付けることを義務化し、ドライバーの居住性、視界確保などレギュレーションが変更されており、5年前から4輪タイプのソーラーカーを製作してきた工学院大学は、4輪、低重心という同大学の車両コンセプトに時代が追いついてきたとしている。
参戦するのは、同大学 工学部機械システム工学科 准教授 濱根洋人氏を監督とするチームで、機械工学専攻 修士1年 稲葉亮太氏など34名。車両に投入された技術についても稲葉氏が発表を行った。
プラクティス号の特徴は、4輪形式になっているほか、下まわりがフルカバードになっていこと。これにより、ドライバーの姿勢などが確保され、レギュレーションに合致したものとなっている。他チームも、レギュレーションの関係上、これまでの3輪から4輪に変更する必要があるが、これについては4輪ソーラーカーの経験の差があるとした。
その4輪に用いられているのが、ブリヂストンの超低転がり抵抗タイヤ「ECOPIA (エコピア)」。ブリヂストンが3月に発表した狭幅・大径・高内圧の「ラージ&ナローコンセプト(LNC)」に基づいたタイヤで、参戦にあたりコンセプト名が「ologic(オロジック)」と決まった。
トレッドパターンはソーラーカーレース用にチューニングした回転方向指定を持つもの。転がり抵抗値は「従来の低燃費タイヤ(AAAクラス)の半分が目標」(ブリヂストンスタッフ)としている。ブリヂストンがソーラーカーレースにタイヤを提供するのは、自動車メーカーが参戦していた1990年代以来で、当時はバイアスだった構造も、現代のタイヤらしくラジアルになっている。
ブリヂストンはオロジック技術を搭載したエコピアのほか、UV(紫外線)透過率の優れた太陽電池フィルムを提供している。太陽電池そのものは、サンパワー製。
ボディーの素材となる炭素繊維は、F1などでも使われているという帝人グループの「テナックス」で、NTNも専用のベアリングを提供。通信システムもスカイパーJSATグループの協力を受けるなど力の入ったものとなっている。
詳細なスペックなどは、競争相手の関係もあるため未発表。最高速は135km/hくらい出るとのことだが、速度を上げると空気抵抗が増え競技では不利になる。そのため、それ以下の速度で争われるとの見通しを示したが、予想平均速度の発表も、戦略上不利になるため行われなかった。
勝利の見通しについては「結構あります」(濱根准教授)と述べ、詳細な発表を行わなかったこととあわせ、本気で勝ちに行くという気持ちが前面に出ていた。